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今更になって深夜アニメを見た僕の話

作者: 訳あり格安

 僕は今年に入るまで深夜アニメというものを碌に見たことがありませんでした。

 ただ当時の中学高校の同級生が話しているのを聞いて、テレビ番組が取り上げるのを見て、色々とアニメがあることは知っていました。




 今ならネットで調べればいくらでも情報を得られるでしょうが、当時ネットを調べるための端末を持っていた中高生は恵まれた家庭の子供だったと思います。

 今どき生活保護を受けている家庭でもスマートフォンくらいは持っているでしょうが、スマートフォンも出たて、パソコンも今より高価な時代。

 そんな時代に子供へ情報端末を買い与えたのは裕福で理解のある家庭でしょう。




 翻って、僕が育った家は貧しくはありませんでしたが親が古い人で、自分用のパソコンなど買い与えられませんでした。


 それどころか携帯電話すら高校生には要らないと公衆電話を利用させたのです。

 それでも当時はガラケーが一般的でLINEなどなく、クラスや部活の連絡も連絡網で家の電話にかかってきましたし、公衆電話も今よりはあったので不便さはあまり感じませんでした。

 それに僕が通っていた学校は校則で中学は携帯の所持を禁止、高校も校内での使用を禁止していましたから持っても持たなくても変わらないと思っていました。


 もっともその状況を受け入れていたのは親に従っていたからではなく、家に帰ってまで学校の人間関係を続けたくなかったからです。

 いちいちメールとか面倒だしと思っていたのです。

 そんなすかした奴にメールを送ってくる人はいなかったでしょうが。


 ギリギリ携帯電話を持たないのが許される時代でしたね。

 たぶん今なら親もケータイを持たせると思います。さすがにクラスLINEで1人だけ連絡取れないのはマズイでしょう。




 話をパソコンに戻しますが当時の僕のクラスメイトはどこから情報を仕入れてきたのか、聞いたことのない深夜にやってるアニメの話をしていました。今思えばネットで調べていたのでしょう。

 彼らは裕福で親の理解がある家庭の子供でした。


 僕の通っていた学校は公立の進学校でした。

 進学校に通うためには塾やらでお金がかかりますから、周りは公務員やら医者やら地元の名士やらの子供ばかりでした。

 進学校といっても地域で一番学力の高い学校というだけで、都会の進学校の足元にも及ばないと思います。


 周りの話を聞き、深夜アニメに多少の興味を持ちましたが見るには至りませんでした。

 なぜなら塾と部活で忙しかったからです。




 ただクラスメイトも塾に通ったり部活したりしていたはずなんですよね。

 おそらく僕の物事をやる効率が悪いんでしょう。

 当時は自分の持てるエネルギーを全て勉強と部活にぶつけ、疲れ果てていました。

 しかし学校の成績は振るわず、部活も万年補欠と酷い有様でした。

 それでもアニメを見ているようなクラスメイトは、僕より学業ができて部活でも活躍していました。


 今はこれが能力の差なのだと思いますが、昔の僕は自分の努力が足りないんだと思っていました。

 努力が足りないから努力する。その結果遊ぶ余裕がないほど疲れ果てる。




 結局、高校2年の時に僕はあらゆる疲れを投げだして進学校をやめました。

 勉強、部活、クラスメイトとの人間関係、親の指示、全てから逃げ出しました。

 やめたときは何もする気が起きませんでした。ほとんど寝て過ごすだけの生活です。


 その後かろうじて残ったエネルギーで通信制高校に通いますが、そこすらまともに通えず苦労しました。

 やっとの思いで卒業した後、専門学校に進みましたがやはりまともに通えず1年でやめました。




 そして今年、努力から解放された僕は昔見れなかった深夜アニメを見ました。

 僕は流行っていた数々のアニメを見て、とても面白いと思いました。

 こんな面白いものがあることを僕は今まで知らずに生きてきた。そのことを悔やみました。




 中高生の僕はアニメを見るのは時間の無駄だと思っていました。

 勉強や部活をしている時間以外は無駄な時間。無駄な時間を過ごすことは僕にとって罪悪感に苛まれる辛いことでした。

 しかし無駄な時間を過ごさなければ人は疲れ、しまいには壊れます。

 そのことに僕は気付きました。




 それから僕はこれまで無駄だと思っていたことを始めました。

 音楽を聴いて、アニメを見て、ライトノベルを読んで、こうして誰にも読まれないかもしれない文章を書く。

 それは無駄に見えて、実は楽しいことでした。


 僕は活力を取り戻しました。

 何もする気がしなかったのは本当にしたいことを無駄だと思ってしなかったからです。




 今、僕は一生懸命自分の好きなことをしています。

 それは生活で役立つことは少ないでしょうから無駄だと言えるかもしれません。

 でも僕にとってその時間は無駄じゃない。

 本当に無駄なのは無駄なことに罪悪感を持つことでした。




 世の中にはこんな僕みたいなバカもいます。

 普通にアニメを見て楽しめるのは幸せなことです。

 そのことを知って欲しくて、今更になって深夜アニメを見た僕の話をしました。

 終わり。

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