1話 龍宮寺仁の性格
父さんが籍を入れてすぐ鈴木家の2人が家にやってくる。
(今日から一緒に住むのか...)
この前会った時、優花さんには睨まれてるし楽しい生活が始まるとは思えないんだよな。でもぶっちゃけ俺の性格で仲良くなれる気がしない。学校では親友1人以外話せる奴はいない。そんな俺に同年代の女の子と一緒に住んで話すとかムリゲーだろ。それもモデルだし。
俺が考えている内に、親になった美穂さんが話しかけてくる。
「仁くん。なにか食べたいものある? 作るよ!」
「ありがとうございます。俺はなんでも大丈夫なので、美穂さんが作りやすいのでいいですよ」
ここで俺がなにか食べたいと要望するのは図々しい気がして、美穂さんに気を使う。すると優花さんが
「私、外で食べてくるから。夜ご飯もいらない」
「優花! ちょっと待ちなさい!」
美穂さんが優花さんに話しかけた時には家を出ていった。
まあ普通同年代の男子とひとつ屋根の下で暮らすと言われて、いい気持ちは持たないよな...。男ならまだしも女子はいろいろと繊細な部分もあるし。
「明彦さんに仁くんごめんなさい」
父さん---龍宮寺明彦は苦笑いをしながら答える。
「しょうがないよ。年頃の女の子はこんなもんだよ」
「それでもよ。仁くんも大変になると思うけど、よろしくね」
「はい」
話が終わると美穂さんが軽めのご飯を作ってくれた。普通においしかった。父子家庭だったため、いつも俺が料理をしていた。他人が作ってくれる料理がこんなにおいしいとは思わず、言葉が出るほどおいしかった。今後この料理が食べられると思うとちょっとワクワクした。
昼食を食べ終わり数時間した。まだ3人で話すのがきついのでゲームセンターにでも行こうと思い家を出る。近所のゲームセンターは不良のたまり場になっているが、俺も数年通っているため不良とは顔見知り程度になっている。そのため危害を加えられずにゲームに専念できる。そんな時、誰かの声が聞こえた。声の聞こえる方に行くと優花さんと知らない不良たちがもめていた。
「ちょっと、あなたたち邪魔なんだけど」
「は? 一緒に写真撮ってって頼んでいるだけだろ!」
「嫌って態度が分からないほど低能なの?」
「あ? モデルだからって調子乗ってんな。少し痛い目見てもらおうぜ」
俺的には絶対にかかわりたくない人種。不良とかかわったら絶対に無傷で帰れないし嫌だ。でも優花さん震えている。絡まれている女性を助けなくちゃだよな。ここで逃げたら人としても終わってしまう。
「あの。その女性俺の知り合いなので許してもらえませんか?」
「あ? ゆうの彼氏か! こんなさえない奴が彼氏とかウケるわ」
「彼氏じゃないんだけど」
「は? じゃあ出しゃばっただけかよ」
不良たちが笑い始めた。羞恥心を受けながらも話し続ける。
「彼氏じゃないですけど、俺の知り合いなので見逃してもらえませんか?」
「モデルだからって調子こいてるのが悪いだろ。少し痛い目見てもらわなくちゃな~。お前らもそう思うよな!」
「「「そうだよな」」」
この流れだと俺、ボコボコにされるパターンだわ。そのうちに優花さんだけでも逃げてくれたらいいんだけど...。
そう思っていたところでゲーセンでよく顔見知りの不良たちが話しかけてくる。
「あ! お前音ゲーの奴じゃん! なんでからまれてんの」
「いろいろありまして」
「そっか。まあ顔見知りだし助けてやるよ。今後お前とは仲よくしたいしな」
顔見知りの不良たちが俺たちに絡んでいた不良たちを威圧して助けてくれた。
「ありがとう」
「いいって。次ゲーセンに来た時にでも話そうぜ」
不良たちがそう言って去っていく。不良っていい奴もいるんだな...。そう思いつつも優花さんの方を向く。すると睨みながら俺に
「助けてなんて頼んでいないんだけど。いい迷惑」
勇気を出して助けたのにこの言いざまって。
「ごめん。俺自身のためにやったことだから今後は気を付けるよ」
ここで助けなかったら人間として、男としてくずになると思ったから助けた。それだけ。
「そ。じゃあ」
「待って。少しどこかの喫茶店にでもよらない? まだ近くに不良がいるかもだしさ」
俺が誘うと嫌そうな顔をしながらも了承してくれたので、喫茶店に向かうことにした。
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