第十話 ゴブリン遭遇
前回のあらすじ:猪鍋はおいしかった。
今の俺のステータスはもう行動するだけでは上昇することはなくなった。
経験値を貯めなきゃまじで何にも上がらなくなった。
今日も今日とて森へと修行に出かける。今日は南の方へ行ってみるかな。
森をどんどん進んで行く。
2時間ほどが経過し、太陽の位置を確認する。大体今の時刻は12時頃だと思われる。
気配感知を使い、この周辺の小動物の気配を見つけ、身をかがめてゆっくりと忍び寄る。
目の前で悠々と草をもしゃもしゃしている獣、俺の標的になったのは小鹿だ。
ある程度近づき「風」を放ち小鹿の首を切り落とした。
このことがきっかけだったのか、ステータスに『隠密Lv1』が追加されていた。
小鹿程度なら木に吊るすことができるので木に吊るし、30分ほど血抜きを行った後、解体作業だ。
基本的な解体作業はじーちゃんに一通り教わってある。
血を抜いた後の処理、自分に血が付かない方法内蔵のえぐみが残らないように切り取る作業。
多分今なら精肉店で働いても大丈夫なくらいの知識と実績がある気がする。
と、地球でだったら~みたいな想像をしながら解体用のナイフを片手に、首の無い小鹿を仰向けににして俺自身が上にまたぐ形を取り、切れた首より少し下の方からナイフで切ってゆく、内臓解体は地球でも同じだが、首からけつの穴まですべてが一本で繋がっている。
一度、時間は短くもあるが血抜きを行っているので、無茶をしない限りは血が飛び散る事はないが、いかんせん水辺での解体ではない為、獣の皮を強引に切ろうとすると返り血が付く場合がある。
すっげぇ臭い。
それが嫌なのでナイフには属性付与(風)をかけて切れ味の向上をさせている。
切り込むのは体の中心、喉からケツの穴にかけての一直線上のみ。肉を切らず、皮まで切るイメージ。
まずは喉を外すために胸を裂いた後指で喉を握り徐々に内側の隣接している肉から剥がしていく。
続いて、腸の辺りまで胸を切開してやったら、先ほど取った喉を掴みゆっくりと、ズズズっと臓器を剥がして腸に向かわせる。胃とかその他周辺の臓器がくっついたまま半分ほど剥がれたらケツの穴まで切開する。残念なことにこの小鹿ちゃんは雄だったようで陰部も同時にはがれやすい様に周りを裂いておく。
そのままゆっくりと臓物を引きはがすとずるっと体からとりだせるので最後の仕上げにケツの穴の部分を多めに切り、臓物と肉とを分けて解体の第二パートは終了だ。大体所要時間は5分経ってないだろうな。
ちなみに第一パートは血抜きである。
そのまま臓物を放置しておくと腐るし臭いがすでに半端ないので「炎」で焼く。
次は皮を剥ぐ作業だ先ほど肉だけに分離したけど皮はまだ付いてるので剥がなきゃくえねぇ。
皮を剥ぐ前にナイフで小鹿の前足・後ろ足の爪より少し上を完全切除、両足の内側から縦に切れ目をすでに切断してるところまで入れておいた。
これを残しておくと、最後爪部分で皮が残るのが嫌だし、背中とかで切ると皮としての用途としては質が悪くなるのだ。前準備が終わったところで皮剥ぎを開始する。
皮剥ぎは簡単だ。皮の部分だけ『びよんびよん』と比喩表現で申し訳ないが、つまりはテープを壁に引っ付けた後、テープを切らないように剥がすような?そんな感じで剥がしてく。
全部の皮を脱がし終えたら第三パートは終了。
最後はもう自由なんだけど、俺は切れた首の方も切断する。
鹿もツラミとタンの部分はおいしい。
体の方の肉は好きなようにカットして焼く。
食事の前に水を発動させ、宙にとどめておいた後、そこに手を突っ込み血が付いた手を綺麗にして食事にした。
大体生肉解体から食べるまで1時間ほどかかるから自炊してるのと大差ないレベル。
この世界に香辛料があまりないのか、味付けは何のひねりもない。と言うかできない。
せめてもの救いが、この世界の獣はよく動くのか、硬い肉が好きな俺からしてみると歯ごたえがあって食べやすい。今回のは小鹿だから若干柔らかいけどね。
地元、但馬の名物『但馬牛』も脂が乗ったしもふりなどよりも赤身の所がほう好きだ。
たらふく食事をした後食べきれない部位の肉はそのまま焼き続け、状態としてはウェルダンだな。
それらを保存食用に持っていた布で巻いた後紐で縛って担いだ。
まぁ、簡易的な携帯食料替わりで、地球でやったら衛生面的にやばそうだが、そうも言ってられないので普通に持っていく。
昼食後、また徒歩で南下していくと気配感知に獣ではない反応があった。
かなり強い魔力を外部から放出してる個体が5匹ほどこれがあれか。魔物ってやつか。
肉や剥ぎ取り用のナイフは邪魔になるな。置いていくか。
隠密状態になってゆっくり対象に近づくと相手はゴブリンだった。
身長はかなりの猫背で130センチくらいに見えるが伸ばすと140センチくらいか。俺よりでけぇ。
ステータスを隠れながら見てみた。どうやられべる8~14がいるみたいだ
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【ステータス】
名前:ゴブリン
種族:ゴブリン
状態:普通
Lv :14
HP :127/127
MP :60/60
SP :78/80
SAN :100/100
STR :89(+8)
VIT :77(+5)
DEX :71
AGI :83
INT :21
MND :16
EDU :5
【装備】
錆びた銅の短剣 +8
皮の鎧 +5
【アビリティ】集団行動Lv1
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あれが一番レベル高いな。
けどおかしいな、何かを狙ってる?あの奥はどうなってんだ?
俺が奥の方に目を向けると何も知らずに馬車がトコトコ歩いてきていた。
『あぁ、ここは街道と隣接してるのか。こいつ等はその馬車を狙おうとしてるんだな』
次の瞬間、ゴブリン達は馬車へと奇襲をかけた。
『やっべ、先に先制しかけられた』
馬車の馬は突然のことに両足を高く上げ暴れだし御者はそれをなだめる為、行動が遅れている。
止まった馬車から武士の様な恰好の女性が降り、ゴブリンに切りかかる。
だが、ゴブリンは5体1対5なんて相手になるはずもない、出るなら今しかない!
まずは両手を狙いを定めたゴブリンに向けて……右手は「風」左手は「炎」
とっさにはなった魔法は2体のゴブリンに当たった。
「なっ! 子供!?」
突然の出来事に女性は声を上げたが、今はそれどころじゃない。
風を受けたゴブリンは左腕を切断。
炎を受けたゴブリンは後頭部に直撃し、倒れてビクビクのたうっている。
一気に形勢は2対3にもつれ込ませた―――が道の反対側の木々の中から巨大な影が姿を現した。
身長2メートルを超える巨体に強力な筋力を有している蛮族。
「なん……だと…。オーガがなぜここに」
御者が息を飲むような声で青ざめているので見ている対象へ技能鑑定を掛けた。
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【ステータス】
名前:レッサーオーガ
種族:オーガ
状態:普通
Lv :18
HP :207/207
MP :20/20
SP :190/190
SAN :100/100
STR :146
VIT :139
DEX :81
AGI :90
INT :13
MND :8
EDU :10
【アビリティ】統率Lv2
【スキル】咆哮Lv2 危険察知Lv3 気配感知Lv3 気配遮断Lv2
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相手は……レッサーオーガか。
俺の知ってる冒険モノでもオーガは中級~上級蛮族……レッサーが付いてるが倒せるのか?
すぐに馬車から武士の恰好をした男性と着物姿の子供が一緒に降りてきた
「姫様、ここは我の後ろから離れぬよう願います」
「え、えぇ」
女性と対峙していたゴブリンは一瞬の隙ができたことを好機だと思ったのか、オーガの方に釘付けになっている女性の方に襲いかかろうとした。―――がそこを許すはずもなく俺の「雷」が後頭部に直撃した。最初はビクビクとのたうっていたがすぐ動かなくなった。
【経験値を104取得しました】
経験値ログを無視して未だ無傷なゴブリン2体に対して両手で対象を補足しながら「雷」を唱える。
腕の無いゴブリンはどの対象を狙えばいいのかと、たじろんで目で標的を探りながらあたふたとしてる。
「そこの男性!状況確認をしてる暇があるならオーガから一番遠い腕が切れたゴブリンを倒してくれ!」
俺声で状況理解できたのか太刀でゴブリンを一刀両断した。
【経験値を69取得しました】
「クルメ!いつまでぼーっと突っ立ってる!ゴブリンを先に処理しろ!」
女性は我に戻り、目の前で倒れこみビクビクしているゴブリンの首に剣を突き立てた。
【経験値を118取得しました】
【『神威』のレベルが8へ上昇しました】
俺はオーガの方へ走り出す。その直線上には今しがた雷で体を撃ち抜かれたゴブリンと炎で後頭部を焼かれ、瀕死のゴブリンがいるからだ。
俺は走りながらに剣を持つ鞘に手をかけ、ゴブリンに対して抜刀し、そのまま横に薙ぎ払う。
【経験値を128取得しました】
態勢が安定しなかったのでそのままの動作で後方に体を流し倒れているゴブリンに氷を唱える。後頭部に突き刺さりゴブリンは息絶えた。
【経験値を110取得しました】
オーガも出てきました。




