第十七話 そして、これから……
前回のあらすじ:やっと劇が完成した。
皆で中庭へ移動する。
じーちゃんとクルメ・武久・十兵衛は内容を知っているので素直に付いて来てくれた。
月夜は今から何をするのかちょっと不思議そうにしながらクルメと繋ぎやって来る。
中庭には食事前に引いた花見用の赤い敷物が引いてあり、事前に酒と摘まめる物も準備しておいた。
皆は敷物の上に移動すると、あらかじめ場所を決めていたのか各自好きな場所を陣取って座る。
月夜が見やすいよう真ん中にした良い陣形だ。―――これはラピッドストリーム陣形だな。
「えっと、まず。俺とじーちゃんしか居なかったここに皆が来てくれて今日で二週間が経とうとしています」
皆は静かに俺の話を聞いてくれている。
「皆が来て、色々と生活も変わり、色々と会話も増えて慣れてきた頃だと思いますが、せっかく来て下さったので、より仲良く親睦を深めるにあたり、歓迎用の催しをしようと思う」
「いよ、待ってました!」
早速、酒に酔った武久から激を頂く。
「それでは、俺が上演する四帝劇をご覧ください」
俺は皆に一礼を執ると鑑賞庭園の奥にある岩へと移動した。
目の前には池があり、そこを舞台とするような配慮だ。
「時代は『大魔導文明時代』末期、『紅魔戦争』での魔王『ネフェリタル・ガウリス』との最後の対峙」
俺はさっと小声で闇を唱え書物で見た皇帝の造形を作り出す。
この魔法の使い方がやはり特殊だったんだろう。霧がかった魔力だまりの様な所から次第に皇帝へと姿を変える様子を見て皆して驚いていた。まさかじーちゃんまで驚くなんて思ってなかった。
「『青龍』、『この世に災厄を振りまかんとする巨悪、私の力をもって圧倒しよう』」
水を使い、池の中より天に上る青龍を作り出す。
「『朱雀』、『妾の名において其方はやり過ぎた。この聖なる炎によって昇華させようぞ』」
炎を使い空中から爆発するイメージの中、朱雀が登場する。
「『白虎』、『災厄の魔王よ、余の敵となった今生きては返さん。ここで叩き潰してくれよう』」
風で竜巻を作ったかと思うと中から白虎が出てくる。
「『玄武』、『我を怒らせた罪、万死に値する。今ここで滅してくれようぞ』」
土で空中に出された岩が玄武を形作り、闇でその周りを覆ってゆく、ゆっくりとその姿は蛇へと変わる。
「『魔王』、『愚かな者たちよ。その身をもってここで果て、我が神の贄としてくれよう!』」
魔王の造形をした闇を動かし威圧した風に闇の霧を辺りへ撒く。
最終決戦だ。
創り出した四神と魔王は激しくぶつかり合い、そして戦闘もちょうど良い当たりを見計らって全部ぶつけてはじけさせた。
「こうして、魔王『ネフェリタル・ガリウス』は四帝により倒され、世界は救われましたとさ。めでたし、めでたし」
俺は劇を終え皆の所に戻った。
池を挟んで反対側に居たので会話なんて何にも聞こえなかったし、集中してたせいであまり客席側を見れてなかったんだよな。
俺が歩いて戻ると月夜が全力で向かって来て、両腕を掴まれて凄いせがまれた。
「すごい!すごい!すごい! ねぇあの魔法はどうやって作ったの!?」
「ま、まぁ待って。一度向こうに戻ろ」
「ねぇ。ねぇ。―――」
月夜は俺の左腕を握ってずっとせがんでる。
「後で話すから」
むぅ。っとした表情を浮かべ皆の所へ戻ると、そこでも同じ光景が広がった。
「神威殿。拙者は未だかつてこの様な催しを見たことがござらぬ。説明願えますか?」
「私もあんな凄いものを見るのは初めてです」
「一体どこでこのような技術を身に付けられたのか、興味が尽きぬ想いです」
「儂もびっくりしたわい。流石はカムイじゃな」
俺は皆の前で座る。真横には俺をずっとガン見してくる月夜を横目に、視線を戻し、今回の劇で使ったこと・構想などを説明した。
「―――しかし、魔法の形を変えることができるとはのぉ。数千年生きた儂にもそんな発想は無かったわい」
「実際、今回は演劇に使ったけど、戦闘でも生かすことはできるんだ」
「……童にもできるんだろうか」
「訓練すれば出来る。というか、皆にもこれから訓練して強くなってもらわないとな」
俺は密かに考えていた計画があった。
いずれ魔王と対峙する時が来るかもしれない。その時に背中を守れる仲間が必須だ。
その仲間はいつ来るかはわからない。―――だったら今いるこのメンバーを鍛えて戦力に加える方が希望的観測をするよりも良いと思ったのだ。
皆にその話をすると、以外にも現在の状況を察してくれたのか、了承を得るのも容易かった。
なるべく長所生かしたいので、皆の要望を聞いておいた。
師範はじーちゃんが努めることとなり、俺を含めた5名の強化訓練を実施することになった。
俺は高速攻撃特化型
月夜は全面攻守特化型
武久は火力攻撃特化型
クルメは全面攻守支援型
十兵衛は変幻支援特化型
各自に言い渡された訓練内容は能力が上がってゆけば訓練形式を変え、肉体と精神の強化を図るのだそうだ。
俺たちは今日より地獄の特訓の日々を過ごすこととなる。
地獄の特訓が始まります。




