第5話
「細見ー。おはようー!」
「島野。はよー」
「はい、これ!」
「ん?」
渡したのは昨日貸してもらった体操服。
「昨日はありがとね!」
「別にいいって。それよりもお前は澤野の体操服がよかっただろ?」
「そんなこと思ってないから!」
「おー?朝から仲良く登校〜?」
そう言ったのは小田!
「何言ってんだ海音。たまたまそこであっただけだぞ」
「そうだよ」
「龍介も島野も言い訳ばっかじゃねーか。俺は昨日見たんだからな!」
そう言って学校まで走って行った。
「見たって何を見たんだ?」
「えーっと昨日さ…かくかくしかじか」
「あ、そういえば刺繍されてるな。すっかり忘れてた」
「私も忘れてたの。それで学校で報告するって」
「へー。…ん?それってやばくねぇ!?」
「だよねー!」
『急げー!』
私達は学校まで全力ダッシュ!
ガラガラッ!
『カップルが来たぞー!』
「お、遅かった…」
しんどっ!全力ダッシュの意味!
「はぁ?何言ってんの?」
「俺は見たんだぞ龍介!島野が龍介の刺繍入り体操服を着てたことを!」
「ちょっと待て。俺の刺繍入り体操服はキモい」
『…あー確かに』
クラス全員がそう言った。それがあったらある意味すごい。
「そこは『刺繍入り』を言わなくていいぞ」
「じゃあもう1回。俺は見たんだぞ龍介!島野が龍介の体操服を着てたことを!」
「でもさー、俺の体操服を着てただけで付き合ってるっていうのは意味わかんなくねぇ?もしかしたら海音も誰かに体操服を貸すかもしれねぇだろ?冬用ならさ」
「それはないだろ!」
「もしかしたらって仮定で言っただろ」
「う…」
「てことで、この話は終わりってことで」
「なんだよ〜。海音変なこと言うなよな〜」
「えぇー!俺が悪いのかよー!」
「まぁ一応誤解は解けたんじゃね?」
「多分ね。それより!細見仮定って使ったよね!よくわかったね!」
「はぁ!?そんくらい俺でもわかるぞ!」
「だって細見だよ!?」
「あ、今のむかついた」
ベシンッ!
「いった!」
「俺をバカにした罰」
「バカなんだからいいじゃない!」
「もう1発するぞ」
「それは無理〜!」
『(小田が言ったこと絶対合ってるだろ!)』
クラス全員がそう思った。
放課後…
「島野!テストどうだったんだ!?」
「388点だよ。あと12点で400点だったのに…細見は?」
「…287点」
「上がったじゃん!前回266点だったでしょ?」
「300点はほしかった!」
「あと13点頑張れ!」
「おい、島野と龍介。ちょっとこい」
「わかったー」
「ほーい」
私達は顔を見合わせこう言った。
『絶対昨日のことだよね(だよな)…』
「お前ら昨日何してた?」
『(やっぱりそうだよね(だよな)ー)』
「何もしてねーよ?」
「遊んでたんだよな?海音から聞いたぞ?」
『遊んでました。ごめんなさい』
「じゃあ俺が呼ぶまで走っておけ」
「マジかよ…」
「え、私マネージャーなんだけど…」
「走る時は参加してるだろ。じゃあ頑張れー」
「嘘でしょ…」
「どーんまーい」
「はぁ…走ろっか」
「そうだな」
タタタタッ
「お前遅くねぇ?」
「細見の方が速いに決まってるでしょ。男子と女子なんだから」
「あ、そっか!んじゃ俺お前に合わせるわ」
「なんで?」
「だってお前のスピード楽だし♪」
「なにその理由。まぁ細見らしいか」
「あれ?お前ら何してんの?」
そこにいたのは澤野。ちなみに澤野はサッカー部。
「よぉ澤野。昨日サボったから走らされてる」
「島野もか?」
「うん。昨日細見に巻き込まれた」
「それを承諾したのはお前だろうが」
「そうなんだよねー。こんなことになるなら承諾しなけりゃよかったー」
「マジかー。じゃ、頑張れよー」
「おー」
「よかったなー。澤野に会えて」
「はぁ?別によくないし」
「またまたー。変な嘘つくなよー」
「ついてないからね!?」
だって私が好きなの細見だし!…絶対に言わないけどね。
「嘘じゃないなら俺追いついてみろー!」
「はぁ!?ちょっ、それは無理!」
「じゃあなー!」
そしたらいきなりダッシュした!
「速っ!?めっちゃ体力余ってるじゃん!あーもういいや!待てー!」
私もダッシュ!
15分後…
「もう…無理っ」
私は立ち止まった。
「もう体力使い切ったのかよ。体力ねぇなー」
「うるっ…さいっ…」
しんどっ!走り過ぎた…
「お前ら、ちゃんと走ってるかー?」
『走ってる!』
「島野はわかるけど、龍介は全然走ってなさそうなんだが」
「こいつのペースに合わせたからだろ」
「それで楽してたのか」
「あ」
細見口滑ったな。
「よし。プラス30分だ」
「嘘だろ…」
細見、どんまい!
「じゃあ島野はいつも通りよろしく」
「わかった」
「俺はなんであと30分も走らないといけねぇんだよー!」
「楽したからだろうが!文句言うならもっと走る時間増やすぞ!」
「走ります…」
頑張れー!
「30分たったら龍介に水筒とタオル持って行け」
「わかった」
30分後…
「細見ー!終了ー!」
「っしゃあ!しんどっ!」
「はい、水筒とタオル!」
「お、サンキュー!」
「お疲れ様〜」
「林ってキレたら面倒だからなー」
「それなのにキレさすのは私達なんだよねー」
「そうなんだよなー」
ヒュー…そよ風が吹いた。
「風、気持ちいいね〜」
「そうだなー。よし、もう少し休憩するか」
「怒られない?」
「大丈夫だろ」
「お前らー。早く入れよー」
「…だってさ」
「うわー、タイミング悪っ!でもしょうがないか。入るぞ」
「え、ちょっと待ってよ!」
あ、中間テストが終わったってことは…次は一泊移住!細見と同じ班になれるかな〜?