憧れ
体育館にこだまするゴムの反発音。
靴底と床が鈍く高い音を立てる。影は緩く速く、揺れるように姿を変えていく。
右手に吸いつくように弾むバスケットボールには目もくれず、アップダウンの差をつけて、走りだす。
速く。速く。高く。高く。
走って、跳んで、シュートを決めて、また走る。
永遠のループは己の体力の限界まで淡々と激しく、緩やかに続いていく。
頭に描くのは憧れとの一対一。
何回も抜こうとしては阻まれて、止められる。
自分対憧れ……一人でも、目の前にはもう一人。
肩から息をして、汗だくで、倒れてしまいそう……それでも
越えたいと思うから。
勝ちたいとおもうから。
だからこそ此処にいる。
毎日のごとく決意をかみしめ、右から切りこんで、左にロール……とどめに後ろに跳びながらのシュート。
それにあわせて、キュッ、ダン、ダッ、キュイッ、ドンと夕陽に染まる貸切の体育館を音が飾っていく。
音が消えて、少し遅れて放たれたボールが軽快な弧を描いてゴールに吸い込まれる。
そしてまた手に取り、また走る。
限界は、すぐそこ……。今日はどこまで、いや、どれだけ走れるだろうか?
そんなことを考えながら、手から放たれるシュートはゴールに阻まれ、足元に帰ってくる。
あの人は決めただろう、と高い壁の向こうの憧れに手をのばすがまだ届かない。
今日も日が暮れて、また明日。
明日はどこまで追いつけるだろうか……?
初めまして、夕緋塚です。
今度からは連載のファンタジーを書きたいと思います。
未熟者ですが宜しくお願いします。