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第二十八話 朽ちた廃屋には

前回のあらすじ:行商が返ってこないから様子を探りに杜の都に向かいます。

王都を出発し、南へ延びる街道を進む。周りの景色は緑一色。王都は京都や奈良同様に山々に囲まれた盆地である。初夏の日差しが山を青々と照らし出していた。


「なら杜の都は気に入ると思いますぞ。―――なんたって」


武久は杜の都について語ってくれた。風景の良いスポットの話やおいしい料亭の話、地方に伝わる伝説の話などなど。久々の帰郷に胸躍らせてるのかな。


「―――まぁ、まだ復興しきっていないと思います故期待されても困りますがね」


そう言いながら武久は微笑みをこぼす。この街道も王都から離れるにつれ砲弾痕とでも言うべきか、戦争の傷跡が所々見える。流石に折れた矢や亡骸などは一見見当たらないが……。


「そろそろ昼食に致しましょうか」


だいぶ歩いたと思う。日は既に頂点を超え小腹も良い具合に空いていた。俺達は街道から外れ手頃な岩場へと向かい陣を取る。


「もう結構歩いたな」


「いいえ、この辺りだとまだ3分の1も到達して居らんかと」


「杜の都は徒歩で行くと2日くらい掛かる」


「うーん。馬車を借りていけばよかったな」


「今は戦時ですので、よほどのことが無い限り騎乗動物は使えないかと」


「そういうものなのか」


俺は小さな岩場の周りから小枝や石で簡易的な炉を組む。そこまで石も多くなかった為、火付け時の風除けに使う程度の炉だ。


月夜は武久の荷物から保存用の干し肉と竹でできた水筒、塩と手持ちフライパンを手に持ち調理する。何の違和感もなく慣れた手つきで少し水をかけて干し肉をほぐし焼きを入れ、塩をまぶしている姿は姫としての威厳はあまりないが冒険者としては様になっている。


ほどなくして料理も出来上がり、皆で少し遅めの昼食を取る事となった。今日の献立は来る時に準備したおにぎり3つに月夜の焼いた干し肉、大根の葉漬。おにぎりは日持ちがしないので昼に食べる用で持ってきた。水は竹の水筒の分しかないので使い過ぎには注意が必要だが飯盒炊飯ができる程度には持ってきているので多少問題無いだろう。


「なんか久々に月夜の手料理を食べたけど、やっぱ安心するな」


「最近は作らなくても出てくるからね」


「俺も料理してないし、腕が鈍って無ければいいけどな」


「拙者は上手ければ何でもいいですぞ」


声を上げ笑う武久を横目に、なんだかんだ3人で談笑しつつ昼食を終える。


「まだ大分かかりそうか?」


「うん。今日は街道を外れることは無いから野営する場所も決めなきゃいけないかも」


「この辺りには村がもう残ってないのです」


「それも戦争の影響か?」


「そうなりますな」


今の所、魔物の姿は無い。だが夜は魔物や獣が活性化するので野宿は勘弁したかった。まぁ、俺だけが知らなかったということは二人は既に覚悟してるんだろうけど。


夕暮れ前まで街道を歩く。もう出発時の様に会話することもなく、ただひたすらに道中を進む。この世界に来てから体力には自信があったが、もう何時間も歩いていると会話をする気力も落ちてくる。


「今日はここ等で野営致しましょう」


武久の一声で野営に向いている場所を見渡す。


「あそこに家が見える」


街道から外れ山の方に一軒家がある。人はすでに住んでいなさそうだが野宿よりましだろう。


「よく見ると畑の跡があるな。もう何年も放置されて野に帰りつつあるが」


「廃墟かもしれませんが念の為に確認しておきましょう」


「そうだな。月夜は俺の傍に、武久は戸を頼む。矢などの遠距離での奇襲もあり得る、気を抜かずに行こう」


俺達は慎重に住居に近づく。武久は先頭を切り戸の傍へと先行した。一応何が来ても動ける準備は万全である。


(では、開けるぞ)


(あぁ)


勢いよく戸は倒され、中へ突入する。


潜入した瞬間に鼻を突きさす異臭と屋内全体を覆う蜘蛛の巣。


「まずい、ここは蜘蛛の巣窟だ!下がれ!」


武久が外に出るとそれを逃がさんとばかりに俺と月夜と同サイズかそれ以上の大蜘蛛がわらわらと出てくる。それ等を切り伏せながら俺達の元へと武久は下がる。


「ここはもうだめだな。一気に焼くぞ」


「あ、あぁそうしてくれ」


「俺が火炎を放ったら出てくる蜘蛛達の処理を」


「わかった」


「任せとけ!」


俺が唱えた火炎は蜘蛛の巣窟と化した廃屋の入口の飛んでいき屋内で大爆発を起こした。

入り口は爆散し、廃屋は半壊する。同時に蜘蛛の大群が俺達の方へと突っ込んで来た。


【経験値を2310取得しました】


大分数が多かったんだろうな。何匹倒したんだろう。

俺は飛び出す蜘蛛に鑑定を掛ける。


――――――――――――――――――――――――――――


【ステータス】

名前:アーススパイダー

種族:蜘蛛

状態:火傷

Lv    :11

HP    :71/143

MP    :48/48

SP    :49/91

SAN    :77/100


STR    :101

VIT    :64

DEX    :42

AGI    :90

INT    :24

MND    :19

EDU    :8


【アビリティ】野生本能 集団行動Lv4


【スキル】毒牙


――――――――――――――――――――――――――――


大体1匹はそこまで強くないが、毒がやばい。解毒無しじゃ毒を受けた時点で積む。

最悪の事態になる前にどこまで処理できて味方を守り抜けるか……。


「月夜!武久!この蜘蛛には絶対噛まれるな。毒を持ってるぞ!」


「姫様。ここは一度引きましょう。あまりにも分が悪すぎます」


今目の前に見えるだけで50匹は居そうだ。1体が巨大な為か数が把握しきれないが。気配感知でわかる範囲でだいぶ数が多いのはわかる。嫌なことにもう日が沈みかかって暗くなってきているってことだ。


「神威!ここは逃げて!」


月夜の叫びは虚しく蜘蛛の群れに囲まれる。カシャカシャと甲虫独特の鳴き声の様な音を発し威嚇でもしてるんだろう。自分に俊敏上昇アザードを掛けMPの消費に気を付けながら蜘蛛を切り落とす。


【経験値61取得しました】

【経験値82取得しました】

【経験値76取得しました】

【経験値90取得しました】


個体別に経験値量が変わるんだろうがログが邪魔だな。先ほど同様に火炎を魔法拡大(範囲)で爆発させて一気に突破口をつくる。


【経験値1887取得しました】


ざっと20匹位は飛ばせた。その隙に俺は後退しつつ蜘蛛を切り伏せている二人の元に合流できた。


「月夜、ここの蜘蛛は縄張りを失ったことで移動するかもしれない」


「じゃあどうするの。毒になったら終わっちゃうよ?」


「月夜は光の剣でそのまま蜘蛛を減らしてくれ。俺と武久で親蜘蛛を叩く」


二人に全支援を掛ける。無いよりはましだろう。


「大分数も減ってる、一気に押すぞ!」


「おう!」


【経験値1640取得しました】


俺達は外に群がる蜘蛛を1匹残らず駆逐した。残すところは半壊した廃屋の中、親蜘蛛が潜んでいるはずだ。俺達は松明を灯しで作り出した腕に持たせ中へ入る。


「屋内の反応は6匹、1匹の反応はでかいな」


「あれが親玉ってとこですかい」


「先に子蜘蛛を倒してから親蜘蛛をやろう」


「気を付けて」


廃屋の内装は平屋の3,4部屋ってとこか。

元は茶屋だったのかもしれないな。蜘蛛がひしめいていた部屋以外は距離が近い。


「まって、先に童が魔法で牽制する」


月夜は壁の奥に居るであろう親蜘蛛に聖光を放つ。光の弾丸は壁を突き破り中で爆発音が響いた。


「や、やったか?」


おい、武久。それはフラグだからやめ―――。


突如奥から巨大な蜘蛛が現れた。大きさは先ほどの蜘蛛の比にならない。2m以上の大きさがある。


「でかい……!」


「武久!斬りかかれ!」


叫ぶと同時に長い脚を俺達に向けて振り下ろしてくる。場所が良かったか。室内では十分に脚を振れないんだろう。避けるのは容易い。


蜘蛛独特の8つの目は武久を捉えている。


――――――――――――――――――――――――――――


【ステータス】

名前:アーススパイダー(クイーン)

種族:蜘蛛

状態:狂乱

Lv    :32

HP    :314/380

MP    :570/570

SP    :148/161

SAN    :61/100


STR    :224

VIT    :145

DEX    :113

AGI    :101

INT    :390

MND    :299

EDU    :12


【アビリティ】野生本能 統率Lv6 暗黒Lv4


【スキル】危険察知Lv5 気配感知Lv7 毒牙 アン 暗黒 ドレイン  


――――――――――――――――――――――――――――


「まずいぞ、こいつ……魔術師型だ!」

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