第28話 良い返事
室内に静寂が訪れる。
勇者達は葛藤しているようだった。
返答に悩んでいる。
やがて勇者の声が聞こえてきた。
「あなたの、再加入を許可する。その力で魔王討伐を手伝ってほしい」
勇者は俺の希望を承諾した。
錬金術師が何も言わないので、二人で決めたのだろう。
きっと苦渋の決断だったに違いない。
本当は俺のことなんて顔も見たくないはずだ。
それでも再加入を認めたのは、優先すべきことがあるからだった。
感情を置いて、利益を取った素晴らしい判断だ。
俺はゆっくりと顔を上げる。
そこで我慢できずに噴き出した。
腹を抱えながら笑い転げる。
呆然とする二人を嘲笑いながら俺は告げる。
「冗談じゃねぇよ、バーカ」
俺は隠し持っていたスイッチを押し込む。
その瞬間、床下に仕込んであった大量の爆弾が起動した。
激しい揺れと共に視界が真っ白になる。
何も聞こえなくなったのは、鼓膜が破れたせいだろう。
全身を引き裂く熱と痛みが連続し、やがてそれすらも感じなくなる。
気が付くと俺は、樹木の根元に倒れていた。
いや、その表現が正しくないかもしれない。
現在の俺は、首から下が爆発で消し飛んでいた。
自己データを確認したところ、頭部も七割が破損している。
脳味噌もぐちゃぐちゃで、血みどろの団子みたいな有様であった。
すぐさま改善で全身を再生させる。
真新しいスーツに身を包んだ俺は、よっこらせと立ち上がった。
そして、目の前の光景を目にして笑顔になる。
「はは、最高だな」
薬師の小屋は木端微塵になっていた。
周囲一帯が削れて何も残っておらず、蔓延する黒煙で視界不良だ。
木々は一部が燃えている。
これは大規模な山火事になるかもしれない。
しかし、気になるのが勇者達の安否だ。
奴らを殺したというアナウンスが聞こえてなかった。
戦闘関連のデータを閲覧したところ、履歴にも勇者と錬金術師の殺害は記載されていない。
かなりの大ダメージを与えたことは判明したが、なんと今の爆発で二人は死ななかったらしい。
(面白い。意外とやるじゃないか)
さすがは世界を救う英雄だ。
そう簡単にくたばるメンバーではない。
俺が小屋で待つ一週間で大きく成長したようだ。
とにかく死なないための工夫を凝らせるようになったのだと思う。
「さて、どこまで楽しませてもらうかね」
俺は近くにあった枝を拾うと、それを散弾銃に改竄した。
何も特殊効果のないタイプだが、あえて選んだ。
土を鷲掴みにして予備弾に変えてポケットに押し込む。
俺は脳内マップを参照しながら歩き出した。
「さあ、勇者狩りの始まりだ」




