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Two Hearts  作者: シ皮糸文
第一章
2/56

友達…?

あれから団長から話を聞き、フードの男を探すことになった。

だが、手掛かりは何もない。

強いて言えば、最後に見た男が手に持っていた黒い水晶のようなものだが…。

とりあえず考えていても仕方ないと思ったイールは、服を着替え身支度をしていた。

黒い長袖のシャツの上に、白い襟が広いTシャツ、更に青い半袖のシャツを着る。

青いシャツの背中は膝裏程度まで丈があり、

チャイナドレスの後ろだけ、とでもいったところだろうか。

ズボンはカーゴパンツのようなものを履き、

いろいろな物を詰め込んだウエストポーチを身に着け、剣を持った。

団長はまた昨日のようなことが起きないように、より一層夜の見回りを強化するそうだ。

ちなみに、火事で家はあまり焼けておらず、負傷者もいなかったらしい。

怪我人が出なくて何よりである。


家を出ると、村のみんなが集まっていた。

「イール、気を付けてな。」

団長が言う。

「俺たちだけでも大丈夫だから心配せずに行って来いよ!」

「イール君がいなくなるのは寂しいけど、帰って来るの待ってるからねー!」

「イール兄ちゃん、よくわかんないけど、旅がんばってねー!」

村人たちが声を上げてイールを見送ってくれた。

だが彼は曖昧な答えを返すだけだった。

というのも、記憶を失っているから村人たちのことが全く分からないのだ。

イールは4年前、つまり13歳の時にこのシルル村に来たのだから。

暖かく送迎してくれる村人たちの優しさに、イールは知らず内に涙をこぼしていた。

記憶を取り戻して帰ってきたら、今まで以上に(今までという記憶自体がないが)、

親密にみんなと接しようと心に誓った。


手を振り、村を発つ。まず目指すのはここから最も近い町、パースだ。

団長の話だと、そこに僕の自警団友達がいるそうで、協力してもらうといいと言っていた。

名前はブラックというらしい。

赤髪で顔にタトゥーを彫っているからすぐ分かるさ、と言っていた。

本当にそんな不良みたいな人が僕の友達なんだろうか…、と、少し不安になるイールだった。


道に沿って歩くこと数十分、町が見えてきた。

町はわいわいと賑やかで、シルルとはまた違う良さがあった。

「パース自警団…、ここかな。」

看板にでかでかと書かれている。大きな平らな屋根の家屋だ。

中に入ろうとドアノブに触れたその時、

「キャー!」

声のする方を見ると数人の男が商店の物を次から次へと袋に放り込んでいる。

「盗賊…!」

イールは無意識に盗賊に向かって走り出し、剣を抜こうとした。すると、

「おらああああ!」

向こう側から誰かが盗賊をなぎ倒している。

赤い髪、タトゥー、彼か。不良のように見えるが…。

ひいー、と声を上げて盗賊たちが逃げていく。

そのうちの一人の首根っこを掴み、手錠をかけた。

「ッチ、また逃げられた…。」

胸にX字でつけているサスペンダーに取り付けている二本の鞘に剣をしまった。二刀流のようだ。

そして、地面に散らばった商品を露店主と一緒に一つ一つ拾って元に戻していた。

根はいい人なんだろう。

ぼーっ、と見てる場合じゃないと気付き、自分も商品を拾いに行くと、

「お?イールじゃねーか?久しぶりだなー!」

と声を掛けられる。

「こ、こんにちは…。」

と、どきまぎしながら答えた。

「? …どうかしたのか?」

「え、えーと…、あとで話を聞いて欲しいんです…。」

「敬語なんて使ってんじゃねーよ、友達だろ?」

「あ、すいません…。」

「…オイ。」

もう訳がわからない。

商品を元に戻し終え、自警団前のベンチで事情を話したところ、

「はぁ!?お前記憶喪失になったって!?」

耳が痛い。

通行人も驚いてこっちを見たが、あぁ、彼か、と納得したようにスルーしていた。

「まぁ記憶喪失というか、奪われたというか…。それで団長に協力してもらえって。」

「なるほどな、お前の頼みだから聞いてやりたいのは山々なんだがこっちにも問題があってな。」

坦々と続ける。

「さっきの盗賊見たろ?あいつら最近何度も盗みに来てるんだ。

 うちの自警団が数人出張に行ってるのを知って来るんだと思うがな。

 今日だけで三件…、この町は広いから今いる8人だけじゃ全てを取り押さえるのは難しいし、

 盗賊の数も減る様子がねぇ…。」

確かにこの町は広い、八人ではとても手に負えないだろう。

「そこで、だ!」

こちらの目を見て言う。

「お前も手伝ってくれ!んで、全員捕まえたら手伝ってやるよ!」

笑顔で頼まれ、イールは少し考える。

(盗賊を放っておくわけはいかない…。)

「分かった、手伝うよ。」

すると、さらにいい笑顔を見せる。

「お前は足が速いから盗賊なんて逃がさずに捕まえられるだろうしな!」

(…そうなんだ。僕は足が速いのか…。)

10歳までの記憶ではそこまで早かった覚えはない。

また先行きに不安を感じ始めたイールだった…。



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