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11話 お互いの呼び方

次の話から優花の視点に行きます。


 突然のことで驚く。なんで優花が俺の部屋に来るんだ? 家族と言っても義理だぞ? 今日俺なんかしたか? もしかしてス〇バに行ったことで怒ってる? 頭の中でいろいろと考えがよぎる。


「返事ないけどやっぱり入っちゃダメ?」


 少し不安そうに言ってきたので俺はすぐに返答する。


「ごめんごめん。入っていいよ」


 俺が許可すると優花が部屋に入ってくる。いつも居間でいる服装と違い、ピンク色で花柄の寝間着を着ていたのでドキッとする。


(かわいいな。こんなの普通の男子だったらやばいぞ。もうちょっと優花は優花自身が可愛いことを自覚した方がいい。俺だって男なんだし行動を改めてほしい)


「突然ごめんね」


「いいよ。どうしたの?」


 少し不安な気持ちを持ちながら尋ねる。


(ここまでいい関係を保てて来たのに、ここで今までの関係が崩れるのは嫌だな)


 俺が考えていることとは裏腹に違う回答が返ってくる。


「今日はごめんね。ママの前で呼び捨てして」


 そんなことか。俺だって呼ぶ機会がなかっただけで、機会さへあれば絶対に呼び捨てで呼んでいた。


「別にいいって。俺だって呼び捨てで呼んでいたと思うし」


「そう言ってもらえると助かる。それでなんだけど家でどう呼べばいい?」


 家でどう呼べばいいかね...。ぶっちゃけ呼び方なんてなんでもいいけど、義理とは言え家族になったんだから呼び捨てでいいと思う。こう思ってはいるけど俺自身ですらまだ美穂さんのことをさん付けしている。


(偉そうに思ったけど、俺自身ができていないからな。優花とは距離が近づいた気はするけど、まだ美穂さんとの距離が分からない)


 美穂さんが俺の事をどう思っているのか...。家族として見てくれているのか、それとも再婚相手の連れ子としてしょうがなくと思っているのか。こんな考えをしている俺が嫌になるけど、あの時以来最悪な場合も考えてしまうためしょうがない。


「お互い呼び捨てでいいんじゃない?」


 家と外で呼び方を変えていたら絶対に後々ボロが出ると思う...。ボロが出るんだったら今の内から呼び捨ての方がいい。


「私はいいけど仁は嫌じゃない? 私に呼び捨てされること」


「なんで?」


「だって最初は仁のことを拒絶していたんだよ? それなのに今更仲良さそうに呼び捨てで呼ぶって言うのは...」


 あーね。優花もいろいろ考えているんだな。でも出会い方が少し変だったから拒絶されていたのにも納得している。だから俺は別に気にしていない。


「会った時のことなんて、なんとも思っていないよ。だからお互い呼び捨てでいいんじゃない? 逆に俺の方こそ呼び捨てしていいの?」


「いいよ。仁ならいいって思ってる。それに今後もお世話になると思うし」


「じゃあ呼び捨てってことで!」


「うん」


「それだけ?」


「それだけ! 後ママが言って顔が赤くなってたけど部屋が暑かっただけだからね。勘違いしないでよね」


 優花が勢いよく言って部屋を出ていく。


(まずは俺が考えていたことじゃなくてよかった。仲が悪くなったら今後の私生活でも困るし。それにしてもそんなに部屋が暑かったか? でも温度を感じるのは人それぞれ違うからなー。それに勘違いすることなんて何にもなくないか? 暑かったなら顔が赤くなるのにも納得するし)


「まあ考えても結論なんて出ないしいいか」


 

読んでいただきありがとうございます。モチベーション向上になります。 

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