表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/41

第八話 龍化

前回のあらすじ:ステータス閲覧ができるようになった。

俺はここ数年ずっと気にかかっていることをじーちゃんに打ち明けてみた。


それは俺の【レジェンダリアビリティ】である龍化の事である。


2歳だったかくらいの頃俺はじーちゃんの背中におぶわれ、狩りに連れて行ってもらっていた。

けど、俺が一人で立てるようになるともう背負うことも必要としなくなったためか家での留守番、兼自主訓練の日々へと変わっていった。


そのころ辺りだっただろうか。龍化に『極封印』なるものが付いていたことに気が付いたのは。

ついさっきまでは別に特段変わった様子もなく気にも留めてなかったのでスルーしてたんだが、技能鑑定を使えるようになって、さっきのじーちゃんの言動「カムイを見る時は成長が早いんでちょくちょく見とるよ」ってのが気になった。


あれは俺のステータスも確認しているだろうが、実は龍化の封印がきちんと動作しているかの確認の為だったのでは、と。


「ねぇ、じーちゃん。俺の龍化の事について教えてほしいんだけど」


その時、空気が一瞬凍り付いたようにじーちゃんは俺の顔をまじまじと見つめ、硬直した。


―――そして数分後。


「な、なんでそんなことが気になったんじゃ?」


「いやさ、俺が初めてステータスを閲覧した時には封印されてなかったのに気が付ないうちに『極封印』ってのが付いてたから気になったんだけど」


「で、でもなんで今気になったんじゃ!?」


「俺も今まで別に気にも留めてなかったよ。龍になったらでかいだろうし家の中じゃ使おうとも思わなかったからスルーしてた。だけど、さっきじーちゃんが言ってた「ちょくちょく見てるって」言葉がどうにも気になってな、もしかして、あれって俺のステータスを見ることも確かにあったかもしれないけど俺の封印がちゃんと機能してるのかどうか見てたのかなってな。そう思ったんだよ」


じーちゃんは黙ったまま無言の時が流れた。




―――そして何かを観念したように「はぁ~」と溜め息をつくと俺に話しかけた。


「そうじゃ。その封印を施したのは儂じゃ」


「ふむ。で、なんで封印したんだ?全然記憶にないんだが」


「多分お前さんはステータスのEDUとMNDについていまいち理解しとらんかった様じゃな。」


「???」


言っている言葉が理解できなかった。


「EDUって常識値・認知度、MNDは精神力にまつわるステータスのことだよな?」


「最初、お前さんのその2つのステータスはいくつだった?」


「1だな」


「そうじゃ。それでも前世での記憶が多少なりにあったな」


「うん」


「最近は前に比べて動じなくなってきたし、物覚えどころか以前の記憶や常識がすぐに浮かび上がってたりとは思わんか?」


「あー確かに」


「EDU1の頃のお前さんは前世での記憶があるにせよやはり赤子じゃったし、MNDも無いから無意識化に陥ることが多々あった。夜泣きはするし、おねしょはするし、おなかが減ればすぐ泣き喚いた」


「ま、まじか」


「多分無自覚なんじゃろうなと儂も思ったから心配はいらん。それでも食料調達に狩りへと行く時、お主を一人にするのは些か気がかりだったもんで背負って連れて行ったもんじゃ」


「あぁ、それは俺も覚えてるよ」


「前にここより北の山奥に熊を借りに行ったのを覚えとるか?」


「うーん2泊で行くから結構きつい狩りになるぞって言ってたのは覚えてるんだけど、最初の日に熊が居なくて野営したとこからよく覚えてないんだよなぁ」


そうだ、その日を境にじーちゃんは俺を狩りに連れてってくれなくなったんだ。


「やっぱりか。よかろ、あの日の事を話してやろうか」


「お、御願いします。」


「あの日は豪雪の中お前さんと野営した。今まで自我を失っても本能的な夜泣き位しかしておらんかったからな。だが、その日は違った。普段獣どもは自身より強者を狙うことが無いんじゃ。大丈夫だろうと儂も一瞬気を抜いてしまったんじゃろうな」


「ど、どうなったんだ?」


「熊がな、儂らのテントを襲ったんじゃ。目的はカムイ。お前さんじゃったよ」


「俺が……」


「儂はすぐに攻撃を避けたんじゃが、神威は寝入っておって理性で動けぬ状態にあった。そこに熊が吠えながら突っ込んできたもんじゃから寝ぼけて目を覚ました」


「う、うん」


「本能で身を守るためだったんじゃろう。お前さんは龍化しおってな」


「龍化するとどうなったんだ?」


「熊は秒もたたず死んだよ。だがそれがまずかった」


「ま、まってくれ。龍化ってそんなにやばいものなのか」


「龍化とは己の本能を極限まで高め変身する龍族の奥義なんじゃが、訓練もせず龍化すると野生に帰った龍族とおなじく本能のまま暴走することが多々ある。普段は自我が芽生えてから龍化について教え、15歳の成人の後、龍化の儀を執り行い変身を許される」


「普通は変身しようとも思わないもんな」


「そうじゃ。命の危険が昔ほど多くない現代では狭い街で龍化しようと思う子はおらんよ」


「龍化についてはわかった、ところで、龍化した俺はどんなだったんだ?」


「首は三本、腕は4本、脚は2本、尻尾は2本、大きな4翼を付けた黄金に輝く巨龍じゃった。お前さんは熊を気づかぬうちに踏みつぶし本能のまま強者である儂に目を付けたんじゃろうな。儂を食い殺そうとしてきた」


「……まじか」


「まじじゃ。儂もでかすぎるお前さんと対峙するには分が悪かったので龍化で対峙したんじゃがまさか儂が押されるほどに強力じゃった」


「龍化ってのは通常のステータスが低けりゃ言うほど能力値に大差がないんじゃないの?」


「通常はな、だがお前さんの龍化色々ぶっ壊れておって儂の龍化でも相当な手合いでな。体力を削り、弱って変身が解除されたと同時に本気で封印を施したんじゃ。お前さんが目覚めたのはそれから10日ほどした後の事じゃった」


「それで今の極封印が付いてる訳か」


「そういうことじゃな。最初の数か月はヒヤヒヤじゃったぞ。無自覚で暴走なんてされたら街が消し飛ぶレベルの強さじゃからな。だが、ここ数年はは封印が説かれるような無自覚は起っとらんし、EDUとMNDも上昇してるから問題はないと思う。じゃがその力が説かれると世界を救うどころか多分崩壊するじゃろう。それに龍化慣れをしておらんお前さんが龍化しても多分操れるかどうかがわからんもんでな。そこが気がかりじゃ」


「なるほどな。そういう理由であれば俺は龍化の封印が解けても使ったりしない」


「そうしてくれ、儂でも今の低ステに近づいた状態で変身されても次は止めれるかわからん」


「なぁ、俺が変身した場所、結構な山岳地帯だったよな。今はどうなってんだ?」


「今は湖になっとるよ」


「え?」


「お前さんの放つブレスは変わっておってな、3つの口から雷の魔力を一点に集中させて放つものと、その3つ首で中央に魔力玉を作って放つのがあった。その威力で山はえぐられ、大穴も出来て、それを連発するもんじゃから地形がもう残っとらん。それがくぼんだ場所に雨水が溜まって今は湖じゃ」


俺の龍化のせいで地殻変動が起きてたなんてな。

しかも自我を失って本能で動いちまったら俺の思い通りに事を成せねぇ。


諸刃の剣じゃ実用は無理だな。

龍化は使用しないことを決めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ