小さき者よ
これ、何のことだかわかりますか?
小さき者よ
よくぞ我を召しかかえた!
我は今よりそなたの馬
西の果て 雪の大地より
銀の龍に抱かれて
長き長き路を来た
この出会いに感謝しよう
おお おお
我をおそれぬその瞳
賢そうなツラ構えぞ
そなた未来は傑物なるぞ
小さき者よ
今より我はそなたの愛馬
険しき山も荒れ狂う海原も
熱砂の荒野も雪の大地も
我を供に連れるがよい
いざ 果てなき冒険へ!
そうか そうか
乗りたいか
しかしな小さき者よ
今はまだ背が足らぬぞ
あわてるな
そうそう
まずはふれてみよ
そらそら
鞍に手をつき 立ってみよ
よしよし
おお 笑うてくれるか
よしよし
そなたはよいこじゃの
小さき者よ
そなたこの頃ちょこまかと
あっちへこっちへ
よく動くの
そろそろ頃合い 乗ってみよ
そうら!つかまれ
どうじゃ我の乗り心地は?
おうおうそうか たのしいか
小さき者よ
なんぞ神妙な顔をして
手に何をもっておる
このウマづらにくれるのか
小さき者よ
駆けてみたいか?
よしよし やってみるがいい
はじめは常歩
ゆっくりゆっくり
そうそう はじめはこれでよい
小さき者よ
またニンジンなんぞ持ってきたのか
我は馬でも
ニンジンなんぞ食べれぬぞ
それはそなたが残さず食せ
こらこら ふて腐れるでない
小さき者よ
乗馬のコツをつかんできたな
常歩 速歩 もっと速く!
こらこら足は鐙だ危ない!
我は音に聞こえし名馬なれど
速いがゆえに急にはとまれぬ
すまぬな ゆるせ
小さき者よ
小さき者よ
たまにケガして泣くものの
ずいぶん乗馬が様になったな
外はもうすぐ春が来る
小さき者よ
乗ってくれるのは嬉しいがの
我は外には出られぬ身
留守はしっかり守るゆえ
広い大地を駆けてこい
小さき者よ
小麦色に日焼けして
ずいぶんたくましくなったな
あいにくの雨か
外には行けぬ
たまには我と駆けてあそぶか
小さき者よ 我が騎士よ
立派になったな 嬉しいぞ
今は二輪戦車を乗りまわす
小さき者よ 我が騎士よ
我は旅立つ
新たな騎士のもとへ征くのだ
外は木枯らし 別れの季節
小さき者よ
我は役割を終えたのだ
見送ってくれるか?
出会った頃は紅葉の手
今はたくましき男児の手
その手がさらりと ウマづらを撫でた
小さき者よ
そなたは我が騎士 我が誇り
我は征く
新たな騎士のもとへ
しんみりなんぞしたくない
笑って見送れ
小さき者よ 我が騎士よ
答は、玩具の木馬、でした。子供(小さき者)が乗ってギッタンバッコンするヤツ。
木馬は、北欧(西の果て 雪の大地)の某有名玩具ブランド製(音にきこえし名馬)で、日本へ空輸(銀の龍=飛行機)されてきました。二輪戦車は自転車。子供(騎士)が成長すると、ちびっ子(新たな騎士)のいる余所のお家へ譲られていきます。
《子供の情景》 第九曲 《木馬の騎士》より着想を得て
大人になって初めて詩を書いたぜ(´・ω・`)