3話 手助け
体力をつけるにはまずは現状を知らなくてはいけない。そのため今日はランニング。優花さんがどれぐらい体力があるのかはわからない。走り終わってから方針を決めていく予定。
昨日のうちに予定は言ってあるので、朝起きていると思う。6時30分ごろ居間に降りると、すでにジャージ姿の優花さんがいた。いつもと違って新鮮な感じがする。ぶっちゃけかわいい。俺がそう思っていると
「遅い」
「ごめん。ちゃんと時間を伝えてなかった。今度から朝6時30分集合でいい?」
「うん」
「それじゃあランニングしようか」
俺と優花さんが家を出て、いつものランニングコースを走り始める。
10分程度たって思ったが、優花さんは体力がない。運動やスポーツにおいてフォームが重要。歩くフォームや走るフォームができていないと、フォームができている人より息切れが早く起こる。でもフォームがすぐ身につくわけではない。逆にフォームが汚くても体力さえあれば大抵のことはできる。
俺は考えながら2kmほど走り家に着く。お互いシャワーを浴びる。俺の家には風呂が2つあるため、お互い別々のところで浴びる。居間に戻ると優花さんがすでにいた。シャワー後の優花さんからいい匂いがする。いやいや、俺たち兄弟だし邪な考えをしちゃいけない。それ以上に頼ってもらっているのに俺がこんな考えをしていたら失礼だ。気持ちを切り替えて本題に入る。
「今日のランニングを見る限り、優花さんは基礎体力がないね」
「そうね。運動面全般ができないからね」
「それでだけど、なんで体力をつけたいの? どれぐらいつけたいかによってメニューを変えなくちゃだけど」
「モデルをやっているから疲れない程度には体力をつけたい」
「まあそしたら月曜、木曜の朝と夕方一緒に走るって感じでいい?」
「そうね。でも一緒に走る意味はないんじゃない?」
まあ一緒に走る意味はない。走ることならだれでもできる。でもこの前みたいに誰かに絡まれてたりしたら困る。でもそんなこといったら絶対に拒絶されるし...。
「優花さんの体の心配かな。無理して走ると次の日に体がもたないから注意する係かな」
「そ。まあいいけど。じゃあ今日から宜しく」
「うん」
そう言えば、まだ数日しかたっていないのに、睨まれなくなったな。でも正面で嫌いって言われたし過信はよくないよな。
「私だけ教わるのもよくないし、学校にもっていく弁当を作るよ」
「え?」
「仁さんのことを嫌いって言ったの覚えてる?」
「うん」
さっき考えていたことだしね。
「今でも嫌い。いや、嫌いってより苦手って言った方がいいかな。私、男の人が苦手。だからここ最近強く当たっていた」
「そっか」
「だから仁さんを克服すれば徐々に男の人も克服できると思うんだよね。だから協力してくれない?これが体力をつけてって言った本音」
「そう言うことならいいよ。できる限り手伝うよ」
「ありがとう。じゃあまずはお弁当からね」
「ありがとう...」
嫌っていたわけじゃないのか。でも嫌いも苦手も似たようなものだしな。できる限り克服を手助けしたい。俺だって克服しなくちゃいけないことはある。でも身近な人物が助けを求めているなら、自分自身のことより優花さんを優先してあげたい。
俺も克服できるかな。人を信用することすらできない俺が...。
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