第十六話 魔法の四帝劇
前回のあらすじ:月夜姫にサプライズをしようと劇を創ることにした
俺が目指しているものは、自分がこれまで制御してきた魔法を使って四帝劇を創ろうというもの。
考えた中で人数を必要とせず、俺が繰り出した魔法同士を当てて相殺しあうことができると言うのが、とても単純明解で分かりやすいと考えたからだった。
これから練習する内容を形創るにあたって、参考にしたのは四帝の変身後の姿と魔王と呼ばれた魔王『ネフェリタル・ガウリス』の姿。
顔もわかるくらい精密に作る必要はない。
ようは大体のイメージで似ている形を作ることでそれが何なのか伝わればそれで良いと思ったからだ。
翌日、日課の訓練等を済ませた俺は滝壺の辺、昨日練習に使った場所にまた足を運んでいた。
まずは属性からだな。
この世界の四帝……四神の属性は五行とは違う。
なので青龍は木・朱雀は火・白虎は金・玄武は水と言った常識にとらわれる必要はないようだ。
参考資料を散々見てみたけど、青龍は水・朱雀は火・白虎は風・玄武は土と四大属性で表すならこんな感じ、と言ったなんちゃって四神の属性が当てはめられていた。
すでに前提から地球の常識と違うなら変にこだわる必要も無いだろうと、魔王の属性は闇属性で創る。
この世界の魔法は大体攻撃に使えれば想像は何もない、ただ単純に殺傷能力の高そうで単純明解な作りをしているのが謎だった。
大体、名前が漠然としており、そのままの言葉になっていて、じーちゃんに見本で撃ってみてもらった時に見た感想としても、自分で撃つ時も同様に同じような見た目をしていたからだ。それは戦闘において相手へとぶつける為だけに魔法の形状まで意識せず放っていたため、どれも似たような形になっているんだろうと俺は考えた。
予想は的中。魔法とは己が想像を混ぜてくることで別に形状に特別、余剰魔力は必要なかった。
代わりに魔法を向かわせたい方向へ放ったりその場に留めさせようとすると魔力誘導が必要だったり、ちょっとだけ技術が必要だった。
今回の俺の練習内容はまさにこれだ。
『作り出した魔法を維持させながら、演劇の様に見ること』
この世界の住民は魔法でこんな使い方をしているのを見たことが無いだろうからまずは驚いてくれるだろう。との想像もあり、ちょっとだけ別の不安はあるがそれは胸の中にしまっておいて練習をする。
四帝達の姿は四神と同等の様相だったのが幸いした。
魔王はドレイク族と呼ばれる竜人種だった。
龍人種と竜人種を以前調べたことがあるが、龍人種は地球で言うとこの東洋龍に近い形状で、逆に竜人種は西洋のドラゴンに近い形状の『龍・竜』の種族とのこと。
変身できるのが元々王族だけだったらしく、察するにどちらも同じ種族なわけだ。
まぁ龍人と言っても亀の様な形状だったり蛇に似た形状にまでなるのだから幾らでも例外はあるんだろう。
それから、5日ほど練習を重ねる。
魔法の形状変化させることに関しては完成。放った魔法同士をぶつけ合うまでの操作する事を踏まえ、全体の改善点を探し、劇の最終調整をした。完成まであとわずかだな。
あとは上演する場所と時間か……。
俺はクルメ・じーちゃんにこれまでの練習がうまくいっている事と上演する場所・時間などを相談した。
「時間、ですか……」
「うん。何か良い案無い?」
「うーん、これと言って予定もないですしね。誕生日でもないので」
「祝い事をするのに特別な理由は必要ないと思うんじゃがのぉ」
「玄武様、それは乙女心を解ってませんね」
「うーん。そういうもんかの」
「そういうものです。ですが―――もしそうするなら、私たちがここへ来て明日で二週間となりますのでそれに合わせて行ってみてはいかがでしょうか」
「そうしよっか」
じーちゃんも別にそれで良いといった様子で髭を撫でる。
「場所は庭園がある中庭でいい?」
「家を破壊しなければ場所はどこでも構わんぞ」
「あいよ」
俺は場所のイメージと規模に最終調整をかけていた。
大体の広さを中庭を意識して行っていたので、不備はないと思う。特段何かする必要はなかった。
明日の上演は中庭でやるので敷物を出しておかないとな。
―――あとは摘みか、そこはクルメに声を掛けよう。
やることが決まったら時間が過ぎるのはとても早いものであっという間に上演の時刻となった。
集中して練習すると時間の流れが早い。
食事を済ませ、のんびりとしているところ、俺は皆に声をかけた。
劇が完成した




