人生最大の不愉快
私の人生の中でただ点々と続くあなたとの接触は、どれもがこの上なく深遠で、柔らかさというものがかくも人の心を動かし、かくも強大な呪縛なのかと、あなたに対して憎しみ以外の感情を向けることのできない私は、そんな罵声を無限にあなたにぶつけてやりたい。あなたに金色の光を反跳する鋭い刃物を、その胸元─私の中で今もっとも収縮して、行き場なく頑然とよこたわる物理的限界に怒声を垂れている場所─に、幾度と無く突きつけてやりたい。私を私でなくし、私をあなたに仕立て上げたあなたが背負うその罪は万死をもって償えるものですらなく、この上ない憎しみはあなたに奪われた取り返しの付かない私の生命活動の価値をそのまま現実世界に還元したものである。ただひたすらに不愉快であるのは、これまで欲したことなど一度もなかったものをただ一方的に与えられた挙句、そのあとで再び一方的に取り上げられる事が、これほどまでに私を苦しめるものかと、自分の粗末さを頑然たる質量を持って見せつけられることである。極度の乾燥状態に置かれたスポンジが少しの衝撃で極小の塵に粉砕するがごとく、私に蓄えられたあなたという水分が取り除かれたことは、私の心をかくも脆く仕立て上げてくれた。死を持って償うべし。濁った汚水と形容されるべき私の心に、清澄甘美なあなたが注ぎ込まれた。私の汚水はどこかへ消え去り、それでも残る固体状の汚物はあなたを吸収するためだけに存在するスポンジでしかなかった。私を心の芯から作り変える、あなたの罪悪よ。人の体を心の底から作り変えることがどれほどの罪悪かあなたにこの拳で示してやりたい。私でしかない私にあなたを入り込ませたことが、今でも悔やまれる。憎い。憎い。この破壊衝動を早く発散したい。あなたの死を、私は切望する。二度と私の前に現れるな。腐った下衆め。死んでしまえ。できることなら殺してやりたい。死ね。死ね。死ね。