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合宿

「こはる~、合宿の予定だけど、五月三日から四日に決まったよ」

 小春は山本みどりの勢いに押されて合宿に行く約束をしてしまっていた。

「本当に行くんですか?」

「昨日約束したじゃない。絶対に行くんだからね」

「どこに行くんですか?」

「温泉だよ! 群馬県の伊香保温泉。露天風呂も有るんだって。高梨先輩が車を用意してくれるから、十時に校門の所に集合だよ」

(お・ん・せ・ん。温泉だって! サイコー)

(なに喜んでいるのよ! みどりんとハナちゃんとは一緒に温泉には入らないからね!)

(ウソー! そんなこと言わないでさぁ、みんなで仲良く入った方が良いよ! せっかくの親睦会なんだから……)

(こんたん丸見えだよ。ハルのドスケベ! ドエッチ!)

(そんなぁ……、でもおねがいしますよ~)

(絶対にダメ!)


 小春は朝十時に校門前に到着した。すでに河村教授、山本みどり、中津川波奈、南川勇司の四人が来ていた。

「おはようございます」

 四人に駆け寄り、小春が挨拶をする。

「おはよう、小春。後は高梨先輩と吉岡先輩だね」

 波奈が言った。

「あの車じゃない?」

 こちらに近付いてくるワゴン車を指差して南川が言う。そのワゴン車が目の前に止まり、高梨洋一と吉岡保が降りてきた。

「お待たせ。全員そろっているね。じゃあ出発しよう」

 高梨洋一が言うのを合図に、全員がワゴン車に乗り込んだ。みどり、波奈、小春の三人は一番後ろのシートに座り、河村教授と南川が真ん中、吉岡が助手席に座り、高梨の運転で出発した。

 首都高から関越道に入った。一度サービスエリアでの休憩をはさみ、渋川伊香保インターチェンジで高速道路を降りた。後は一般道路を走り伊香保温泉を目指すだけだ。途中の渋滞とお昼御飯を食べていたせいで、約四時間半かかって伊香保温泉に到着した。


 宿は比較的小ぢんまりした旅館で、伊香保温泉の階段街の近くにあった。部屋は、河村教授を含む男四人の部屋と、小春達女三人の二室が用意されていた。

「夕食は六時からになります。食事は一階の和風レストランになりますので、六時に集合お願いします。それまで温泉にでも入ってのんびりして下さい」

 今回の幹事役の吉岡保が説明をし、各自それぞれの部屋に入った。

「ハナちゃん、小春、温泉行こうよ。明るいうちに露天風呂に行こう」

「そうだね、露天風呂からの眺めは良いらしいからね。小春も早く浴衣に着替えなよ」

「あの~、私は……ちょっと……」

 小春がためらっていると、浴衣に着替え終えたみどりと波奈が小春に近付いてくる。

「どうしたの? 着替えさせてあげようか?」

「あ、いいえ、大丈夫です。ちょっと車に酔ったみたいなので、少し休んでからにします。みどりんとハナちゃんで露天風呂に行って来て下さい」

「えー、大丈夫? じゃあ行って来るね。具合良くなったらおいでね」

 みどりと波奈は小春を部屋に残して露天風呂へ向かった。小春は車酔いを理由に、露天風呂を回避した。

(小春、車酔いなんて嘘だろう!)

「決まっているでしょう。私は今まで一度も車酔いなんてしたこと無いもの」

(なんでだよ。せっかくみどりんとハナちゃんが誘ってくれたのに……)

「ハルはみどりんとハナちゃんの裸が見たいだけでしょ! エッチなんだから!」


 小春がハルと話しながら時間つぶしをしていると、みどりと波奈が露天風呂から戻ってきた。

「露天風呂、気持ち良かったよ。小春も来れば良かったのに……」

「そうだよ、眺めも最高だったよ」

「そうなんですか? 後で行って見ます」

 みどりと波奈が一休みしていると、夕食の時間が迫って来た。河村教授や先輩達と連絡を取り、和風レストランに行った。郷土料理とは言っても同じ関東なのでそれほど変わった料理は出てこないけれど、美味しそうな料理がテーブルせましと並んでいた。

「ウワー、美味しそう!」

 子供みたいな小春の言葉に、全員が微笑んでいた。河村教授も先輩達も良く食べ、酒も良く飲んだ。未成年の小春は食べることに全力を尽くした。会話も弾んでいたけど、研究室の中での、河村教授>みどりと波奈>男子学生の順位がますます確実になっていった。


 宴会もお開きになり、小春達はみどりとハナの酔いざましも兼ねて階段街の散策に行くことにした。

 階段街をぶらぶらしていると前方に先輩達三人を見つけた。

「あれ、先輩達だよね」

「高梨先輩達、どこに行くんですかね?」

「どうせろくでもない所に行くんだろうけど……、後をつけてみようか」

 高梨達は石段街を外れて薄暗い小路を通り、急な坂を登って行く。小春は少し不安になったけれど、みどりと波奈が一緒なのが心強かった。

 不意に三人が立ち止まった。そこの看板にはストリップ劇場と書いてある。三人は劇場とは思えない建物に入って行った。小春達はその前を通り過ぎながら看板を読んでみた。小春には意味のわからない文字が並んでいたが、その中でも『美貌の舞姫』という文字が目を引いた。

「あいつら、どこに行くかと思えばストリップかよ! 本当にどうしょうもないやつらだな!」

 波奈が先輩達を見下したように言った。

「ただでも評価が低いのに、あいつら本当にダメだね!」

 みどりも先輩達にがっかりしているみたいだった。

(ハルもあんな所に行きたいの?)

(オレ? そうだなぁ、行きたい様な……そうでも無い様な……)

(行きたいんだ! ドエッチ!)

(なんだよ…………)

(後半、言葉になって無いよ! 全く男ってどうしょうもないんだから!)

「あ~あ、あんな奴等と同じ研究室にいると思うと嫌になっちゃうよ! もう宿に帰って温泉にでも浸かろうか?」

 みどりの言葉に賛同し、三人は宿に戻った。

「小春、温泉に行くよ!」

 みどりが言った。なぜか怒っているみたいで、断ることが出来る様な雰囲気では無かった。小春は仕方がないので、みどりと波奈の裸を見ないようにすることを決意して、温泉に入ることにした。



 小春は脱衣場でのみどりと波奈の脱ぎっぷりに圧倒されていた。いきなり浴衣を脱いだら中には何も着けていなかったのだ。下着を着ていた小春に向かってみどりが言った。

「小春は下着を着ていたんだ! 普通は着ないものだよ!」

「ウソー、普通着ますよ!」

「ダメダメ、そんなんじゃ良い女になれないよ!」

「良いんです……私は……」

 風呂場には他の客は居なくて、完全に貸切状態だった。みどりと波奈を見ないようにすることは完全に失敗した。小春はふたりの大胆さとスタイルの良さに圧倒され、つい見とれてしまったのだ。

(あ~、イイネ~。小春、俺は今、幸せだよ!)

 小春は慌てて目を閉じた。

(小春、目を閉じるなよ!)

(バカ! ドスケベ!)

 小春は目を閉じたまま進んだが、浴槽の縁につまずいて転びそうになった。慌てて目を開けたら、目の前に現れたのは波奈の豊かな胸だった。小春は波奈の胸に顔を埋めながらしっかりと抱き留められた。小春は転ばないで済んだけれども、またしてもハルを喜ばせてしまった。

(小春、ナイス!)

(バカ!)

「小春、大丈夫?」

 波奈が小春を抱きしめたまま言った。そこにみどりが寄ってきて、

「ハナちゃんずるい! 私も小春を抱きしめたいよ~」

 みどりも小春を抱きしめた。小春はしばらく身動きがとれない状況に陥っていた。みどりの腕と胸からは何とか解放されたが、小春の受難はなおも続いた。

「小春、背中洗ってあげるよ」

「大丈夫です。自分で洗えま……」

 みどりは小春の意思などとは無関係に小春の背中をタオルで洗いはじめた。小春が身体をよじって逃れようとするのを、押さえ付けるようにしている。まるで嫌がる子供の身体を無理やり洗う母親のようだ。

「あっ、そこは背中じゃなくてお尻ですう……そこは胸ですよう……」

 みどりは小春の全身をくまなく洗ってから、押さえ付ける手の力を緩めた。その間、波奈は笑いながら見ていた。小春は疲れきってしまい、みどりと波奈の身体をハルに見せないようにする事など全く出来なかった。

 やっと風呂場を出ても、みどりの攻撃は止まらなかった。

「これは無しにしなさい」

 そう言って、小春の下着を取りあげてしまったのだ。

「えー、恥ずかしいですよ。返してくださいよう……」

 みどりには小春の下着を返す気は全く無いようだ。小春はみどりや波奈の様に下着を着けずに浴衣を着るしか無かった。

「なんだかスースーするじゃないですかぁ」

「そこが良いのよ、女はちょっと恥ずかしいくらいの格好が良いのよ。小春だってミニスカートとか着るでしょ」

「それとこれは違うと思いますよぉ」

「もっと堂々と歩きなさい!」

 みどりと波奈に言われたけれど、なれていない小春は妙な内股になりながら、みどりと波奈の後ろをついて歩いていた。

(三人とも浴衣の中は……。うー、たまんねえなあ)

(想像しない! ドスケベ)

(想像するなって言われても……、無理だ~)

(無理でもダメ!)


 翌朝、レストランへ行くと、男性陣は先に朝食を食べていた。小春達も同じテーブルについた。朝食を食べ終わりコーヒーを飲みながらおしゃべりをしていると、高梨に向かってみどりが言った。

「昨夜は美貌の舞姫、居たの?」

 高梨はコーヒーを吹き出しそうになり、おしぼりで口を押さえながらむせていた。代わりに答えたのは南川だった。

「美貌の……なんて大ウソでしたよ。居たのはかなり太めのオバサンでしたよ。がっかりだったなぁ」

 なぜかうれしそうに話す南川の横っ腹を吉岡が肘でつついた。

「ふ~ん」

 なぜかみどりは怒っている様だった。

(みどりん、怒っているよね? なんでみどりんが怒るんだろう?)

(そうだよな、研究室の先輩がストリップ劇場に行ったくらいで怒るようなタイプじゃないだろう?)

(うん。そんなタイプの人なら、浴衣の中にも下着を付けると思うし……)

(わからん! 女は謎だから……。ハナちゃんに聞いたら何かわかるんじゃないのか?)

(そうかも、後で聞いてみようかな)

 みどりの不機嫌な態度によって雰囲気が悪くなった中、吉岡が今日の予定を発表した。

「このあとの予定だけど、九時半にロビー集合。チェックアウト後出発で良いですか? 途中でおみやげ店に寄って帰りたいと思います」

 全員がうなずき、了承した。


 高梨が運転するワゴン車は、途中でみやげ物屋に寄って、港南大学の校門前に到着した。みどりは寄る所が有るとかで先に帰って行ったが、小春と波奈は近くのカフェで休憩してから帰ることにした。

「今回の旅行、みどりんはずいぶん小春に絡んでいたね」

「そうですよ! みどりん、何かあったんですか? なぜか不機嫌だったし……」

「昨日先輩達の後をつけたでしょう。先輩達、ストリップ劇場なんかに入るからいけないんだよね」

「それでどうしてみどりんの機嫌が悪くなるんですか?」

「いくらみどりんでもねぇ……。さすがにストリップ劇場は嫌だったんじゃない? ああ見えて高梨先輩とみどりんは付き合っているからね」

「えっ! 高梨先輩とみどりんが!」

(えっ! 付き合っている!)

 小春とハルは同時に叫んだ。もっともハルの声は小春の頭の中で響いただけだったけれど……。

「そうなのよ! 高梨先輩のどこが良いのかわからないけどね。今だって高梨先輩の部屋に行っていると思うよ。部屋で服を脱いで『私と美貌の舞姫とドッチが良い女?』とか言って高梨先輩のことをいじめているんじゃない?」

 小春はその光景が目に浮かぶ様だった。

(ハル、今想像したでしょう!)

(想像なんかしていないよ! ただ、光景が目に浮かぶって、こう言うことなんだなって……。小春だって同じだろう?)

(ハルのドスケベ! 私も光景が浮かんできちゃったけど……)


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