第十九話 旅立ち
前回のあらすじ:皆で特訓を開始。—――そして5年が経過する。
季節は春、春一番の暖かな風が玄武殿にも届く。
現在10歳と二ヶ月。
特訓の日々は最初こそ緩やかにスタートしたが年を重ねるごとに内容は激烈化してゆき、今では一個大隊くらいの強さを有しているとのこと。
じーちゃんが言うのだから間違いはない。……と思う。
俺たちはこれより王都『瞭然』へと向かう。
理由は魔王軍が再び侵攻してきたので戦力が足りないとの事だ。
ここには姫である月夜がいるので定期的に遣いの者が情報を寄こすようになっていた。
その遣いからの情報なのでまず間違いは無いだろう。
遣いの者は6人小隊、隊長より状況と今後について語られた。
「神威様達には瞭然様より戦闘物資の支援されております」
「おぉ、そりゃよかったのぉ。武器などは一切なかったんじゃ。ありがたく受け取らねばな」
「そうだな」
「ところで玄武様は今回の戦には出陣なされるので?」
「いんや、わしゃいかんよ。というより結界維持せにゃならんからの。動こうにも動けんわい」
「左様ですか。しかし、ここまでの戦力強化。見事です」
流石は軍部の人間、強者察知が働くのだろう。
見た目に惑わされず強さの見極めができた熟練者達だ。
「神威、深くは言わん。未来の為じゃ。これを持ってけ」
じーちゃんは布をぐるぐる巻きにした棒を手渡した。
布の中身は一本の刀が入っている。漆黒の刀身に刃文が―――これは皆焼刃だろうか。
「名前、ある?」
「無い」
「名付けていい?」
「かまわんよ」
俺は刀を手に持つと工房へ向かう。
皆も俺に続いて俺を囲った。
月夜は俺のやることに興味があるようだ。
「神威、なにをするの?」
「さっきいったろ?」
「名を付けるって、刀に名前を付けてどうするつもり?」
この世界には物に名称しか付かない。名称でしかなく、個々の名を刻むことで遠い未来、その付加価値が付く事を俺は知っていた。―――もともと古物系が俺の専門だからなんだけど。
「名前を刻むことでこの刀が生まれた証を創る。まぁ自己満足だよ」
「思い入れがあって良いかもね」
月夜は直感で察するものがあったんだろう。
「今までそのようなことをされた方はいらっしゃいませんでしたね……」
逆にクルメは不思議がっていた。
「じゃあこの世界で初めて刀に名前を刻んだってことで」
蚤を使い、『佩表』に文字を打つ
「命名、『玄武刀 羅刹』ありがとな。じーちゃん」
「なぁに、容易い事じゃ」
早速、羅刹を装備する。
俺の現在ステータス。
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【ステータス】
名前:神威
種族:龍人
状態:普通
Lv :25
HP :680/680
MP :637/637
SP :705/705
気 :690/690
SAN :100/100
STR :500
VIT :402
DEX :441
AGI :545
INT :403
MND :490
EDU :100
【装備】
玄武刀 羅刹 +100
【アビリティ】礼式作法Lv5 貴族作法Lv5 魔導制御Lv2 気功制御Lv2 火炎Lv2 流水Lv1 暴風Lv2 大地Lv1 氷結Lv1 雷撃Lv3 聖光Lv1 暗黒Lv1 気Lv5 剣術Lv8 剣技Lv8 武器習熟(剣)Lv6 呼吸法LvMAX 足さばきLv7 跳躍Lv6 隠密Lv8 料理Lv5 解体LvMAX
【スキル】炎 火炎 水 流水 風 暴風 土 大地 氷 氷結 雷 雷撃 光 聖光 闇 暗黒 光治癒 上光治癒 筋力上昇 活力上昇 技量上昇 俊敏上昇 知力上昇 精神上昇 二連撃 兜割り 居合斬り 乱れ突き 疾風突き 気功 錬気功 技能鑑定Lv6 鑑定遮断Lv3 魔力誘導Lv6 魔力強化Lv9 魔力拡大(範囲)Lv5 魔力拡大(数)Lv8 魔力拡大(距離)Lv6 危険察知Lv7 気配感知Lv6 強者感知Lv7 属性付与(火・水・風・土・氷・雷・光・闇)
【エクストラアビリティ】流派:北辰夢想流Lv4
【レジェンダリアビリティ】希望 可能性 勇気
【レジェンダリスキル】龍化(極封印)
【習得ステータスポイント】0
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習得ステータスポイントは通常10ポイントで、Lv10・Lv15・Lv25の時に15ポイント、Lv20の時に20ポイント追加加算されて、計185ポイント手に入ったが、伸ばしたいところに振っての現在のステータスになっている。
その後、各々武具を装備し、旅の支度を済ませた俺たちは門の前に居る。
じーちゃんは別れの挨拶に来てくれている。
「しばしの別れじゃが必ず帰って来るんじゃぞ」
「おう、すぐ平和にして帰ってくる」
じーちゃんは良い笑顔だ。この5年、色々あったけど何とか理想の形の原型をつかめた感じはする。
全てが終わったら、またここに戻って来よう。
俺はじーちゃんと肩で抱き合う。
―――今までありがとう。言葉にはしないが想いは伝わったと思った。
月夜がじーちゃんの前で一礼を執る。
「玄武様、今までご指導ご鞭撻頂きありがとうございました」
「姫様も立派になられた。基礎をないがしろにせずこれからも精進してゆくんじゃぞ」
「はい」
遠距離を主軸とした魔法は一流だったが、自身の弱点となりうる近接も大幅に特訓したからな。
本当にきつかったと思う。俺みたいに精神年齢が成人してない子供なのに。といつも思ってた。
『―――ほんと出来た子だよ全く』
こういうのを天才っていうんだろうな。
頭を撫でられ、照れくさそうにしている姿はさながら祖父と孫と言った感じにしか見えないわ。
次いでクルメも一礼を執る。
「玄武様に教わったことを生かし姫様をお守りいたします」
「クルメや、お前さんもおなごなのじゃから無理はし過ぎんようにな」
「お気を使って頂きありがとうございました」
これまで自分が培ってきたモノを一新させて訓練に励んだクルメは月夜と違い守られる立場ではない分一層の努力が必要だったが、じーちゃんも認めるほどに強くなっている。
だけど、やはり女性に無理はしてほしくないと想う配慮なんだろう。―――俺もそう思う。
武久がじーちゃんの前へ向かうと一礼を執ると目に涙を浮かべていた。人情深い奴だよ武久は。
「お師匠様、次、又戻った時には稽古の程よろしくお願いいたします」
「あいわかった。それまでにより高みを目指すんじゃぞ」
本当にじーちゃんとの稽古が楽しかったんだろうな。それによく酒を酌み交わしてた。
昼は戦闘凶、夜は酒好きの二面性がとても思い出深い。
「承知しました」
最後に十兵衛がじーちゃんの前で一礼を執る。
「玄武師匠、これまでの訓練、誠にありがとうございました」
「十兵衛よ、皆の事しっかりと頼んだぞ」
「御意」
5年も経てば秘密も少しずつわかるものだが、十兵衛は元々、月夜の近衛ではなく母『シノ』の近衛だったようだ。
その為、最初の頃レベルを鑑定偽装していたようで当初から結構強かった。
それでもじーちゃんとの特訓はかなり充実したものを得られたらしく、よく二人で秘密の話をしていた。
最後の最後に、じーちゃんは俺たちを肩で抱き寄せた。
「これから皆の行く先には守ってくれるものがおらん道じゃ。慢心は命取りとなる。決して気を抜くでないぞ」
そう言い残すと門の内へと戻る。俺たちは手を振ったり、一礼を執り街へと出発した。
最初に目指すは王都『瞭然』
とうとう街へ進出します。




