第一節:故郷へ帰る風
秋の空。
小春日和の山模様。
そよぐ木々は、ちらりちらりと葉を落とす。
稲穂の揺れる田んぼに目を移すと、
収穫作業に追われる老夫婦の姿が飛び込んでくる。
小さくお辞儀をして、心の中で感謝の言葉を送る。
美味しいお米、ありがとうございます…!
届くはずもない念を勝手に送っていると、次の景色へと移ってゆく。
目に入る全てが、荒んだ私の心に色を落としてくれる。
「久しぶりだなぁ…」
31歳独身、秋月 穂風。
このバス旅を満喫しております。
高速乗合バスに身を委ね、
地方の都会から段々と景色を変える窓の外。
約1時間50分程のバスの旅。
と言っても、
東京から地方駅まで新幹線で4時間近く、
さらにバスセンターまでも歩いて30分ほど掛かっているので、目的地に着くまで半日掛かってしまっていた。
「ばーちゃん、元気にしとるかなぁ」
少し遅くなった9月の連休初日。
有難いことに、5日分の有休も取れるだけ取ってくれと上司から言われ、3日分をこの連休に当てた。
6連休…!
秋のシルバーウィーク、万歳!
この休みは「心を安らげる場所へ行こう」と考え、思い付いたのが、『ばーちゃんの家』だった。
聞くと、父と母も、連休は田舎の"秋祭り"があるからと、同じ場所へ連泊するらしい。
私は仕事があったので先に帰ってもらい、私は1日遅れての帰省となった。
実は言うと、田舎に帰るのは高校1年生の頃以来である。
ばーちゃん孝行してないじゃないか、と言われるが、そんな事もない。
……と、思う。
お祝い事があれば、学生の頃は手紙を、社会人になってからはプレゼント付きで手紙を贈っているし、
なんたって、ばーちゃんは私よりもiPadの使い手だ。
家族でプレゼントしたら、あっという間に最新機器を巧みに操ってみせた。
あれは驚いたなぁ……。
私の家族や従兄弟とzoomで顔を見ながらご飯を食べたり、お喋りなんてのは、しょっちゅうやってる。
LINEだって、毎日送ってくれる。
家族や従兄弟たちも参加しているLINEには、
「山が色付いたよ」とか、
「温室の蘭が咲いたよ」とか、
毎日気付いたことをマメに送ってくれているのだ。
さすがは、秋月家のばーちゃん。
これが、私の毎日の癒しになっている。
この習慣がなくなったら……。
なんて、そんなことは今は考えないでおこう。
首を左右に振って窓の外を見る。
「あ……」
すると小さな祠が目に入った。
すぐに通り過ぎてしまったが、私の思い出を呼び起こすには、十分だった。
"風少年くん"は、まだ、いるのだろうか……
小学生の頃に出会った彼は、私の癒し。
私はふと、彼と出会った頃の事を思い出す。
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