6話 優花のお弁当
明日からは7時、12時、20時に投稿する予定です。時間は変動する可能性があります。
平日になったため、優花さんと一緒に走る日。まずは準備運動から始める。
「準備運動って毎回真剣にやった方がいいの?」
「スポーツとかをするときはしっかりとやった方がいいよ。でもランニング程度なら軽くで大丈夫だよ」
「ありがと」
今までちゃんと見てこなかったから特に感じなかったけど、優花さんって本当にモデルなんだなって感じる。スタイルはいいし顔は可愛い。欠点と言う欠点がない。
「どうしたの? そんなにまじまじと見て」
「あーえっと。かわいいなって思っただけ」
ここで嘘を言うのはよくない。逆に嘘をついて墓穴を踏む方が怖い。
「ふーん。仁さんもそういう目でみるんだね」
そういう目とはなんだ?
「よくわからないけどかわいい子、かっこいい子がいたら誰でもかわいい、かっこいいと思うのは普通じゃないのか?」
「そっか」
そこで会話は途切れ、ランニングを始める。距離を伺いながら優花さんの気をこちらに向けないように俺は走る。最初は緊張してか俺の方をチラチラとみていたけど、途中から走りに集中するようになった。
(体力がない分、走りに集中すると俺に気が回らなくなる。それで結果俺がこれぐらい近くにいましたよって言い、少しでも自信を持ってくれれば)
自分のことは何もできていない癖に他人のことはちゃんとやるって。まずは自分のことだろ...。
今日は距離を見つつのため近くにはいかず、程よい距離で走っていたが、今週中に出来る限り近くに言って走りたい。それで自信をつけてもらえたら何よりだ。
走り終えて家に着く。
「お疲れさま。結構疲れた?」
「まあまあかな? でもこれぐらいの距離なら毎日走れると思う」
「そっか。じゃあ明日からもこの距離を走ろっか」
「わかった」
家に入り、お互いシャワーを浴びる。
(本当家に風呂場が2つあって助かったわ)
シャワーを浴び終えて居間に行く。まだ優花さんが下りて来ていない。じゃあノートでも書くか。ここからどれぐらい成長したかを示すノート。
今日は隣に走りながら男性と走れたっと。
俺が書いているところで優花さんが居間に来る。
「何書いているの?」
「優花さんの成長日記だよ」
「え?」
「こういうのは目で見えるものをきっちり用意したほうが治りやすいって言うからね」
驚いた顔でこちらを見てくる。
「そっか。ここまで考えていてくれたんだね」
「あーうん。」
(これは俺が自分自身のために考えたなんて言えない。俺の問題を優花さんに言うわけにはいかない。これは俺が克服しなくちゃいけない問題だから)
俺は部屋に戻る際、嫌気が指して笑いながら声が出る。
「克服って言っても誰かを頼らなくちゃできない問題なんだよな」
優花さんとは別々に家を出ている。俺がいつも先に出ているため、学校に向かおうとすると
「仁さん。お弁当。この前約束したから」
「え? ありがとう?」
「なんで疑問形なの? 行ってらっしゃい。また後でね」
笑いながら優花さんが俺に言う。
「あ、うん。行ってきます。また後で」
なんだ? この夫婦みたいな会話。学校に着くといつも通り突っ伏す。すると隆一が俺に話しかけてくる。
「おはよ。もう夏だな。今年もサマーリーグが始まるな」
「おはよ。そうだな、日本人選手も出てほしいけど、それよりも期待の若手とかがみれるのがいいよな」
「そうそう!」
俺たちがバスケの話をしているとクラスメイトの男子が話に入ってくる。
「榎本はともかく龍宮寺もバスケ好きなんだな。いやそう言えば体育の時めちゃくちゃうまかったよな」
「そうなんだよ。こいつな~」
「やめろ隆一。昔のことは言うな」
「あ、悪い」
「まあバスケは好きだよ。少しかじってたからね」
「そっか。お互い仲良くしようぜ」
「おう」
今話しかけてきた奴---菊池岳はクラスの陽キャ。俺とは真逆なタイプ。でも仲よくしてくれるなら助かるな。これで話せる奴が増えて嬉しい。
ホームルームが始まる少し前に優花さんが来る。質問攻めは無くなったが、まだ人だかりができている。優花さんの心情を知っている以上、男子が来ると可哀想と思う。
(早く治してあげられればいいけど)
午前中の授業は何もなく終わり、昼休みに入る。お弁当をここで食べるのはやばい。優花さんと席が近いため周りの女に見られたら勘違いされる可能性がある。俺は隆一と菊池くんを誘い、屋上で食べる。
俺がお弁当を出してたべようとすると隆一が
「弁当なんて珍しいな」
「まあそうだな。親が作ってくれるからさ」
「そっか」
菊池くんがここで
「でも弁当を見る限り結構手が凝っているな。いい親だな」
菊池くんに言われて思う。この弁当は手が凝っているのか。優花さんには申し訳ない事しているな。ありがたく食べさせてもらいます。心の中でお礼をいい食べ始める。弁当の中なウインナー、卵焼き、ほうれん草のソテー、唐揚げ、コーンの炒め物。言われてみれば本当に手が込んでいる。おいしく弁当をいただきつつ3人でバスケの話をして昼休みが終わる。
午後の授業も特に何もなく終わり、家に帰る。程なくして優花さんも家に帰ってきたので
「弁当ありがとう。本当においしかったよ」
「本当! そう言ってもらえると作ったかいがあったよ! 次からも期待しててね」
「うん」
その後も他愛の無い話をして1時間程度したところで家のインターホンがなる。インターホン越しにでる。
「こちらに鈴木優花っていう人はいますか?」
尋ねてきたのはめちゃくちゃイケメンな男性だった。
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