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03 求婚
きらきらとした月の光が宝石のように、室内にこぼれ落ちる。
場所が場所だから、柄にもない事を考えてしまった。
ともかく。
明るくなった室内で、王子様の顔がはっきりと見えるようになった。
整った顔だちと、金色の髪。
長いまつげと、宝石のような輝きを称える黄金の瞳。
それは一つの芸術品のようだった。
暗殺稼業一筋で生きてきた私の胸をうつような美が、そこにはあった。
月の光をうけて、こちらを見つける王子の美貌は、今まで見てきた人間の中でも一、二を争うものだろう。
王子様の人間離れした容姿を見て、思わず息をのんで固まっていると、相手も同じように固まっている事に気が付いた。
一体何だろう。
暗殺者お襲撃に対して、冷静に対処するほどの王子様が驚く事とは?
不思議に思っていると、相手が口を開いた。
「好みだ」
「へっ?」
「結婚してくれ!」
「えっ?」
何という事でしょう。
王子様を暗殺しにいったら、求婚されてしまいました。