20話 優花への信用
この話で仁の問題編は一旦終わりです。ここから夏休み→お盆→文化祭の順で書いていくつもりです。
皆さんがブックマークや評価をしていただいたため、長期連載することにしました。
今後もよろしくお願いします。
森くんが何を言っているのか一瞬わからなかった。俺がカンニング? いつ? 俺ですらわからない。すぐ先生に弁解する。
「やっていません!」
「まずは森の意見を聞く。いつ龍宮寺がやったんだ?」
「最後のテストの時、隣に座っている結城さんのテストを見ていました!」
「結城。本当か?」
「わかりません。ですがそんな視線は感じませんでしたが」
結城さんの言葉で少しホッとする。でも実際は見ていないし、視線を感じる方がおかしい。それでも先生は言う。
「一旦森と龍宮寺は一緒に生徒指導室に行こう。後親御さんも呼ぶ可能性もあるからな」
俺が考える余裕もなく向かう。すぐ森くんと先生の話が始まる。俺が弁解に入ろうとすると、先生はちょっと待て。後で聞くからといって話を聞いてもらえない。
(やっぱりこんなもんだよな。信用に値する人なんていない)
俺が絶望に染まっていたところで生徒指導室が開き、優花や普段話したことがないクラスメイト達が埴ってくる。
「先生! 仁はカンニングなんてしていません」
「なんでそう言える?」
「考えてみて下さい。仁がテスト受ける席は後ろから2番目。森くんが受ける席は後ろから3番目。その時点で森くんが後ろを向いて仁を見たってことになります」
「森はどうなんだ?」
「...」
「それでも説得力はないと思ったので、一番後ろでテストを受けていた子と仁の周りに座っていた子にも来てもらいました」
するとクラスメイト達が俺の弁解を図ってくれる。
「龍宮寺はやっていない」
「そんな素振りを龍宮寺くんしていませんでした」
「そうか。みんなの意見はわかった。森はどうなんだ?」
「えっと。気のせいだったかもしれません」
「龍宮寺悪かったな。じゃあみんな帰っていいぞ」
え? それだけかよ。ここまで話を大きくしておいて、森くんのお咎めは無しで、帰っていい? おかしくないか? 俺がそう思ってそれを言おうとすると優花が言い始める。
「それはおかしくないですか? 仁に迷惑をかけて森くんはお咎めは無し。それで表面上の謝罪だけで帰っていいですか? おかしいんじゃないですか? それに仁、お前あの状況で仁の意見を聞いてもらえたの?」
「聞いてもらえてない」
「それはまず森の意見からって思って」
「それは不公平じゃないんですか? まず森くんの意見を聞く? じゃあその時の仁の心情はどうなんですか? 一方的に聞いていたって言うのはおかしいと思います」
「...」
「このことは校長先生に言わさせていただきます。今の話も録音させていただきましたので」
「え?」
先生が呆然としたところで優花が俺を連れて生徒指導室から出る。優花は校長に今の話を聞かせてくるって言って校長室に向かった。俺が棒立ちしているとクラスメイト達が俺に話しかけてきた。
「本当にすっきりした! あいついつも森くんのことばっかりひいきしてさ。今回森くんが仕掛けた罠だって優花ちゃんに言われて納得しちゃったよ。だって龍宮寺くん頭いいのに普通カンニングなんてしないじゃん!」
「そうそう! 龍宮寺くんに被害がなくて良かったよ!」
「みんなありがとう」
「お礼は優花ちゃんに言ってね。今回は優花ちゃんが一番に言いだしたことだから」
(あ~。本当に...)
「わかった。それでも本当にみんなありがとう。俺は優花のこと待ってるからみんなは帰ってもらって大丈夫! 本当に助かりました」
みんな俺が言うとニコニコしながら帰っていった。俺が優花を待って数分立ったところで優花が校長室から出てきた。
「え? 待っててくれたの?」
「普通待ってるよ」
「うん。ありがとう?」
「こっちこそ本当にありがとう」
「今回のことは厳重注意で終わりだって。でも今後はこんなことないと思うよ」
「ありがとう」
他人からこんなにしてもらったのは初めてでなぜか涙が出てきた。あ~。今回は優花に助けられた。優花が居なかったら今頃どうなっていたかわからない。優花を今回信用したってことだよな。
「え? なんで泣いてるの?」
「いや。今回のことが嬉しすぎてね」
「...」
「多分だけど、優花のことを信用できると思う。今回の件は優花に全面的に頼り切っていたと思う。だから今後も頼ろうと思ったし、信用しようとも思った」
「そっか。ならよかった。でもまだ仁の問題が克服できたわけじゃないから一緒に頑張ろ!」
「あぁ。今後もよろしくな」
優花になら心置きなく信用できるかもと思い始めた。
読んでいただきありがとうございます。




