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第三十七話 交戦の知らせ

前回のあらすじ:北落師門へ進路を取り馬車にて移動。

『北落師門』へ残り10キロ前後の地点。軍隊で使う目印でもあったのだろう。兵達は進行を停止、報告してきた。


「神威様。ただいま小隊は2里5町の地点へと到着いたしました」


2里5町……これは中世の一里ではなく近代の一里、約4キロで計算した数値だろう。昔の一里約540mでは2里では近すぎると判断したからだ。メートル法を利用していないらしいので数値に起こしてくれと頼むことができないので「大体10キロだろう」と曖昧な感じでやってるんだろう。距離などの数字を使う場所は正確を求められるのでいつかは近代改革として数値の明確化は必須だと感じた。


「斥候を先行させ砦との連絡を受け入場する」


「はっ」


襷丸は斥候を2人指示して残った兵に周辺の警備と休憩を交互に取らせた。


「神威様」


「なんだ」


「斥候からの情報です。現在、北落師門周辺の兵が敵斥候と遭遇。戦闘状態にあるとの事です」


「敵の数は」


「自軍40名、敵軍20名ほどと伺っております」


報告では20名…しかし増援や伏兵が居ると見て多めの予想を立てて60以上は敵対する可能性も考慮しておくか。


「20人か……地形はどうなってる」


「見通しが悪い山岳地帯での遭遇だとの事です」


北落師門を俺達は王都から、つまり北側から入るのに対し敵は南側からの進軍だ。出来る限り相手の裏まで南下して襲いたい。自分で考えてもわからないので襷丸と戦略相談をする。


「奇襲を仕掛けたいと思うんだが襷丸は行けると思うか?」


「全員での奇襲となると成功率は厳しいと思われます。ただ馬で先行させた少数での奇襲であれば成功率は上がると思います」


「ふむ。であれば俺とその他4名の計5名で奇襲を仕掛け、小隊指揮は襷丸に任せる。良いか?」


「大将自ら奇襲ですか……お止めになっても行かれるのでしょう?」


「そうだな」


「まだ神威様の力量を目にしたわけではありませんので心配ですが……わかりました。指揮は私が何とかしましょう。絶対に死なないようにしてくださいね」


「もちろん」


俺と襷丸は先ほど報告して来た斥候を呼び地形と戦闘の状態など事細かく聞いてすぐにどう攻めるかの算段を話し合った。大体10分くらい経って話し合いが終わった。今回は時間も無い、急がなければ奇襲どころか増援もしないまま戦闘が終了する恐れがあったからだ。俺は軍師としての知識も無い、戦場での経験が無い俺は襷丸の話を通しやすい会話進行をさせて、算段を丸めた。わからないことは全部襷丸に投げた。


だがそれで良い。形式上の大将なんて折れる自尊心すら無い。何も知らない、立場上の上司である俺が出来る最善は襷丸を動きやすくし、俺は自分のできる戦闘に集中する場面を創り出せるか。だけだ。


襷丸は算段目途が立つとすぐさま兵を集める。作戦の内容を全兵に伝える為だ。それから20分程経ち、準備完了との事で兵を整列させた。ちょうど立つのに丁度良い石があったので、そこを壇上として、作戦内容を告げる。


「我が小隊はこれより敵斥候部隊へと奇襲を仕掛ける。我と選ばれた者以外は軍師『襷丸』の指示で動く様に。この後、襷丸より最終の指示をがあると思う。その内容で現場へ急行する。―――そして最後に」


俺は隊員全員の顔を眺め、一呼吸置く。


「死ねば悲しむ者も居る。私にも居る。生きて帰るとここに誓え。王都へ帰還する時は笑顔で戻れるように―――話は以上だ」


兵士達は自身を鼓舞する様に喝采を上げた。


喝采が止み、俺は石から降りると襷丸より4名の兵士を紹介された。


「拙者は長政。歳は28。龍化は赤龍、近接での攻防に自信があります」


でしょうね。一番に目が向かったのは無精髭。長い赤髪を髷で結った。身長2m近い大柄な男だ。珍しいのは角が三本生えている。顔はいつも怒っているかのようなコワモテの顔。紅い眼だからか余計に不機嫌そうな顔にも見える。


「私はクシャラ・コンセと申します。見てお分かりですが私はベルメサイア公国軍人であります。この度殿下と共に戦えることを心より感謝いたします」


隣国ベルメサイア公国の人間だったのか。クシャラは見たところライオンの獣人だ。髪は濃い茶色であり、瞳は金色。身長180か190くらいで長政より少し低いが長政同様に物凄くガタイが良い。鎧が他の兵と違う為、一見すると部隊長に見える。ベルメサイア公国からこちらへ来た時に戦争に巻き込まれ戻れなくなったんだろうか。


「次はあたいだね。あたいはヤチ。30歳であります!龍化は黄龍、情報収集の速さと俊敏性には自信があります!」


フードを身にまとっている為に髪の長さまではわからないが金と黒の髪が少し覗いている。瞳は灰色、身軽そうな暗殺者アサシンの様な装束を身にまとっている。


「最後となりましたが、与一と申します。歳は20です。龍化は緑龍、弓に関しては自信があります」


鹿のように幾重にも股が割れている角を付けている緑髪の青年。瞳の色も緑でド真面目そうな顔立ちをしている。いわゆるインテリイケメン男子って感じだ。某バスケ漫画の緑みたいな誠実さがある。


「皆の事はわかった。これより作戦行動へ移行する。各自武器の準備は出来ているだろうから馬にて交戦区域ぎりぎりまで先行、その後乗り捨てて隠密で相手の裏を取るぞ」


「「「「ハッ!」」」」


俺達は全力で馬を飛ばし現在交戦中の味方の元へ急行した。

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