(10)
「それでどうするのじゃ?」
スゥはその言葉を美雪へと投げかける。
いい加減な言葉だったが、美雪はスゥが何を言いたいのか分かったらしく、
「拓斗くんの過去の映像のことなら見ないよ」
と、あっさりと拒否した。
「そうか? 別に映像として出すのは大変じゃないんじゃがな」
「そういう問題じゃなくて、私が見るのは理に適ってないように思うから」
「相談を受けるのじゃから見る権利はあるじゃろうに。それに話の流れを知っておいた方が話も進みやすくなるんじゃないのか?」
「進みやすくなることは間違いないね。っていうより、私はそこまでして深く関わるつもりがないってこと」
「そうか。美雪がそう言うのなら、それに従うかのう」
スゥもあっさりと納得した顔でそう納得した。そして、身体を丸めようとするが、途中で止めると、
「美雪は小僧が気付けると思っておるのか? 美雪が考える答えに……」
そのことが気になったらしく、そう質問する。
美雪は天井を見ながら、「んー」と唸り始めたかと思うと、スゥに笑顔を向け、
「分かんない。たぶん無理なんじゃない?」
またもやあっさりと答えてみせる。
スゥもスゥでそんな美雪を見て、「はぁ」と呆れたため息を漏らす。
「教えた方が早かったのではないか?」
「人間は面倒くさい生き物だから、他人から言われた意見を素直に聞き入れるタイプもいれば、自分が体験したことしか認めようとしない人間もいるからね。どっちにしても体験した方が得るものは多いから教えない方向で行ってます」
「……ワシが巻き添えじゃがな」
「それは自業自得」
「そうじゃな」
スゥは諦めたようにその会話を素早く流すことによって諦め、今度こそしっかりと身体を丸める。
さっきの件で美雪に敵わないことを自覚したからこその行動だった。
美雪もスゥの様子に突っ込むことなく、小さく息を吐くと、身体を脱力させて深々とソファーに凭れ込む。
それ以後、二人は特に会話することもなく、拓斗が返ってくるのを大人しく待つことになった。




