4話 優花と仁の日課
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朝のランニングが終わって、お互い別々に学校へ向かう。優花さんの苦手を克服するためには一緒に通った方がいいかもしれないが、今日それを言われて今日からさて一緒に通いましょうとはいかない。優花さんのペースがあるだろうし、苦手なことに取り組むときは気持ちの整理が必要だと思う。誰かに手助けをしてもらうのはいいことだと思う。だけど最終的には自分を見つめなおさなくちゃいけない。そのためには本人自身が徐々に自分と向き合う時間を作らなくちゃいけないと思う。
その第一段階として気持ちの整理が必要だ。ここで踏み込めれば大きい。0と1の差は実際みんなが分からないだけで本当に難しいこと。それをやれるかどうかだ。
俺もまだ踏み込めてすらないんだから偉そうなこといえないよな...。
まずは学校での優花さんを観察しよう。そこで男のどこが苦手で、どこからがセーフなのかを見て確かめたい。
学校に着くと俺はいつも通り席に着く。優花さんの席は後ろなので、顔を見ることは難しい。だから声と行動でまずは確かめる。後は...。
やはり優花さんが登校してきてから、クラスが少し騒ぎ出して優花さんの席の周りにクラスメイトが来る。最初の方は女子が来ていたので、いつも通りのトーンで話していたが、クラスの中心人物---森俊也が着た瞬間声のトーンが上がる。でもすぐに声のトーンが戻りいつも通りの会話が始まる。森くんが優花さんの席を触った瞬間声が高くなり、それ以外にもちょくちょく声が高くなる瞬間があった。
今日一日観察していて分かったことがある。クラスメイトと話していた時の行動と、男性教員が近くを通った時の音。女性教員の時はなんも音がしなかったが、男性教員が通るたび時のみ、少し椅子をずらす音が聞こえた。このことから優花さんは男性が近くにいることが苦手と思う。
陰キャの技術と中学時代までバスケをやっていたことがここで役に立つとはね。でもやっていることって一歩間違えたらストーカーだよな...。
まあそんなことはどうでもいい。男性が近くにいること自体が苦手ってことは予想がついていた。今後はそれがどのラインからなのか。それでどうやれば克服できるかを確かめたい。
家に帰り優花さんと話す。
「優花さん。男子が近くにいるの苦手だよね」
「うん」
「どのラインから緊張するとかある?」
「わからない」
まあそうだよな。
「俺にも緊張するよね?」
「うん」
「よかった。じゃあ俺を実験台として確かめよう。まず今日ランニングしたとき、俺との距離は緊張しなかった?」
「最初は緊張したけど、後々大丈夫になった」
ランニングした時、最初は隣で走っていたけど、途中から後ろで走り始めた。でも最初はお互い緊張もするし、明確にはわからない。でも最悪の場合で考えた方がいいと思っている。だから隣で走るのは無理。だけど後ろで走るのは大丈夫と。それだと視野に入るライン、男性を認知していても視野に入らなければ大丈夫ってことだよな。
「じゃあ今度からは少し距離を取りつつ隣で走ろうかな」
「え? なんで」
「現状大丈夫なことをしても克服はできないと思う。だから緊張している距離を知りつつ、それを短くしていけば苦手意識もなくなる。優花さんは男性が近くにいても普通に話せているから俺たちでも治せる範囲内だと俺は考えているよ」
「そっか」
「後提案なんだけど学校から帰ってきてランニングするのは精神面的にも疲れている時があると思うから、ちょっとハードになるけど優花さんが許す限り朝ランニングしない?」
「わかった。じゃあちょっと確認してくる」
「了解」
優花さんが部屋に向かう。今話した距離はテーブル1つ分の距離。今話していた時少し目線が泳いでいた。この距離だと厳しいってことか。
数分立ち、優花さんが居間に降りてくる。
「土日は厳しいけど、平日なら大丈夫」
「わかった。じゃあ来週から一緒に走ろうか」
「うん」
二人でやることを決めて部屋に戻る。優花さんは体力がない。だけど平日は毎日走るから、疲労を残さずに走れる距離は...。いろいろ考えることはあるな。でも先週から一緒に暮らし始めた時はこんな生活になるとは思わなかった。あの時はギスギスしていたけど、今は少しばかり楽な雰囲気になった。このまま順調に仲良くなれればいいけどな。
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