魔王ちゃんと魔王
「運命の決戦は、魔王様の勝ちで決着しましたね」
あのあと。
泣き止んだ勇者は顔を真っ赤に不貞腐れて、「ありがとな」と言ってくれた。よしよし。
そこにメイドが満を持して現れたのだ。
「魔王様の勝ちです」
と、改めて宣言する。
「そうなの?」
「そんなわけあるか。戦ってないぞ」
「いえいえ。魔王様の勝ちですよ」
不機嫌そうな勇者に、メイドは渾身のドヤ顔を決める。
「だって、魔王様には敵わないでしょう?」
「…………」
勇者は口を歪めて黙り込んだ。
「そうなの?」
「うるせぇ」
拗ねたように言われても怖くない。
大きなため息をついた勇者は、あたしを見下ろす。
「お前が魔王なんだろ。なら、責任を取って戦争を止めろ。本当の意味で王になれ」
本当の……王!
「にゅ」
「あん?」
「にゅっふっふ。にゃーっはっはっはっは!」
自慢のマントをばさっと翻す。
「我は王、我こそが魔王! 世界を手中に収める、真の王者よっ!」
あふれでる王のオーラ! あたしってば、ちょーまおう!
「ああ魔王様、素晴らしいご威光にございます」
「口先だけじゃないといいけどな」
「だから、勇者っ!」
「おうっ?」
面食らっている勇者に、あたしは笑顔を向けて言う。
「もう勇者みたいな目に遭う人は作らない! 殺すのも殺させるのも、やめさせる!」
あたしはなんにも知らない。人間のことも、魔族のことも。
魔王として勇者に会うことしか考えてなかったからだ。
でも、もう違う。
「これからは王として世界を見て、世界を治めて、うれしい世界を作るんだ。王として! 王だからね、あたし!!」
勇者はしばらくポカンとあたしを見ていたけれど、
ふっと力を抜いて肩を落とした。
「……どんな魔王だ」
「やっぱり、もう魔王様には敵いませんね」
「うるせぇ」
にゅっふっふ。
無邪気なのに真の通った幼女って好きです。
不器用で優しい目つきの悪い男の子も最高。
この三人はすごく気に入っているので、もしかしたら続きを書くかもしれない、書かないかもしれない。なので分割して連載掲載としました。