第21話 失敗
高速で回る視界。
やかましい衝突音を立てながらリムジンは転がっていく。
遠心力に引かれた俺はその途中で外に放り出された。
シートベルトを着けていなかったのが原因だ。
地面にぶつかった俺は、ぴくぴくと痙攣する。
そのまま三十秒もした頃、むくりと起き上がった。
「あー……ひでぇなこりゃ」
ばらばらになったリムジンが通りの各所に突っ込んでいた。
露店を押し潰していたり、不運な通行人に突き刺さっていたりと悲惨な状態である。
漏れたガソリンが引火したのか、火災が起きている箇所も少なくなかった。
人々は大急ぎで消火活動に追われている。
俺は自分の身体を見下ろす。
右腕が滅茶苦茶に折れて、骨が顔を出していた。
左腕に至っては、肘から先が消失している。
何かの弾みで切断されたのだろう。
顔面は聖剣に割られたせいで左右に分かれていた。
顔を傾けると一方に寄って正常な視界になるが、少しぐらついただけで内部が露わになった。
妙に軽いのは頭蓋が砕けて脳漿がどこかに吹き飛んだせいか。
腹も破れて臓腑がはみ出している。
足腰もボロボロで、とても歩ける状態ではなかった。
視線を少し遠くにやると、逃げ去る勇者と錬金術師を発見した。
街の惨状を目にしながらも、それらを陽動に行方を眩まそうとしている。
俺は肉体を復元して完全に回復すると、元気になって立ち上がった。
綺麗になったスーツ姿で微笑む。
「ははは、やるじゃないか」
能力的にこちらが圧倒的に有利だったのに、知恵と勇気と連携で彼らは逃走に成功した。
ちょうどワンサイドゲームはつまらないと思っていたのだ。
これなら退屈はしないだろう。
俺は脳内のシナリオチャートを確認する。
これでおおよその行き先は分かる。
奴らのことだ。
死んだ女戦士と魔術師の蘇生を優先するに違いない。
ただ、焦ることはない。
冒険はまだ始まったばかりだ。
じっくりと追い詰めようじゃないか。




