番外編2話 優花視点2
学校に向かう時も仁さんは私に気を使って家を早く出てくれた。なんでこんなに優しいんだろう...。学校に着くとまずは職員室に行く。担任の先生になる方と話して教室に向かう。担任の先生が男だったけど、全然私に興味がなさそうだった。逆にこういう態度の方が気持ち的にも助かる。
教室に入るとみんなが騒ぎながらこっちを向いてくる。いろんな人から見られるのは慣れているからいい。それよりもホームルーム後に質問ばかりされそうで嫌だな。席はって思ったら仁さんの後ろだった。突っ伏していてわからなかったが同じクラスだったのね。
(少し助かるかも)
でも同じ家で暮らしているってバレたくはないから仁さんにくぎを刺す。仁さんもわかっていたっぽくてすぐさま返答をしてくれた。
やっぱりホームルームが終わったらみんなが質問をしてきた。嫌々ながらもちゃんと返す。仁さんは助けてくれずに突っ伏している。
(ここは助けるところでしょ!)
ちょっとイライラしながらもホームルームが終わる。
1限が始まると仁さんが教科書を貸してくれる。この高校は頭がいい。私がついていけるかわからないレベル。1回でも多くちゃんと授業を受けたかったため非常に助かった。だけど仁さんは授業中も寝てしまった。すると先生が怒り始める。
(私のせいだよね...)
教科書を返そうとしたら、仁さんが先生に苦し紛れの言い訳をして言い逃れていた。その後の授業も教科書を貸してくれた。その時間もずっと寝ていた。
(私と違って本当に優しいな)
お昼休みになって気付く。お弁当を家に忘れた。いつも財布の中は万札かカードしか入っていないため学食は使えないしどうしよう。
困っていたら仁さんがみんなに気付かれずにお金を貸してくれて、教室を出る。私もお金を借りたため、みんなに場所を聞きながら購買部に行きパンを買う。
(本当に助かった)
その後、この間連絡先を交換したので連絡をする。
[教科書とお金ありがとう。家に帰ったら返す]
ちょっと強く言っている気もするけどいいよね。連絡をしてすぐに返ってきた。
[はい]
「そっけない」
言葉にでてしまった。すると周りの女子から
「なになに? 男子?」
「違うよ!」
「そっか。怪しい~」
と笑いながらも深くは突っ込んでこなかった。まだ会って初日のため予想はしていたが、助かった。
5.6限は体育だったため、体育館に向かう。体操着がないため私は見学。男子の方はバスケをやっていたため、見ていると仁さんがものすごく活躍していた。
(あの見た目でなんであそこまで運動神経がいいんだろう? 優しそうだし、ちょっと相談してみようかな)
家に帰って仁さんに相談をする。
「私に体力をつけてほしい」
「...」
私が言うと数秒間返答が返ってこなかった。やっぱりこの人もみんなと同じってことか。
「馬鹿にしたでしょ。やっぱりいい」
「違う違う。教えるよ」
ふざけて言っているなら断ろうと思ったけど、真剣に答えてくれた。平日は毎日空いているけど、毎日顔を合わせるのは...。そう思い月曜と木曜に指定してお願いした。
毎朝ランニングをすると言っていたので、ジャージに着替えて走り始める。最初は隣で走られて緊張したけど、途中から後ろを走ってくれて緊張もなくなった。走り終わり、家でシャワーを浴びる。
「2kmも走ったの久しぶり...」
こんなに走れなかったんだ。シャワーを浴び終わってから少し会話をする。
「優花さんは基礎体力がないね」
失礼ね。わかってはいるけど!
「そうね。運動面全般ができないわ」
自分で言ってて恥ずかしい。でも仁さんは真剣な顔で問いかけてくる。
「なんで体力をつけたいの?」
「モデルをやっているから疲れない程度には体力をつけたい」
私の回答にも真剣に考えてくれていた。私の体のことすら考えていてくれて優しさを感じる。私もここまでしてもらってるからお弁当ぐらいはって思い仁さんに作るといった。すると仁さんの驚いた顔を見た。
(初めて見たけど、案外かわいい)
なんでこんな人に試すようなことや嫌いって言ってしまったんだろう。そう思い、本心をちゃんと言う。拒絶されると思ったけど、真剣に聞いてくれて一緒に克服していこうとも言ってくれた。
(この人なら信用していいよね)
私はそう思いながら仁さんを頼ることにした。
次の日、学校で1日観察してくれたらしく、結論を言われた。
「男子が近くにいるの苦手だよね」
わかってた。でも他人に言われて実感した。本当に苦手なんだ...。その後のこともちゃんと考えてくれていて、仁さんの優しさが身に染みた。
(ここまでしてもらった。私も仁さんが困っていたら助けてあげたい)
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