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02 暗殺
「かくごっ!」
私は、ふわふわの布団に向かってナイフを振り下ろす。
一瞬で相手を絶命させられるようにと、おもいきり振りかぶったけれど、手ごたえが妙だった。
慌てて布団を引きはがすと、そこにはダミー人形があるのみ。
まさか、勘づかれていた。
最悪の事態が脳裏によぎる。
その一瞬後、恐れが現実になった。
首筋に冷たい感触を感じた。
剣の切っ先が当たっている。
ゆっくりと振り返ると、そこにはベッドで眠っているはずの暗殺対象の姿。
背後の箪笥が開いているから、そこに潜んでいたのだろう。
長剣を持った本物の王子が立っていた。
「ここまでやってくるとは、君はそうとう手練れな暗殺者だな。侵入者の気配に気が付かなかったら危なかった」
普通の王子は、寝ている最中に人が接近する気配に気が付いたりしない。
冷や汗を流しながら、考えを巡らせる。
その時、部屋の窓から月明かりが差し込んできた。
雲で隠れていた月が、顔をのぞかせたのだ。