第38話 訪問
俺はさっそく座標移動する。
戦闘が終了したので使えるようになったのだ。
仲間の候補は既に決めていた。
ちょうどこのタイミングに相応しい人物がいる。
俺が向かった先は、魔の大地と呼ばれるエリアだった。
どこの国にも属していない場所で、高レベルの魔物が徘徊している。
稀少な宝があるものの、あまりにも危険すぎるため残機制だったゲームでは滅多に立ち寄らない。
メインシナリオにも関連しない場所のため、訪れるプレーヤーはごく少数だった。
俺が飛んだ先は、そんな魔の大地の奥――鬼畜ダンジョンと呼ばれる地下迷宮の最下層である。
樹木と岩壁に囲まれたそこに到達するには、本来なら過酷な道のりを突破しなければならなかった。
どこかの攻略サイトで見たが、ここまで来るのに失う残機は平均で三十らしい。
悪質なことに、迷宮内には教会がある。
そこでセーブをしてしまうと、全滅時の復活ポイントに設定されて進むも戻るも地獄という仕様と化する。
ここに勇者達を放り込むことができれば、かなり残機を削ることができそうだが、現在は賢者が仲間になっている。
あいつがワープの魔術を使えるのでそれも難しいだろう。
(賢者がチートすぎるんだよなぁ……)
内心で愚痴りながらも、俺は殺風景な最下層を進んでいく。
数分を経たたないうちに青紫色の屋敷が見えてきた。
樹木と岩壁に紛れるようにしてひっそりと建っている。
あの屋敷こそ、今回の目的地だ。
俺は玄関扉まで歩いていってノックをする。
「こんにちはー、誰かいますかー?」
少し声を張ってみるも反応はない。
しかし強化された五感は、室内の気配を認識していた。
居留守を使われているのは明白である。
「入りますよー」
俺は施錠されていない扉を開ける。
次の瞬間、室内から放たれた魔術の刃が額にめり込んだ。




