第39話 ご挨拶
「おっ」
額の激痛に声を洩らす。
魔術の刃が沈み込んでいた。
勢いが衰えず、そのまま頭部を貫こうとしている。
俺はすぐさま刃を掴んで握り潰す。
魔術が粉々になって霧散した。
裂けた額から血と脳漿がこぼれ出す。
(やられた。防御貫通の魔術だな?)
俺は肉体を再生させながら考察する。
その間に室内から追加の魔術が放たれて、いずれも全身各所に命中した。
両脚を切り落とされた俺は転倒する。
衝撃で刃が体内に食い込む結果になった。
「いだだだたっ」
喚きながらさらに再生する。
駄目押しに飛んできた魔術を避けながら屋敷の外に退避した。
壁を背にして、室内からは目視できない位置に逃げ込む。
(まったく、最高の挨拶だな)
屋敷の主は俺の来訪を察知していたようだ。
そして敵だと見なして攻撃している。
性格は知っているが、やはり容赦がない。
さっきの刃は高威力の魔術だ。
相手の防御力を無視する上、苦痛を増大させる。
ゲームでは状態異常扱いとなっており、痛みで数ターンが動けなくなる仕様だ。
そのまま刃の連打を食らい続けて全滅させられる展開が多く、プレーヤーの間でも忌み嫌われていた。
攻略サイトでも対策の一つとして「神に祈れ」と書かれていたほどである。
それだけ厄介な人物なのだが、今回の目的は屋敷の主を仲間にすることだった。
ここで引き下がるわけにはいかない。
なんとか殺さずに説得しようと思う。




