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第三十八話 北落師門

最近、仕事にトラブルがありまして少し更新が遅れます。ご了承下さい。

俺達は全力で馬を飛ばし戦場へと急行した。戦場が近づくに連れそのまま突っ切るでは敵に見つかる。そこで走行中、土地勘に詳しいヤチの助言を受け、俺の先頭を交代。ヤチを先頭に馬は進む。


上手いもので、戦場が見えている中、真横の山を駆け上がるのだが、岩でこちらの状況を把握できない道をくねくねと進んでゆく。見晴らしの良い場所に来ると下馬し、馬が逃げない様に岩に繋ぐ。ここは戦闘にならない場所だと言う事か。


その後、岩の影を利用して山を下る。走りながら下っていくのにヤチは慣れたようにスイスイと抜けてゆく。


襷丸に伝えられた俺達の作戦はこうだ。俺と長政、クシャラの3名で背後から奇襲、ヤチは速度を生かしての遊撃。弓での支援を与一が行う。それと与一は敵の増援、又は伏兵発見時に鏑矢かぶらやで合図を送る。


俺達は難しいことを戦闘中に考えられないのでとりあえず、ヤチの指示で奇襲地点へと向かう。与一は弓が届く範囲で見通しの良い場所で待機。味方同士の合図は味方内で即席で作った進めと止まれ、など数個の手信号ハンドサインで行動した。会話は無い。


俺達は相手の後方30mくらいの距離まで接近することに成功。ヤチの合図で俺達は後方の敵へと向かっていく。


魔王軍は中世の軽装兵の様な恰好をしていた。斥候だから重装兵でないらしい。これは好都合だ。既に数十名で押し出しているようで真後ろからの切り裂くのは容易かった。奇襲を掛けて数十分としない間に敵兵の殲滅に成功。襷丸は防衛部隊長と合流し、俺達を呼びに来た。



「敵兵の殲滅を確認したとの事です。防衛部隊長殿が神威様をお呼びです。こちらへ」



襷丸に連れられ、戦地を後にする。歩くこと数分。高台に設けられた簡易陣営の中へ付いて行くと防衛隊の隊長と思わしき人物に歓迎をされた。


「この度はわが軍の増援、まことに感謝致します!」


きりっとした髭が特徴の丸顔の優しそうな顔の男性。髪も瞳も黒、だが江戸時代の髷を結ったように頭を丸めていた。背は170くらい、結構な肥満で腹が目立つほど大きい。


「我々が到着した頃にはすでに壊滅寸前であった。貴殿の兵達と指揮が素晴らしいかったからこその勝利だ」


「お褒めにあずかり光栄であります。私は常勝つねかつ、玄華第60(ロクマル)騎兵中隊隊長を務めさせて頂いております。本日、殿下がこちらへ向かわれることは事前連絡により届いておったのですが―――」


「相手がこちらの事情を組んでくるなら最初から戦にはなっていないだろう」


「面目ない次第です」


「こちらでの処理が終了後、すぐに砦へ入場したい。何か手伝うことがあれば言ってくれ」


「おぉ、人では幾ら居ても足りない状態ですので助かります。ではこちらの配下の者に伝えておきましょう」


「うむ。それでは失礼する」


俺と襷丸は野陣営を離れ死体や矢、その他破損物等戦場の後片付けを手伝った。敵の武具は全て奪取遺体は穴を魔法や円匙スコップで堀り、穴に一定数集め火葬する。与一とヤチが馬を引き連れて戻って来る頃には粗方の作業は終了していた。


「この付近にはもう敵兵は見当たりませんな」


「付近の隠れられそうな場所も覗いてみましたが発見できませんでした」



この間に長政とクシャラは数名の兵を連れ警戒に当たっていたようだ。俺は報告を受け取り、野陣営へと兵達と戻る。


「戦場の後処理は終わった」


「えぇ、こちらも兵達に作戦終了を通達させました」


「神威様、こちらの兵も出発可能です」



俺達は北落師門へと向かう。戦場からは北上すること20分くらいで城門が見えてきた。何と言うか、指輪物語のドワーフの城をイメージしていたが本当に映画でも見ているかのような大きさだ。山にできた大穴の壁と言う壁を全て改修して壁を構築、狭間が各所に設けられている。

かつてのドワーフ達が作ったにしても天井が高い。30mはありそうな天井と奥行きの広さのせいですべてが圧倒された。


門の前で全軍は立ち止り、門を開ける手続きを行っている。俺は馬車を出て隊長の元へと向かった。


「凄いな」


「えぇ、そうでしょうとも!この砦は全区画を合わせて55里になります。それに歴史も古く、1万年を超えるともされておりますが、当時ドワーフ王が根城にしていた時にはこの砦だけで数千万の民が住んでいたとか。まぁ、世界全土の人を集めても数千万と言う数はおりませんから冗談でしょうけど」


この砦を任されている自信からだろうか。凄く楽しそうに話す。それから軽く話をして、手続きが終わるからと自分達の馬車へと戻った。


そう言えばクルメとじーちゃんに教えてもらった『大魔導文明時代』、かつてこの世界の住人も応用力を生かしに活かし過ぎて『紅魔戦争』を引き起こした時代。あの頃の技術や知識で繁栄していたなら現在なんて比較にならないほどの人口密度があったんだろう。55里を1里4kmだとして大雑把に計算してみるとしても220kmか。この砦だけで数千万か、人口密度が高い日本に住んでいた俺からするとさして不思議だとは思わなかった。



俺達は北落師門内部のかなりの距離を馬車に揺られている。既に砦内部だと言うのに景色がかなり変わる。居住区もあるようでワイワイと楽し気な声や音が聞こえたりもした。そんな中ふと疑問に思ったことがあった。


「気になったんだが」


「はい?」


「ここは元々ドワーフ達の城だったんだろ?しかし、現在砦として使用しているのは龍族だ。ドワーフ達はここには居ないのか?」


「いえいえ、居ますよ。北方連合が制定される前ここはドワーフ王の居城でありましたので」


「ん?」


「150年ほど前まで北方連合国内は対立国家同士が紛争しておりました。その戦争を瞭然様が納め、今の連合があるのです」


「その時のドワーフ達がここに住んでいるのか」


「国としては北方連合3国の『玄華』『アスガルド』『レイアム』の代表を瞭然様が執り行いますが、国政は各国王に委ねられておりますのでここはドワーフの国として考えても何ら問題は無いです」


「国王と失脚させたりと言ったことは無い訳か」


「連合発足時の軍事協定で相当揉めに揉めたらしいですけどね」


「国家間の話は難しいな」


「互いが背負ってる者の命を天秤にかけあわねばなりませんからね。それだけ協定内容は慎重になるのでしょう」


そうだよな。軽く了承しても万が一にでも協定を犯すと同盟国内からの袋叩きによって滅亡しかねない事態に発展する。連合と言う同盟関係は仲間同士で監視しあって争いをさせない為の強制処置に近いのが現状か。それでも友好関係を築くために今回ドワーフ王は龍人の兵の常駐を許してる辺りやはり国は一枚岩では無いんだな。


長らく進んだ所で馬車は止まる。多分2時間くらい馬車に揺られていただろうか。目の前には崖があった。いや、厳密には崖ではなく堀なんだとか。自然の崖を掘りとして利用しているらしい。そこに橋を架け城へと入場する。洞窟内部なのに至る所に周壁があり、『もうこれわかんねぇな』状態である。馬車から外を覗いて気が付いたが、橋の警備兵などは確かにドワーフだった。


城から20分ほど、馬車で揺られ宮殿内部に入り巨大な玄関部屋エントランスホールを抜け二階へ上がる。宮殿自体も奥行きがかなりあるらしく、謁見の間の付くまで相当時間が掛かった。瞭然の城の3倍くらい広い気がする。現在は謁見の間の扉の前。ドワーフの重装兵が扉を大槍で警備している。


「王は既にお見えになられております。行きましょう」


騎兵中隊、隊長の常勝がそう言うと、彼を先頭に俺の兵一同は整列し、謁見の間へ入室した。

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