表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/41

第六話 『魔法』と『気』 その1

前回のあらすじ:流派を取得しました。

俺がかかしを壊した翌日。日課の掃除を済ませ、素振りも終わらせた後、今日は魔法の勉強をすべく中庭にいた。


じーちゃんは朝食を済ませたのか今の引き戸は開いており、いつものようにのんびりと茶をすすりながら俺の方を向いている。


「まずは初歩の火属性呪文から、エン!」


腕をやや斜めに土の方へ向け、魔法を唱えてみたが反応はない。


「あっれ、出ないな。じゃあ次は水属性で……スイ!」


魔法は発動されず、何も反応はない。


「な、なんでだ? よ、よーし!風属性ではどうだ! フウ!」


特に変わった様子は無い。


「ええい! 土属性ならどうだ! !」


恥ずかしい声だけが木霊し、静まり返る。


「なぜだ、何も出ない」


「そりゃ、何も魔力を行使させてないのに魔法が使える訳がなかろ?」


そんなに呆れてか、じーちゃんが声をかけてくれた。


「魔力を行使していない?」


どうやら魔法とは体内の魔力を制御して外へ放出するときに初めて発動するのだと教えてもらった。

が、それを意識して再度魔法を唱えてみるも出ない。


「カムイ、たしかお前さんの世界では魔法が無かったと言って居ったな」


「あぁ、そうだけど……」


「この世界の子等は皆普段から当たり前のように魔力を循環させ、魔力を制御できておるから簡単な魔法なら大抵行使することができる。……それは詠唱魔法やその他の魔法が使えぬものであっても、だ」


じーちゃんが言うには魔法書などに載っている放出系などの魔法が使えなくとも魔道具などを起動させることができるこの世界の住人は無意識に魔法を行使できているとのこと、らしい。 魔道具見たことないからしらんが。


「その理屈なら俺は何で魔法が使えない?」


「まずカムイは根本的に魔力や気をなにも操作しておらんじゃないか」


「???」


「うーん。こればかりは言葉で言うより体で覚えた方が良いかもしれんな。ちょっとこっちゃこい」


言われるがまま、じーちゃんの目の前に立った。


「まずな。魔力を操作するって言うのは体内の魔力を移動させることから始まるんじゃが」


そうぶつぶつ言いつつ俺の体の中心に手を添えた。

するとゆっくりと体の中から何か『柔らかく暖かいもの?』が移動しているような感覚を覚えた。


「おぉお? 何かが動いてる気がする」


「今は動いてる様子を解りやすくする為に魔力を少しだめ集めて動かしておるからの。これで動かすってことが理解できたならええんじゃが」


「これは気も同じなの?」


「そうじゃよ。まぁ、今からこれを自分で操作してみな」


胸から手を離したあと、ゆっくりと魔力の循環は止まった。

それを今度は自身の力で動かしてみる。イメージするのは大動脈から大静脈へ、血流の流れと同じように巡らせるのが理想だと思ったのでその通り動かしてみる。


「お、どうやらうまく巡らせることができた様じゃな」


自分では魔力を均等に循環させているので感覚が無いのが難点ではあるが、どうやら出来ているらしい。


「それでじゃ、次は自身とその属性との相性があってな。それが一致しないとその属性の魔法は使えん、というわけじゃな」


「どうやったらそれがわかる?」


「ちとまっとれ」


そう言い残すとじーちゃんは今の奥から捨ててもいいような湯呑に水を汲み箸を挿して持ってきた。


「まずはお前さんの潜在的な属性から図るとしようか。その後にできる魔法を調べる。良いな?最初は何も考えず魔力を外に出してみるんじゃぞ」


そんな風に言われると色々考えてしまうというか……大丈夫かな?とりあえず無心無心……。

そっと湯呑に手を触れ、魔力を湯呑へと出す。


湯呑に反応はない。


「あれ、これ失敗した?」


俺が湯呑に触れようとした瞬間。


バチッっと静電気の様なものが指にあたったのがわかった


「なんと珍しい。こりゃ雷属性じゃな」


「雷か、俺は雷好きだからいいけど」


「バカモン!雷属性と言うのは『複合二大属性』に分類されておってな、これが使えるということは火と風属性も同様に行使可能と言う事じゃ」


へー、そうなのか。俺の中での雷魔法って勇者専用の特別な魔法のイメージがあるんだけど。なんだ……嬉しかったのに。こっちだと複合属性の1つって認識なのか。


「次にどんな属性が使えるかも見ておくとするかの。次は使えるかもしれない属性を意識しながら触ってみな」


その後、何度か湯呑に触れてわかったことがあった。

俺は全属性『火』『水』『風』『土』『氷』『雷』『光』『闇』のすべてを行使することができるということが分かった。それはじーちゃんを驚愕させた。


「まさかすべて使えるとは……」


「それは凄いことなのか?」


じーちゃんは冷静に語りだした。


「通常な、属性との相性を最初に出したことには意味があり、その属性に対する自身の親和性が関係しておるからなんじゃ」


「親和性?」


「その属性と自身がどれだけ密接に干渉しあっていてその構造を理解しているのかと言う事じゃ」


「つまり俺が全属性を行使できるって言うのは―――」


「待つんじゃ!これ以上は何も言うな。ここからは儂の話を聞いておれ」


俺はコクリと頷いた。


「お前さんの世界には魔法が存在せんと言っておったな。それはとても幸運なことじゃったんじゃろう」


「………」


「この世界でも太古の昔、そうじゃな儂が今8912歳じゃからそれよりも昔の時代には全属性を使える者が多々おったそうじゃ。じゃが今はいない。それはどういうことを意味しておるかわかるか?」


じーちゃんの言いたいことが大体解った気がする。

地球で魔法や気・神通力、多分その他多くの能力が存在しないってことは単独での技量だけで世界を揺るがす脅威はないということだ。

攻撃魔法とか呼ばれる破壊魔法の基礎概念は戦争利用の魔法であって、その用途過多でこぼれた知識が自己防衛として魔物を討伐する為に使われたり、もっと落とすと家庭用途で使われたりしている。

魔法が無い地球であってもそれは同じこと。ただ日本と言う国が民営で各自の独自技術を伸ばしたおかげでその道理がまかり通らなくなってるように錯覚させられているだけで強い技術の裏には同様に軍事利用も可能だという事の証明になっている。


「お前さんが全属性を行使できるということは、お前さんの世界ではごくごく普通に世界の理が解析されており、大体の知識を身に着けておればほぼ全ての住民が全属性を使えるということにはならんかの?」


すべての世界の住民がそうかはわからないが、こと日本においては生物学・物理学・科学を最低限度基礎教養として覚えさせられるし、元素記号化された目に見えないレベルでの知識教養を有している。

プロの世界ではまだ元素単独での並列移動まではとはいかないものの『加熱』させて元素の変化させることもわかるし『分離』機等で元素分離させその隙間に別の元素を混ぜ込むこともしてるし『性質他応用』で従来の使用用途以外の使い方が多々見られる。

大手企業全般に言えることだが、大体製薬会社や部品作成会社は特にその力を使っている気がする。


「なんとなく俺の世界が魔法を使えない理由は理解できたよ」


どういう理由があって魔法が使えないのかまではわからないが、魔法が無いほうが良いという事だけはわかった。地球の住民は応用が効きすぎるんだろう。主に世界的に交流の増えた現代に至っては固定概念の枠を超えて新技術が当たり前のように増えていたしな。


「お前さんの世界の人族は動物として暮らしてないんじゃろうな」


「確かに。人が動物であると言う事。弱肉強食の世界構造の理から逸脱していることを理解してるかも」


「魔法には『初級』『中級』『上級』と行使する程に上位の階級へと変化する。その他にも調べることさえ禁忌とされている失われし魔法が数多く存在しているらしいのじゃ」


「古代魔法とかそういうのか」


「そういうのじゃな。強すぎる力は世界や自身の価値観を簡単に滅ぼすものじゃ。詮索せぬ方が良い」


「まぁ、わかったことは俺の魔法は今後伸びしろがあるってことだな」


「で、話は変わるけど昨日カカシの耐久値がわかってたよな?あれはどうやったんだ?」


「なんじゃ一瞬だったから聞き逃しとったと思ったが覚えておったか」


「俺の世界には相手の力量を図る魔法ってのが妄想で存在してるんだよ。その類は必須魔法だからな。ぜひ教えてほしいし。その逆に相手に気取られない方法なんかもあれば尚更だな」


「あれは魔法じゃのうて気の分野じゃの。この際じゃから『気』も一緒に教えておこうかの」


「よろしく頼む」

魔法を教わりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ