第十四話 ひと時の夜の為に
前回のあらすじ:新しい居候が増えた
日課の稽古等を済ませた俺はどこかに出かける前にクルメ、武久・十兵衛に月夜が好きそうなことを聞いてみた。
武久と十兵衛の話は正直いって当てにならなかったので軽く会話をして流すことにした。
とくに武久に至っては、そもそも月夜の好きそうなことを聞いているのに、「姫様の好みは知らんが、拙者は和菓子が好きだぞ」とか聞いてて、残念ながら参考にならなかった。
十兵衛は逆に、あまり接したことが無いので月夜のことを知らないので申し訳ないと謝ってた。
その方が幾分かはましだと思う。
一番の収穫はやはりクルメだろうな。
やはり、同性でなおかつ教育係にもなっているからか月夜の好みもきちんと把握済み、―――だからだろうか、俺が懸念していることを伝えた際、クスッっと笑みを浮かべ親切に教えてくれた。
俺にとっても家庭内で、なんかこう……妹が変に話しかけるのが恥ずかしいから避けられてるとかちょっと嫌だったのでありがたい話だ。地球じゃもっぱら妹なんていなかったからな!
せっかくできた妹に対して変に避けられるとかちょっとリアリティ高すぎて持たないので、早速クルメから聞いた『四帝劇』と言うものを作ってみることにする。
せっかくだし邪魔の入らぬよう今日は山にでも行こう。
今の俺のステータスは……っと。
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【ステータス】
名前:神威
種族:龍人
状態:普通
Lv :8
HP :200/200
MP :166/166
SP :204/204
気 :200/200
SAN :100/100
STR :138
VIT :101
DEX :119
AGI :145
INT :130
MND :160
EDU :90
【装備】
小型の剣 攻撃力+15
【アビリティ】魔法制御Lv5 気制御Lv5 火Lv5 水Lv3 風Lv6 土Lv4 氷Lv4 雷Lv6 光Lv3 闇Lv4 気Lv4 剣術Lv6 剣技Lv1 武器習熟(剣)Lv3 呼吸法Lv6 足さばきLv5 跳躍Lv4 隠密Lv3 料理Lv2 解体Lv3
【スキル】炎 水 風土氷雷光 闇 二連撃 気功 技能鑑定Lv4 鑑定遮断Lv1 魔力誘導Lv1 魔力強化Lv1 魔力拡大(範囲)Lv1 魔力拡大(数)Lv1 魔力拡大(距離)Lv1 危険察知Lv3 気配感知Lv3 属性付与(火・水・風・土・氷・雷・光・闇)
【エクストラアビリティ】流派:北辰夢想流Lv2
【レジェンダリアビリティ】希望 可能性 勇気
【レジェンダリスキル】龍化(極封印)
【習得ステータスポイント】0
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ステータスポイントはEDUにいつも通り全振りしてある。
ゴブリンとオーガの戦闘で思ったことは、あれはソロで容易にやるもんじゃないってことだ。
良い装備を付けた上級者がやっていいことを新参初心者が無理にやったら死にに行くようなものだと改めてわかった。
もっと強くならなきゃ守りたいものも守れなくなっちまうかもしれねぇ。
前回は運が良かっただけ。俺はそう自分に言い聞かせ慢心せず山へ向かった。
山の奥へ行く。小川がキラキラと太陽の光を反射させ、落葉樹林の青々と新しい葉を広げている少し涼し程度の山道を影が差しているところだけを足場として跳躍でピョンピョンと移動する。目的地などは別に決めてはいないけど、ある程度開けた場所がいいと思い見知った場所でそれらしいところを目指して移動した。
そこは結構な山奥で滝壺のすぐそばにある岩場の広場と言ったところか、別にすごく広いわけじゃない。
メートルで表せば半径15メートルくらいの広場と言った感じだろうな。
よっし、俺はそこで魔法を色々と試してみた。
火と水と風と土、一度やってみたかったことの一つの検証として、出した魔法に力を加えてみた。
これは以前に俺がこの世界で感じたことの一つで、出した魔法に変化を加えることができるのか、実験
をやる必要があったからだ。
―――実験は成功だな。
俺は少々安堵の息が漏れた。―――っと、その時!
「きゃあ!」
俺が後ろを振り向くと月夜が背後に現れたであろう熊に驚いて声を出して尻もちをついて後ろに後ずさっている。―――俺は急ぎ月夜の前へ走り込み、熊からの盾として月夜を背後に隠した。
どうやらここは熊のお気に入りの場所だったようで縄張りに侵入者が入り込んだと勘違いして、敵意をむき出しにしている。
「月夜姫、そっと立って熊と目を合わせながら後ろに歩くんだ」
「……」
うーん、こんな時でもだんまりだと本当に聞こえてるのか不思議になるな。
俺は熊に目を合わせ月夜を背後に家の方へ方向を合わせてゆっくりと距離を開けてゆく。
今回は月夜を守らなきゃならない為、熊を過剰に刺激しては、と細心の注意を払って、元来た道の方を確保するとそこから月夜を逃がした。
熊からだいぶ距離が離れ、姿が見えなくなり追いかけてこないことを悟るとゆっくりと溜め息を吐き月夜の顔を見た。
「どこも怪我はないか?」
「……」
―――月夜は話さない。
一応念のために見えるところで怪我をしていないかだけ確認してみる。
「一応どこも怪我はしてないみたいだな」
「……足、扱けた時に擦りむいた」
「そうなのか?」
「……」
まーた、だんまりですか……。
「歩いて家まで帰れそうか?」
月夜は黙って首を振った。
ただでさえ結構な距離を移動していたから疲れもあるんだろうな。
仕方がない……。足を擦りむいたから痛くて帰れないとか言われても困るし、抱っこして帰るか。
「じゃあ俺も今から家に帰るから、一緒に帰るか」
「……」
うん。とでも言いたげに一度頷く月夜を俺は抱きかかえ、家に帰ることにした。
俺と月夜の身長差はさほどないが、やっぱり子供だからだろう。すっげぇ軽い。これなら普通に抱えることも出来るな。
家に帰るまで、月夜は俯いたまま妙に静かだった。
熊に月夜が襲われたので抱っこして帰ることにした




