第11話 組織のあり方 6
「……貴様っ! あの時のっ」
井原の驚愕の声があがった。
肩をいからせた井原は、青髪の少女を忌々(いまいま)しそうににらみつけた。
井原の視線など意に介しないように、軽く肩をすくめた青髪の少女は、
「覚えていてくださって恐縮です」
と、淡々とした調子で言って、
「もっとも、私は、任務が済んだら、あなたの顔などさっさとわすれてしまいたいですがね」
と、続けた。
そんな少女の態度も、井原の感情を逆なでしたようだった。
「たかだか不意打ちがまぐれで成功しただけで、えらそうな口をきくなよ?」
と、井原は、いらいらしながら言った。
「なるほど。文霊で強化しているのは、あくまで膂力……」
青髪の少女は、井原に急接近していた。
「……ぐっ!」
青髪の少女の重たい拳撃をすんでのところでしのいだ井原だった。
ふむと軽く息をついた麻知子は、
「反応速度は、並みより少し上向いた程度……といったところですか」
「……なん、だと?」
「私は、曖昧な表現が嫌いです。言いかえましょう」
さらに重みを増した少女の一撃が、井原の防御態勢に突きささった。
「ぐおお……っ!」
「私は、あなたより強い」
青髪の少女は、言って、左脚を高々とあげた。
「スプレット……スタンプ!」
青髪の少女は、大きく踏み込んだ。
アスファルトが砕けて、男性の視界を遮った。
「このアマがぁっ!」
井原が、青髪の少女の腕をがっしりとつかんだ。
「……あなたは、愚かですね」
青髪の少女、町村麻知子は、冷静に言った。
「どういう意味だ?」
「こういう意味です」
麻知子は、井原の腕をつかみ返した。
「私の得意とするフィールドは、超近接格闘。この間合いは、私の投げ技の領域そのもの……!」




