第11話 組織のあり方 5
「勝負は、はじまる前からついていると思うが、どうする?」
井原は、試すように聞いた。
「負けを認めたら、素直に帰してくれるの?」
と、宵は、聞いた。
「まさか。この手帳は、強い想像力を持つ人間が綴ることによってその文字に力を宿らせる魔具だ。そして、小鳩君、君は、類まれにみる想像力の持ち主だ。文筆家にあこがれる、文章を書くことに秀でた、巨大妄想家だよ」
「褒めるか貶すのか、はっきりしてほしいですね」
小鳩は、せいいっぱいの強がりを言った。
「いずれにしても、君は、魔具である黒の手帳に文霊という魔術的力を注ぐという特殊能力をもっているわけだから、こちらとしては、金を生むタマゴなんだ。丁重に監禁して、飼い殺しといったところだな」
井原は、たいして考えてもない調子で言ってから、
「お嬢さんは、そうだな……せっかくそんなにいい身体をしているんだ。小鳩君とは違った形で、飼い殺してやるよ」
井原の睨めつけるような視線に、宵は、嫌悪感を覚えた。
井原は、そんな宵の態度さえ楽しむかのように、笑った。
「一言もしゃべれなくなるくらい、マグロになるまでいたぶってやるか、いや、一通り楽しんだら、売り飛ばしてしまうのもいいか」
「……」
宵は、押し黙った。
このままだと、井原の思った通りの展開になってしまうだろうと思われた。
「もう一度聞こう。どうする?」
「こうします」
冷然な声が、井原の言葉に重なった。




