第1話 追放宣言
その日、俺は勇者から呼び出された。
「傭兵ムカイ。あなたはパーティーに相応しくない。この瞬間をもって追放させてもらう」
顰め面で告げられたのは、そんな内容だった。
勇者の後ろに立つ仲間達も不機嫌そうにこちらを見ている。
俺はくわえていた煙草を捨てると、それを踏みながら息を吐いた。
このまま沈黙を貫くわけにもいかないので、とりあえず質問を投げる。
「唐突だね。理由は聞かせてもらえるのかな」
「あんたがどうしようもないクズで無能だからよ! 言わなきゃ分からないの!?」
激昂したのは女戦士だった。
肉付きの良い褐色肌にビキニアーマーを着た奴だ。
なかなかエロい見た目だが、俺が見ると文句を言いやがる。
そんな女戦士は、俺に対する苦情を述べる。
「戦闘では囮役と言って逃げてばかり。あんたが魔物を倒した姿なんて見たことがないわ」
「お前達に被害が向かないように立ち回っている。俺が貧弱なのは知っているだろう? 適材適所さ」
「うるさい! パーティーの資金で賭博をやっているのも知ってるんだから!」
女戦士が指を突き付けながら言う。
別に事実なので否定できない。
ばれないように隠蔽工作はしたつもりだが、たぶん尾行されていたのだろう。
それで勇者に告げ口したに違いない。
「文句を言うなら、せめて俺にも金を支給してほしいね。他の奴らには均等に分配されてるだろうが」
「荷物持ちすらできない役立たずのくせに、そういう要求だけするのね! 本当に最低だわっ」
女戦士はヒステリックに叫ぶ。
今にも襲いかかってきそうなのを勇者が手で制していた。
(そんなに怒って疲れないのかね)
俺は新しい煙草をくわえると、ライターで火を点ける。
怒鳴られながら味わう紫煙には、また違った旨みがあった。