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傲慢なる金髪〜取り巻きたちとの不思議な日常〜  作者: 酒太郎
ライアンvs影・決着編
44/46

第三十七話『休息そして戦いの予兆』

 ヴァルンに着いた翌日。

 ライアンたちは宿の自室で話に花を咲かせていた。


「じゃ、じゃあ、ライアンは瞬刃流聖級になったの?」

 菜月は興奮気味に聞く。

「あぁ。そうだ」

 ライアンは照れくさそうに返事する。

「聖級ってどれくらい強いの?」

 真里はイマイチ分かっていないような様子で言う。


「後で聞いた話だけど、ライオネルさんは瞬刃流聖級だったらしいよ」

 翔子が口を挟むように言う。

「じゃあ、ライアンはライオネルさんと同じくらい強くなったってこと!?凄いじゃん!さっすがライアン!」

 菜月がライアンの肩をバシバシと叩きながら言う。

「おだてるな。聖級だからって影に勝てるわけじゃない」

「うっ……」

 ライアンの一言で一気に空気が重くなる。


「ねぇ、ライアン。今お金どれくらい、あるの?」

 紗季が自分の金貨袋を見ながら言う。

「金?日本円は全て剣の聖地で交換してもらったからな。今は……金貨三十枚と銀貨百二十枚くらいだな」

 ライアンはジャラリと重そうな袋を三つ程ほどリュックから取り出す。

「え、そんなに持ってるの?私、銀貨十五枚くらいしかない」

 紗季は悲しそうな顔でライアンの出した金貨袋と自分の金貨袋を見比べる。


「私もそれぐらいしか持ってない…」

「私はライアンから預かった分があるから金貨一枚と銀貨五枚あるよ」

「私は銀貨八枚だけ…」

 翔子と菜月と真里もそれぞれ自分の金貨袋の中をみて肩を落とす。


「ははっ。お前たちはここに来ても貧乏なままだな!」

 ライアンは声を上げて笑った。

「も〜仕方ないじゃん。私たち日本円なんかほとんど持ってきてなかったんだから」

 翔子が不貞腐れたように言う。

「……まあ、この世界でも金は必要だ。ある程度はお前たちにも持ってもらっておこう」

 そう言ってライアンは金貨袋の中から金貨一枚ずつを取り巻きたちに渡す。

「無駄遣いするなよ?」

「あ、ありがとう!無駄遣いなんかしないよ」

「大切に使う」

「助かったわ!ライアン」

「流石ライアンね!太っ腹!」

 取り巻きたちはそれぞれ感謝を述べ、軽かった金貨袋に入れていく。


「それじゃあ、久しぶりに帰ってきたし売店でも見て回るか」

 ライアンが切り出す。

「お、それいいね!」

「ライアンが提案するの珍しい」

「お腹も少し減ってきたしね」

「座ってるだけじゃ飽きるからね」

 取り巻きたちもそれに賛成する。


 ーーーーーーーーーー


 売店が立ち並ぶヴァルンの商業区域にて、金髪の剣士とそのお供たちは食べ物を片手に歩いていた。


「うまいな、これ」

 ライアンはスパイスの効いた串焼きのようなものを頬張りながら、目を見開いた。

「でしょでしょ!アルヴァインで食べた時、美味しくておかわりしちゃったもん!」

 翔子は楽しげにライアンに話しかける。

「この世界の食べ物はあんまり美味しくないから、これだけ美味しいのは珍しい」

 紗季もライアンと同じものを食べて言う。


「え?なになに?何食べてるの?」

 少し離れたところにいた菜月と真里は翔子の声を聞き、駆け寄ってきた。

「あぁ、この売店に売ってある串焼きがうまくてな……ん?」

「どうしたの?ライアン」

 真里が聞く。


「あそこにいるの……蒼き狩人の奴らじゃないか?」

「え!ウソ!どこ?」

 翔子は慌てて周りを見渡す。

「ほら、さっき串焼きを買った辺りだ」

「あ、ほんとだ!エリナさんだ!おーい!」


 遠くから名前が呼ばれ、エリナは振り返る。

「あ!翔子ちゃんだ!久しぶり!」

「お久しぶりです。エリナさん、ルーカスさん、カイルさん」

 

「おう。久しぶりだな、金髪坊主。ちょっと逞しくなったか?」

「お前は変わってないな、ルーカス」

「お前たち、まだ“影喰い”と戦ってるのか?」

 カイルが真剣な面持ちで言う。

「あぁ。そのために修行もした」

「…そうか」


「あれ?そういえばレオンさんはどこなの?」

 翔子がキョロキョロと周りを見渡す。

「………」

 エリナとルーカス、カイルは苦悶の表情で顔を伏せる。

「えっ……も、もしかして…死んじゃったの?」

 菜月が悲しそうな顔をする。


「いや、まだ死んだと決まったわけじゃねぇ」

「ルーカス。いくらなんでもそれは無理よ」

「いや、エリナ。そんなことはねぇ。あいつは強いから生き残っている可能性だってある」

「カイル……」

 蒼き狩人は前に会った時とは比べ物にならないほど、淀んだ空気が漂っていた。


「その時の状況を詳しく頼む」

 ライアンが言うと、ルーカスが苦悶の表情のまま話し始めた。

「あ、あぁ。実はな……この街に来て少しした時に、影の依頼があったんだよ」

「影…?」

「あぁ。北の廃坑にいる悪い影を浄化するから、その時に護衛をしてくれって」

「それはどんな奴からだ?」

「ここの街にある教会のシスターからだ。報酬もうまく、護衛だけなら危険も少ないだろうと依頼を受けたんだが……」

「だが?」

「北の廃坑は上級魔物だらけでシスターを守るどころか、俺たちの命の危険まであった。だから、シスターを抱えて逃げようとしたんだ」


 エリナが口を挟む。

「でも、あそこにいる魔物は上級。私たちはレオンを除いてせいぜい中級。逃げるのも大変だったのよ」

 カイルが続ける。

「唯一まともに戦えるレオンが足止めをしながら逃げていた。”振り返るな“って”俺は大丈夫だから“って」

 ルーカスもそれに続ける。

「出口が見えてきた時に振り向いたんだ。もうすぐで出口だって叫ぼうとした時。それを見てしまった……」

 真里が口元を押さえる。

「それって……」

 エリナが悔しそうな顔をして言う。

「レオンが“影に飲まれた”のよ」


「助けようとはしなかったのか?」

 ライアンは真顔のまま言い放つ。

「したさ!でも、レオンが影に飲まれながら言ったんだ……“お前たちだけでも無事でいろ。俺のことは心配しなくていい”って!」

「そんなわけがないだろ」

 ライアンの口調が強くなる。

「分かってるよ!でも、俺たちはあいつ…レオンより弱いし、シスターを抱えたままだし……それに従うしかなかったんだ」

 ふとルーカスの肩の力が抜ける。

「なんでいなくなっちまうんだよ……ずっと一緒だって言ってただろ……うっうっ…」

 それはライアンに向けた言葉ではなかった。


 ライアンが小刻みに震えるルーカスの肩に手を置く。

「大丈夫だ。よく話してくれた。レオンは俺たちが助ける」

「え……はっ、慰めはいらねぇよ」

 ルーカスは作り笑いをし、その涙を拭う。

「慰めじゃねぇ。俺は……俺たちは、影を倒すために修行をしてきたんだ」


 ライアンの自信に気圧されたルーカスは鼻を鳴らして聞く。

「ほ、本当にレオンを助けてくれるのか…?」

「あぁ、俺たちに任せておけ」


 ーーーーーーーーーー


 北にある廃坑。

 そこには金髪の剣士と女の魔術師三人が入口で話していた。


「さて。今から廃坑に入るわけだが、注意点がいくつかある」

 ライアンが真剣な面持ちで言う。

「注意点?」

「一つ目は、単独行動をしないこと。

二つ目は、何かあったときはすぐに俺に伝えること。

三つ目は、影とは極力戦わないこと」


「そんなに心配する必要あるの?私たち、結構強くなったよ?」

 翔子が能天気に聞く。

「ある。ここは難易度Sランクだ。聖級程度の強さを持っていようとも、油断をしたら足元を掬われるぞ」

「え、Sランクなんだここ…知らなかった」

「詳しくはSランク相当、だな。冒険者ギルドではここは危険すぎて、そもそもランク検査ができてすらいない」


 ライアンの危険すぎてという単語に紗季は身震いをした。

「大丈夫なんだよね…?」

「俺がいれば問題ない。お前たちはサポートに徹してくれればい」

「分かったわ」

「回復なら任せて!」

 菜月は真面目な顔で頷き、真里は自信ありげに胸を張った。


「それじゃあ、行くか」

 ライアンは取り巻きたちの反応を見て、廃坑の入り口へと歩き出した。


 廃坑の内部。

 入り口から入ってすぐ、ライアンはある異変を感じ取り歩みを止めた。


「どうしたの?」

 菜月が急に止まったライアンを心配そうに見る。

「……いや、前に来た時よりも魔力が濃いなと思って」

「え?ライアン、魔力感じれるの?」

 紗季が感心したように声を上げる。

「修行した時にな。魔術師対策で魔力の流れを読めるようになれば、それだけ魔法を避けやすくなるからって半ば無理やり教えられたんだ」

「へぇ…ライアンのお師匠さんって凄いんだね」

 翔子が言う。

「なんでだ?」

「えっとね、私の師匠が言ってたんだけど、剣士と戦うときはできる限り魔力の流れを読まれないように魔法を使えって。だから、ライアンの師匠さんの考えはしっかりと理にかなってるってことなの」

「そう言うことも教えられるのか…っと、こんな無駄話をしてる場合じゃない。先に進むぞ」

 そう言いつつも、ライアンは魔術師側の考えに興味が湧いていた。


 道中の魔物を相手にしながら、ライアン一行は虱潰しに廃坑の中を探索していく。


「ねぇ、ライアン。これ、血痕じゃない?」

 紗季がふと立ち止まり、地面のある一点を指してそう言った。

 そこには黒いシミがいくつかあった。


「……いや、これは血痕じゃない。影の残骸……いや、死骸と言ったところか」

「影の死骸…ってことは」

「あぁ。ここは誰かが影と戦った後ってことだ……ッ!!」

「!!」


 ライアンが振り向いたそのとき、一番後ろを歩いていた真里の背後から黒い影が現れた。

「真里っ!!」

 ライアンは何百、何千と打ち込んだ技を繰り出す。

 瞬刃流、神速斬。

 後隙などを考えずにただひたすらに速い一撃を放つ技。

 極めれば光速にも届くとされている。


 ザンッ!


 真里の首筋を狙う影の触手は、ライアンの神速斬によって切り落とされる。

「あ、ありが…」

 真里が感謝を伝える間もなく、ライアンは影に斬撃を浴びせ続ける。


「ふぅ…死んだか」

 次にライアンが喋った時にはすでに、影は原形を留めていない。

(す、凄い…剣筋がまるで見えなかった。これが今のライアン…)

「ありがとう、ライアン。おかげで助かったわ、怪我はない?」

「あぁ。お前たちも、常に周囲に気を配れ。今みたいに俺が守れない場合もある」

 ライアンは他の3人の方を見つつそう言った。

「……じゃあ、続きだ。レオンを探すぞ」

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