第三十三話 混沌の魔物
前回のあらすじ:十六夜の罠によって異形の化け物の餌になりそうになった神威だったが、それを退ける。
化け物を退治し終え階段を登ろうとするも、背後から妙な音が聞こえ……。
異形の化け物の死骸の方から音が鳴る。
ピキっ、ビキビキビキ
ぶちぶちブチっ!
振り向くと芋虫上の部分が裂け紫の体液まみれの女性をかたどった肉塊が出現した。
「これは……」
俺はこの声に聞き覚えがある。十六夜だ。何がどうなったかわからないが、あの化け物に喰われた後融合……したのか?わかることは死んだはずの十六夜が復活したってことだ。
「なっ……お前、死んだはずじゃ」
「ふふ、体内から魔力があふれる。これならもう召喚に頼らずとも我の願いは叶ったも同然か」
俺の話なんざ聞いちゃいねぇ……。十六夜は自身の手や自らの状態を確認している。俺も相手の状態を確認させてもらう。
―――――――――――――――――――――――――
【ステータス】
名前:十六夜
種族:異形
状態:普通
Lv :48
HP :1055/1055
MP :1375/1375
SP :380/380
気 :0/0
SAN :100/100
STR :418
VIT :790
DEX :418
AGI :644
INT :1028
MND :967
EDU :72
―――――――――――――――――――――――――
若干レベルが上がってる。能力値までは見れたがスキル等はやはりだめか。もっと鑑定の質を上げないと相手の手の内すらわからないな。
「小僧、もう其方に用は無い。我の力の礎となって朽ちるが良い」
「はいそうですね。とは行かねーよ!聖光!」
俺は聖光を4つ出し、高速で十六夜に放ったがダメージが通ることは無かった。魔導障壁で全部防がれた。
「なかなかに面白い術を使う奴じゃ、―――だが」
十六夜はブツブツと詠唱を唱えだす。
「我が血の契約の元、我の声を聞き届けし異形よ、我が前に現れよ!」
召喚魔法を唱え終えた後、魔方陣が十六夜の目の前に現れる。そこから現れたのは白い肉塊。ぶよぶよとしたゼリー状の肉体に首、尻尾が付いており、羽根と脚が生えただけの生物。眼は無く、肉塊の先端は裂け牙がむき出しになっている。―――これ、もうフ〇フルにしか見えない。と言うかフルフ〇だった。
―――――――――――――――――――――――――
【ステータス】
名前:アルバ・ディアボリー
種族:異形
状態:普通
Lv :31
HP :683/683
MP :0/0
SP :520/520
気 :0/0
SAN :100/100
STR :569
VIT :507
DEX :307
AGI :185
INT :71
MND :348
EDU :29
【アビリティ】野生本能
【スキル】咆哮 吸盤
―――――――――――――――――――――――――
「さぁ、行け!あの小僧を殺すのだ!」
アルバは俺に向かって跳躍して飛んできた。ぶよぶよとした肉体に物理攻撃は聞かないぞと主張する様に地面に激突し、その巨体が転がった。すぐに立ち上がると鋭い牙の付いた頭部が伸びて俺を襲う。
「逃がしはしないよ。『深淵』」
巨大な闇の塊が俺に向かって放たれる。暗黒の上位魔法『深淵』。
「同時かよ!」
俺はアルバに火炎で応戦しつつ十六夜との距離を取る。十六夜は簡単に深淵を唱え撃って来るが数十発も打てば魔力も尽きるだろう。アルバが俺の想像しているフル〇ルと同一個体であるならば行動は読める。弱点も炎だ。俺は再び属性剣(炎)を創り出し、切り裂いてゆく。アルバは必死に俺へと牙を向けるが、倒すのに時間は掛からなかった。
【経験値1870取得しました】
「はぁはぁ、……まずは1匹」
「猪口才な真似を」
十六夜は自らの背中から剣創造し、二刀の構えを取った。
「我自らが引導を渡してくれよう」
相手も血が上っているのか、接近で向かってきた。これはチャンスだ。俺の方がステータスは高い。全支援が掛かってる俺の方が物理戦闘においては優位に立っている。
突出する十六夜に応戦する。双剣乱舞が俺を襲う。隙の無い乱舞、防戦出来てはいるがここに来て体のあちこちに隙ができ、ダメージが蓄積されていく。このままだとまずいな。相手は化け物同様斬り付けても『再生』で回復される。
「動きが鈍ってきておるぞ。そろそろ終わりかえ」
乱舞を繰り出しながら十六夜は語る。器用な奴だ。こっちは話す余裕も無いってのに―――!
今の全力でどうにかこの状況を打開しなければいけない。俺は全力で属性剣を振るい相手の剣を弾き、両腕を切り落とした。
「ぐっ、まだそんな力が残っておったか」
再び腕を再生させ、俺を斬り付ける。ダメージを負い過ぎたか。
―――これ以上はもう―――。
「―――邪悪なる者を拘束せよ!魔導封印!」
突如、俺の背後から声が響き、十六夜を拘束する。振り返ると小さな女の子がそこに居た。




