13話 優花を助けた後
ここ最近特に何もなかったため、油断していた。学校帰りに人が少ない場所で俺たちはばったりと西村と会ってしまう。いや、多分待ち伏せしていたんだろう。普通こんな道は通らない。
「優花! 会いたかったよ!」
震えながら俺の袖を掴む。
「優花に何か用ですか?」
「君は確か優花の家に行った時に出た人だよね? 優花とはどういう関係なのかな?」
「付き合っています」
「フーン。優花は俺のなんだよ。悪いけど別れてもらえる?」
なんだ? こいつ優花のことを物のように言って。
「無理。悪いけどあきらめてくれる?」
「は?」
すると西村は殴りかかってきて、受けてしまう。
「人の女取ってんじゃねーよ」
俺が倒れると、優花も呆然と震えながら立ち尽くしてしまう。俺が問いかける。
「お前は人の気持ちも考えられないのかよ!」
俺は西村に殴りかかり喧嘩を始める。お互い一歩も譲らない戦いをしていたが、均衡はすぐに崩れる。西村がナイフを出してきた。
(やばい。今の体力でよけられる余裕はない...)
ナイフが腹部に刺さると同時に俺は西村に頭突きをして、西村を失神させた。
「仁! 仁! 大丈夫?」
優花に問いかけられたけど、意識が徐々にうっすらと霞んでいき、意識を失った。
目を覚ますと病院にいた。それと同時に腹部に激痛が走った。
「仁!」
優花が俺の顔を触りながら泣き始めた。
「心配させないでよ!」
「ごめん。あいつはどうなった?」
「今は警察が保護している。あの時、通行人の人が動画を撮っててくれてそれが証拠になったって。そんなことより無茶しないで」
動画を撮っててくれた人には感謝だな。
「ごめん」
その後、俺のベットにうつぶせになって泣き続けていた。こんなに心配させちゃったか。本当に悪いことしたな。そんな時俺ははっと思う。
「優花。俺に触れて震えてないけど大丈夫になったのか?」
「え? そう言えばそうだね。仁に触れても怖くないかな?」
これは克服したってことでいいのか? でもなんでだ? 克服するきっかけでもあったか?
「それにしても、これで偽カップルも終わりだな。次学校に行く時からはまた普通の生活に戻ろうか」
「...」
返事がない。どうしたんだ?
「私はこのままカップルで続けてもいいと思うよ?」
何を言っているんだ? このまま偽カップルを続けるってこと?
「みんなに嘘つくのは申し訳ないじゃん」
すると優花は顔を赤くしながら言う。
「違うよ。これからは普通のカップルってことで!」
「...」
(普通のカップルね...)
「多分俺が西村から優花を助けたから好きになってくれたんだろ? それは一時の気持ちだよ」
付き合う資格は俺にはない。だからここで「そうだね」っていってくれると。
「そうじゃないよ。一生懸命私のために頑張ってくれていたこととか、いつも優しいところとか、そういう所全部が好きになったの。じゃあ仁は私のこと嫌い?」
好きか嫌いかで言えば好きだよ。それでも...。
「そっか。その気持ちは嬉しいよ。でも付き合うことはできない。ごめん」
「なんで?」
「俺自身の問題だから」
「問題を教えてよ。私の時みたいに一緒に解決しよ。今度は私が助けるから」
「これは俺の問題で、優花の問題じゃない。関係ないんだから突っ込まないでくれ」
優花ほど深刻なことではない。それでもこれは俺の問題で、優花の問題じゃない。優花を助けたのだって、救いを求めてきたから助けたし、俺だって知られたくない過去ぐらいある。だから...。
ちょうどいいタイミングで看護士がきて
「面会終了時間です」
「じゃあまた今度ってことで」
「...」
優花は悲しそうな顔をしながら病室から出ていった。これでいい。優花には優花の人生があるんだから、俺の問題で時間を使わせるわけにはいかない。それに優花はモデルなのに俺と付き合ったら黒歴史になるだろ?
そんな時、卓也から電話がかかってきた。
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