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第三十五話 遠征

前回のあらすじ:神隠し事件を解決した神威達。商人の荷車も無事発見し、杜の都で数日を過ごすのであった。

杜の都では神隠し事件は廉貞殿れんていでんにて神事を司る一族の謀反であったとこう評されることとなった。


俺達はその後、王都へ帰還。商人の荷車は城へ戻る最中に立ち寄り、無事納品した。既に納品期日は過ぎ去っているが、商人は事件に巻き込まれ亡くなっているので仕方ない。荷物を届けると大層喜んでいた。城では久遠のその後の処遇についての会議がすぐさま執り行われた。久遠はその身の上のこともあり、立場を追及されることとなったが、年齢的な事件への関連性を考慮した結果、俺の従者とすることで決着した。そして今は従者としての訓練として城の侍女の手伝いをし、身柄を保護、監視下に置かれることとなった。


城へ戻り1週間が経過した。


「そろそろ城にも慣れたか?」


「うん。城の人達、親切にしてくれるから」


「なら安心だ。何かあったら俺に言いに来いよ?」


「そうする」


久遠は穂のかに頬を染め、笑みを浮かべると仕事があるからとその場後にした。久遠も徐々に慣れてきている事に少し安心だ。その後俺が城の城内を歩いていると、瞭然が臣下を立ち話をしていた。瞭然は俺を見やると声を掛けに来た。


「おう、神威。良いとこに」


「??」


「先日の神隠し事件の報告は受けた。それを見越して前線に遠征させようと思っておってな」


「前線に遠征……」


魔王軍との最前線拠点攻略への派兵。数年先になると踏んでいたが結構早かったな。


「行先は」


「ここから南南東にある山岳地帯で、ベルメサイア公国との国境地点にある砦『北落師門』に行ってもらう。詳しい概要はこいつに聞いてくれ」


「若様、初めまして。私は襷丸たすきまると申します」


「神威だ。宜しく」


「当分は襷丸を従者として付ける―――」


「―――陛下、次の軍議に間に合いませんので」


「―――そうか。まぁ、概要に関しての詳細を聞いた後、急ぎ向かってくれ」


瞭然は臣下達と城へと戻っていった。


「で、襷丸と呼ぶが、其方の事を知りたい」


「はっ、年齢は18歳、龍化は青龍。水属性の魔法に精通しております」


見た目はしっかりとした青年で顔立ちはまぁまぁ、髪は青い単発で片眼鏡の秀才って感じだ。角が少し捻じれ少し横向きに伸びている。服装は袴姿であり、特段これと言った特徴は無かった。


「俺はまだ10歳だ、公の場以外では特段話し方は気にしないので宜しく頼む」


「かしこまりました」


「それで遠征の件だが、こんな所で話すのもなんだから中へ入ろうか」


俺達も城の中へと入る。概要説明の為に使う部屋をわざわざ用意させるわけにもいかず、自室へと戻ってきた。しかし、何故か部屋に月夜とクルメが居る。


「おかえり」


「あぁ、ただいま」


「聞いたわよ。遠征に行くって」


「そうだな」


「―――なら」


「だめだ」


この時点で分かっていた。クルメは立場上月夜を抑えねばならないのだが、俺がこれまで見てきた限り一度として月夜がこうなって止めれた試しがない。クルメは申し訳なさそうに月夜の背後に座っている。


「今回の遠征はいつ帰れるかまだわからないからな。一国の姫が前線に行って死んだとなれば国の内政に亀裂が走ることになる。今回は諦めろ」


「神威様のおっしゃられる通りです。姫様の身に何かあったら……」


「嫌!童が居らねばまた無茶をするに決まってる!」


「月夜、俺はまだ公の場において王太子として名乗ってはいない。だが、月夜は姫としての責務がある。それを全うして欲しい」


「いやじゃ!いやじゃ!いやじゃ!」


いつにもなく駄々を捏ねる。いや、そう言いたくなる気持ちもわかる。この遠征で次に帰国するのがいつになるのかわからないし、死ねば一生会うことは叶わなくなるのだから。それを踏まえても月夜を戦地へ赴かせるわけにはいかないと言うのが俺の心情だった。


「なら、こうしよう―――」


「なによ」


「―――俺が次に城へ戻ったら月夜を妻とする。だから、それまで元気で居てくれ」


「絶対……絶対に約束よ!」


月夜は俺にがっしりと抱き着き放してくれない。俺も月夜を優しく抱き込むと月夜は静かになった。暖かい。もう何回抱きしめてやったのかはわからないけど、当分会えないことを自身でも悟ると寂しい気持ちとなった。


自分でも下手な死亡フラグを立てちまった。と後悔してる。けど、言わずに死ぬことになるよりはずっといいと思った。


しばらく経って、月夜をクルメに任せ部屋から退出させる。俺と襷丸は遠征への概要を話し合った。


「―――で、兵数はどのくらい使えるんだ?」


「神威様の部隊に配備される人員は20名。一個小隊を率いてもらう事となっております」


「小隊員はすでに準備されているのか?」


「はい、出来ておりますが、新設部隊ですので戦場経験の無い若者が多い部隊でありまして……」


「こりゃ熟練組の心労がひどそうだ」


「そうならぬ様、皆訓練は受けているのですが、どこまで実践で持つか……」


「襷丸はどの程度実践経験がある?」


「私は15の成人にて軍へ配属しましたので3年ほどですか」


「ふむ……」


俺も実際実戦体験なんて無いからな……地球においても戦争知識なんてあってないようなもんだ。卓上理論は現場者通用しないだろうし、こればっかりはどうにもならないな。


「では、今日顔合わせして出発は明後日とする。貴様は前線の地理・敵陣の情報、これまでの敵軍の戦略手腕を見直しと検討し、実戦で立ち回れるように準備しておいてくれ」


「かしこまりました」

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