第12話 先制攻撃
勇者パーティーは固まった。
俺の言葉が理解できないのだ。
あまりに予想を外れていたのだろう。
その呪縛が最初に解けたのは女戦士であった。
勇者を押し退けると、床を蹴って突進してくる。
「あんたはァ……ッ!」
急加速は身体強化の魔術を使用しているからだ。
こいつの脳筋ぶりは、パーティー内でも最高峰であった。
単純な肉体性能は勇者すら凌駕する。
掲げられた剣が、俺を目がけて振り下ろされた。
「死ねっ!」
「生きる」
俺は片腕を掲げるも、刃にあっさりと切断された。
斬撃はそのまま寝転がる俺の脇腹に達する。
肋骨を割り、内臓を断ちながら体外へと抜けた。
さらに長机を叩き斬って床にめり込む。
胴体を輪切りにされた俺は、断面からこぼれる臓腑を一瞥する。
(大した威力だな。さすがはゴリラ女だ)
女戦士はこの土壇場でクリティカルヒットさせたのだ。
ゲームの仕様ではランダムに発動し、相手の防御力を貫通してダメージを与える攻撃を指す。
実際、今の俺はステータスの改竄で防御力を上昇させていた。
大抵の攻撃なら掠り傷にすらならない肉体にも関わらず、見事にやられてしまった。
(まったく、格好が付かねぇな。完璧にガードして余裕ぶるつもりだったのに)
俺は内心で嘆きながら吐血する。
煙草を拳銃に改竄すると、それを持ち上げて目の前の女戦士を狙った。
「だから言ったろ。俺は生きるって」
「なっ!?」
女戦士が驚愕する。
俺は至近距離から銃撃を浴びせた。