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「いやー、危なかったー」


 二人から急いで離れた女性――美雪は額に溢れた汗をバックから取り出したハンカチで拭きながら、そう小さく呟く。

 その呟きに反応するように一匹の白猫が屋根から塀、地面へと下りてくる。


「ヒヤヒヤさせおって。じゃから、もう少し期間を開けろ、って言うたじゃろうに」


 言葉通りの意味を現すように、ジト目と呆れた口調で不満を露わにする。

 美雪は「えへへ」と反省した様子を見せながら笑う。


「しょうがないよ。一応、後日の様子を確認するのも私の役目なんだし」

「そのことに否定はせぬ」

「でしょ?」

「じゃが、次からは一週間ぐらいは間を空けい。あれでは記憶を消した意味がなかろう」

「ごめんごめん。でも、ちゃんと付き合えてて良かったねー」

「じゃな」

「ああいう平和なのが一番だよね」


 そう言いながら、美雪はスゥにウインクを飛ばす。

 スゥは「はぁ」と情けないようなため息と共に、過去の相談を思い出すかのように真っ赤に染まった空を見上げる。が、すぐにその表情は曇ってしまう。今までの相談がロクなものじゃなかったことを示すように。


「っていうか、ちゃんと人除けとか色々してるの? 珍しく外で喋ってるけど」


 スゥが喋りそうな過去の相談の文句を言わせまいと、スゥが口を開く前に美雪がそう尋ねると、


「当たり前じゃろう。じゃないとワシが喋るわけがないじゃろ、常識的に考えて」


 「何を今さら」という雰囲気を隠さずにスゥがその質問に答えた。


「そかそか。それなら良いんだけどね。まぁ、拓斗くんの様子も確認出来たし……私たちも帰ろっか」

「うむ、そうしようかのう」

「さぁって、今日の晩御飯は何をしようかなー」


 美雪は再び元来た道を戻り始める。

 スゥは再び塀に向かってジャンプすると、美雪と並ぶようにして塀の上を歩き始める。危ない道路よりも安全な塀の上を進むことにしたらしい。

 二人とも拓斗が望んでいた未来通りに進めたことが嬉しいらしく、美雪に至っては小さな声で鼻歌を、スゥはその鼻歌のリズムに合わせるように前足を上げて歩を進めた。


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