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よく分からなかったので、雑務日記。

 バイトを始めて数ヶ月が経ちました。意外とこの会社、居心地が良い。こんな変な立ち位置のバイトの私なのに、社員の皆さんが、とにかく親切なのだ。三年前に大河くんが中心となって、仲間と立ち上げた会社だそうで、みんな年が近いせいもあるのかもしれないけれど、とても話しやすい。

 私が出来るのは、本当に雑用ばかりで、掃除とか、できても書類整理、資料集めと、コピーと、簡単な電話対応とか。

 基本的に、大河くんの雑用を一手に引き受けているのだけれど、出来ることはたかがしれているので、必然的に社員の皆さんの雑用も引き受けている。

 みんなが仲の良い会社だった。かといって、なぁなぁに、緩く仕事をしているのかと思えば、そんな事もなく。こんなに、なぁなぁに私は会社に引っ張ってこられて、なぁなぁでアルバイトをはじめたのに、社員の皆さんは、自分たちで立ち上げたせいもあってか、自分たちが会社を作って行っているという意識がすごく高くて、仕事に関してはむしろ厳しく見えた。

 ちなみにまじめに仕事している大河くんは、かっこいいです(ここ重要)。

 仕事を真剣にしている私好みのイケメン(ついでにスーツ)。身もだえます。

 会社でネクタイをぐいっとゆるめて、一番上のボタンをはずして息をつく姿が、主に私のどストライクです。

 イエス!!(拳を握りしめて)

 そんな感じで、精一杯がんばっています。大河くん、いいアルバイトをさせてくれて、ありがとう!

「見とれてるだろ?」

 にやにやと笑ってからかわれましたが、ここは素直に頷いておくことにしました。

「はい。大河くんはイケメンだから、目の保養になります」

 拳を作って力説しておきました。これで、次からもばっちりガン見できるはず!

 ……あれ? ちょっと大河くん、顔が赤くないですか? そんなに今日は暑くないのに。

 体温計、どっかにあったっけ?

 とか考えていると、目の前に大河くんが歩み寄ってきた。

「じゃあ、もっと近くで、目の保養でもするか?」

「いえ、良いです。目の保養は、ほどよく離れている方が、よく見えて良いんです」

 近い、近いよ、大河くん!

 何とか一歩手前で押しとどめると、舌打ちされた。

 なんで!


 毎日、いろいろと楽しいのですが、いつも大河くんにからかわれるので、毎日心臓が大変なことになっています。

 にしても、ここの会社の皆さん、社長さんがいつも雑用わたしで遊んでいるのに、誰も止めてくれません。

 皆さん優しいのですが、生暖かくにこにこと見つめてくるのはちょっとあんまりだと思っています。セクハラは止めて下さい……!!


 今日は、すごく忙しいらしい大河くんに、軽食を買ってくるように頼まれた。

 ぺろんと出された一万円札。

 おお、さすが社長、太っ腹!

「買い物行ってきますけど、皆さん、欲しい物ありませんか? 今なら、なんと、社長のおごりです!」

 ペカーンと一万円をかざすと、即、大河くんのツッコミが入った。

「何で、俺のおごりなんだよ!」

「え、だって、1万円札で買い物するのに、お弁当とお菓子だけ買っても、いっぱい余るじゃないですか!」

「むしろ釣り銭を素直に俺に渡せ」

 呆れたように言う大河くんに、私は口をとがらせた。

「えー。大河くん、けちです。もう、宣言しちゃったし、ここは私の顔を立てて!」

「何で俺が、雑用おまえの顔を立てなきゃいけないんだ」

「……何となく?」

 首をかしげて、てへっと笑って誤魔化しておいた。

 なんでか、うっと大河くんが少し顔をゆるませて言葉に詰まる。「なんとなく」で、大河くんが誤魔化されてくれた!

 やった! 私、勝利!!

 そして私は、社員の皆さんから、拍手喝采で送られた。

 社員の皆さんに万歳三唱で見送られ、買い物のメモを持って、私は一人買い出しに。

 大河くんは呆れた様子で、なんか顔を隠して背中向けて、さっさと行ってこい、みたいに手をひらひらさせて私を追い出したけど、でも知ってるんだもんね。大河くんが、いつも、みんなに差し入れ買ってきてるの。いつもは適当に買ってきているみたいだけど、たまにはみんなはどんな差し入れが良いのか、意見も聞いてみた方が良いと思うの!

 みんなの好みはちゃんとメモしたからね!

 さりげなく照れ屋な大河くんに、後でこっそりと教えてあげようと思った。




つづく。

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