第二十三話 言葉より行動で
前回のあらすじ:城に着いて瞭然の弟、瞭公と会う。
月夜に付いていた侍女に連れられ、天守5階層の玉座の間までやってきた。
侍女は両膝を着き少し戸を開ける。
「瞭然様。神威様と月夜様がお越しになりました」
「うむ。通せ」
その合図と共に戸を開けると俺達に礼を執り繕う。
俺と月夜は玉座の間の奥へ向かう。
俺達が入ったのを見計らい、侍女はそっと戸を閉めた。
玉座にて胡坐を崩し立て膝で鎮座しながら圧倒的な威圧を放つ者。
―――龍王『瞭然』。
俺は胡坐、月夜は正座で礼を執った。
「楽にしてよい」
その言葉と共に頭を上げた。
「生まれた時以来だからな。余は『羅道北玄大公王 瞭然』、玄華にて龍王と呼ばれておる」
「陛下の御話は常々伺っておりました」
「はっはっは。そうか、なら自己紹介など無用だったな。隣に居るのは瞭公の娘か」
「はい、月夜に御座います」
「なぁに、公の場としてここを開いてはおらんのでな、硬苦しくする必要は無い」
「承知いたしました。では、伯父上様お久しゅう御座います」
「うむ、久しく顔も見れんでな、我が元まで来い」
「はい」
月夜は瞭然の膝元に座る。
「前に会った時はまだ小さかったのにのぉ。今は幾つになった?」
「今年で10歳となりましたわ」
「もう10か、時が流れるのは早くてかなわんな」
「して、余との約束を忘れてはおらんな?」
「はい。覚えております」
「其方から見てアレはどうじゃ」
二人して俺の方を見る。
「えっと、それは……」
月夜は顔を染め俯いてしまった。
その後、何かを瞭然に呟いた。
「はっはっは。動じない其方がな!」
その姿がよほど面白かったのだろう。ずっと笑っている。
しばし笑うと月夜を膝から降ろし、俺に面を向けた。
―――次の瞬間。
ビリビリ ――ビリッ 一瞬何が起こったのか気が付かなかった。
「ほう、小僧。生まれた時より多少はましになった様だな」
「どうことでしょうか」
いや、さっき一瞬当てられたのは殺気。高圧の威圧を俺に投げかけたのだ。―――俺、息子のはずだよな?
「余の威圧に耐えられるものはこの国でも数えるほどしかおらんのでな。面白い、明日余と手合わせをせよ」
「えっ……は?」
「いった意味が通じなかったか?」
「伯父上様、いくら何でもそれは急すぎるかと」
「そんなことは無い。余の威圧を受けてほぼ正気を保った奴が目の前に居るのだ。こんな楽しそうな奴、一度手合わせしたくなるだろう?」
完全に戦闘凶のセリフだろそれ……。
「それに即戦力になりうる者はすぐに動いてもらわなければならんのでな」
「状況はそこまで……」
「其方を前線に送ることはせんがその小僧はすぐにでも出さねばならんやもしれぬ」
「まぁ、俺は良いぞ」
「そうか、明日が楽しみだ。変わった流派も持っておることだしな」
―――な、いつの間に。
「それでは今日はここいらで開きにするか。其方等もまだ飯を食っておらんだろう」
「そうだな。まぁいっか」
「話は済んだぞ!飯の支度をせよ!」
そう言うと侍女が次々とやって来て食事を出し始めた。
それに続き、瞭公夫婦、シノに家臣の者とクルメ・武久・十兵衛が入ってくる。
人数が40人超えているので説明はまた今度だな。
夕食は瞭然を交えた大宴会となった。
―――それにしても、酒が入ると無礼講なのか大どんちゃん騒ぎとなった。
その合間に俺は母であるシノと話をしたり、月夜も両親との再会を喜び合っていた。
気が付いたことにクルメと武久の仲が良くなっているような感じがする。
そういやクルメは今年23で武久は25だったか。年頃なんだろう。
クルメは家事も出来るし料理はうまいしな、良い嫁になりそうだ。
武久は酒好きだが女の前では弱いと言う新しい場面を目撃してしまった。
家臣の上司もそれに気づいてか変に絡んでるし。
まだ年齢的に酒を飲ませて頂けない俺は粗方宴会を楽しんだ後、月夜と共に侍女に連れられ寝室へ向かった。
そこで何故か俺と月夜は部屋を相室することになる。 引いてある布団は1枚。
俺まだ10歳なんだが……。
変に意識すると逆に不自然だからそのまま一緒に寝ることにした。
もう、気分は妹と寝る兄の気分だ。
「久々の両親に会えて嬉しかった?」
「うん」
「そっか、明日以降にまた街でも案内してくれ……」
「うん!まかせて」
なんだろうな。結構な旅路で疲れが出たのか、俺はそのまま眠りこけてしまった。
ゆうべはお楽しみでしたね




