5話 日常の変化
明日からは7時、12時、20時で投稿する予定です。時間は変動する可能性があります。
週末は特にやることがない。優花さんはモデルの仕事。父さんと美穂さんは二人で出かけた。
「うーん」
何をしよう。勉強は2学期までやってあるし、優花さんの件も今できることはない。
「この前のお礼でもいくか!」
俺はそう思い、ゲームセンターに向かう。程なくして着くと、いつも通り顔見知りの不良たちがいた。いつもなら関わりたくはない存在。何をされるかわからない。それでもこの前のお礼をしないのは人間としてクズだと思う。
「みなさんお久しぶりです」
すると不良の1人がこちらを向き、話しかけてくる。
「お前誰だ?」
この人、知らない人だ。
「えーと。この前助けてもらったものです。後ろの人たちに言ってもらえないですか?」
「あぁ」
必要最低限の会話ができる人でよかった。すると後ろで座っていた不良数人がこちらに笑顔でやってくる。笑顔で来るって怖すぎ。
「おぉー。音ゲーの奴じゃん! どうした」
「この前のお礼に来ました。本当にあの時はありがとうございました」
「いいってことよ。お礼なんていいのによ」
俺は学生らしくお菓子と飲み物を渡す。
「あざっす」
「いえいえ。ではこれで」
「まてまて。ちょっと話そうぜ」
「はい...」
まあこうなることは予想がついていた。
トップっぽそうな人---川原卓也と話していてわかった。俺は偏見を持っていたんだな。こんなに優しい人なのになんで拒絶していたんだろう。会話は続いて、川原さんの話。俺の話。優花さんの話をした。優花さんのことは隠しつつ話した。俺が本当のことを言っていいわけじゃない。
なんやかんや1時間ほど話したところで、不良が一気に10数人増える。
「え? なんでこんなに増えているの?」
「毎週土曜日にここで集会をするんだよ。紹介が遅れたな。俺はここら辺を仕切っている自由組のトップをやっている川原だ」
「...」
唖然とする。なんだ? ここら辺を仕切っているって。でも話していて悪い奴ではない。でもやっぱり誰であろうと俺は人を信用することができない。
「そっか。すごいんだな」
「お前は拒絶しないのか?」
「最初はしていたよ」
すると不良の一人が「なめた口きいてんじゃねーよ」と叫びながら俺に殴りかかってくる。俺はうまくかわしつつ、背後に回り関節技を入れる。
「仁って喧嘩できるのか?」
俺はすぐに関節技を解いて話し始める。
「できないよ」
「嘘はよくない。お前、場数を踏んでいるようにしか見えないけど?」
「まあそこは聞かないでくれ」
「卓也さんと喧嘩したところで勝てるわけじゃないだろ」
俺は笑いながら言う。すると
「まあそうだな。俺にさんはいらない。卓也でいい。お前とは対等な関係でいたい。数年前から顔見知りだったんだからもう達だろ?」
「おう。じゃあ連絡先交換しない?」
「いいぜ」
連絡先を交換して俺は家に帰る。優花さんと会わなかったら卓也とも友達になれなかったんだろうな。いや、なれた可能性はあるけどそれはもっと先のこと。
家に着くと家族全員がそろっていた。
「仁おかえり」
「仁くんおかえりなさい」
「仁さんおかえり」
「ただいま」
みんなに迎えられるだけでこんなに気持ちが温まるんだなって感じる。昔はほとんどが父さんが仕事で家にはいつも一人。こんな生活を数年近く続いていたので家族ができるってこんな感じなんだなって思った。
(本当にそれは家族と思っていいのか? 俺の弱さに付け込んでいるだけではなくて?)
読んでいただきありがとうございます。