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傲慢なる金髪〜取り巻きたちとの不思議な日常〜  作者: 酒太郎
ライアンvs影・決着編
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第三十六話『ヴァルン・到着』

 剣の聖地ケインから約三ヶ月かけてヴァルンに帰ってきたライアンは、真剣な面持ちで門の入り口に立っていた。


「ようやく帰ってきたか……ヴァルン」

 ポツリと呟いたその言葉が次の戦いを実感させてくる。


(ここで影との決着をつける……だが、その前にあいつらと合流しないとな)

 ライアンはそんなことを思いながら冒険者ギルドへと足を運ぶ。


 久しぶりに来た冒険者ギルドはほとんど変わっていなかった。

 変わったところと言えば、依頼掲示板に前と比べ物にならないほどの依頼が貼られていることくらいだ。

 

(なんの依頼だ…?いや、その前にあいつらが来てるかどうかを……)

 そのときギルドのドアが開けられた。

「あ」


 ーーーーーーーーーー


 魔法都市アルヴァインから約三ヶ月かけてヴァルンまで帰ってきた取り巻きたちは門の入り口で何やら言い合っていた。


「翔子が道を間違えたから遅くなっちゃったじゃん!」

「菜月こそ道中で腕試しだとか言って魔物の群れに突っ込んでたじゃん!」

 翔子が言い返す。

「まぁまぁ、二人とも。無事に着いたんだから別にいいでしょ?」

「安全第一」

 真里と紗季は二人を宥めている。

 

「まずは冒険者ギルドに行くわよ」

「ライアンはもうこの街に来てるのかな」

「どうかな、ケイン結構遠いから」

「ライアン捜索依頼とか出しちゃう?」

「いやいや〜」

 そんな会話をしながら取り巻きたちはギルドに足を運ぶ。


 取り巻きたちがギルドに入るとアルヴァインでは無かった懐かしい雰囲気が漂ってきた。

「ギルド久しぶりだね」

 真里が感慨深そうにギルド内を見渡す。

「なんか前より依頼多くない?」

 紗季が心配そうに依頼板を見る。


「あ」

 唐突に菜月が声を上げた。

「どうしたの?菜月」

 翔子は聞きながら菜月の視線を追う。


 するとその先にはこちらを向いている、一人の金髪の男がいた。


「ライアン!!」

 取り巻きたちははしゃぎ、ライアンに駆け寄る。


「お前たちも今来たのか」

 ライアンは相変わらず傲慢な口調で応じる。

「まったく相変わらずね」

 翔子はやれやれといった感じを出しているが、隠しきれない再会の喜びが滲み出ている。


「ねぇ、ライアン。これからどうするの?」

 紗季が聞く。

「影と決着をつける。そのために、まずは情報収集だ」

「分かったわ。でも、その前に宿を取りましょう。ずっと移動してきたから流石に疲れたわ」

「そうだな。…じゃあ翔子と紗季は俺と一緒に情報収集。菜月と真里は宿を探しておいてくれ。宿が見つかり次第、ここに戻ってきてくれ」

「はーい」


 ーーーーーーーーーー


 二手に分かれた後、ライアンと翔子、紗季はギルドに残り、各自情報収集をしていた。


 ライアンは昼からだというのに、テーブルを囲んで、酒を飲んではしゃいでいる冒険者の男たちに声を掛けた。

「おい、ちょっといいか?」

「ん?なんだ坊主」

 強面の男が訝しげな表情を作り、聞き返す。

「影について聞きたいことがある」


 強面の男は顎に手を当てて考える。

「影…?ミルフィアで似たようなことを聞いたが……俺は情報収集が得意じゃないし、この街にも昨日来たばかりだ。何も知らない。すまんな」

「いや、構わん。時間を取ってすまなかったな」


 ライアンが踵を返そうとすると、別の男から声が掛かった。

「ちょっと待てよ、おめぇ」


(……情報料でもせびられるのか)

 ライアンがそんなことを思っている時に、呼び止めた男がグイッと酒を飲んでから話し始めた。

「影と言ったらおめぇ…”エルド“じゃねぇか」

「……!!エルドってお前、知ってるのか!」

 ライアンはテーブルに手を叩きつけ、身を乗り出した。


「知ってるもなんも、最近この街はそいつの噂で持ちきりよ」

「どんな噂なんだ」

 男は酒で顔を赤く染め、ヒックと喉を鳴らした。

「影を操って、ヴァルンを乗っ取るだとかなんとか……ほら、あの依頼板もエルドの手配書だとか、魔物でもねぇのに討伐依頼だとかが山ほど貼られてるぞ」


 ライアンはそう言われ、依頼板の方に目をやる。そこには、依頼で溢れ返りぐちゃぐちゃになっている依頼板がある。


(あの大量の依頼はそれだったのか)

「なるほど、情報提供に感謝する。これは礼だ」

 そう言ってライアンはテーブルの真ん中に銅貨を3枚程度じゃらりと置き、踵を返した。


 ライアンは言われた依頼板の前に立ち、依頼を次々と見ていく。

(…確かに、どれもこれもエルドのことばかりだ)


「ねぇ、ライアンはなにか分かった?」

 そこで、同じく受付の人や冒険者に聞き込みをしていた翔子と紗季が来た。

「あぁ」

「私たちも情報、集まったよ」

「それじゃあ、少し情報の整理をするか」

 そう言ってライアンは空いているテーブルに腰を掛ける。


 ーーーーーーーーーー


「……ふむ、だいたい一緒だな」

 情報の統合が終わった頃には日が暮れかけていた。

「みんなエルドのことを言ってた」

 紗季が情報を書き留めたメモを見ながらそう言った。

「エルド……って廃坑にいたやつだよね…」

「ライオネルさんが腕を失った理由のやつ…」

 翔子と紗季はエルドという名前を聞いて静かな怒りを抱いている。


「情報の統合も終わったことだし、菜月と真里を待つか」

「了解」


 ーーーーーーーーーー


 二手に分かれた後、菜月と真里は宿を探していた。


「ねぇ真里、どんな宿がいいと思う?」

 菜月がそこらじゅうにある宿の名前と看板を見ながら聞く。

「ん〜?そうね…ある程度清潔で、安くて、盗難に遭いにくくて、暖かいところがいいわね」

「欲求が多い…」

 菜月は苦笑いしながらもうーんと捻り考える。


「ここは寒いからね。清潔と暖かいっていうのを主軸に考えよ」

「もうちょっと条件あった方がいいと思うけど…」

 真里は不服そうに文句を言っていたが、最終的には納得した。


「この宿なんかいいんじゃない?」

 そう言って菜月が指を指したのは“金の幸亭”。

「皇帝とかけてるんだろうね、なんだかライアンとお似合いじゃない?」

 菜月が楽しそうにそう説明すると、真里も“金の幸亭”という名前とライアンの金髪が連想され、笑いが込み上げてきた。

「ぷはっ、確かにライアンっぽい。ここにしよ!」


「すみませーん」

「はいはーい、少々カウンターでお待ちを〜」

 真里が暖簾をくぐり、声を掛けると少し遠くから声が聞こえてきた。


「はいはい、お客かな」

 そう言って奥から出てきたのは中年の男。

 その頭は金色で彩られていた。

「はい。えーと、五人泊まれます?」

「五つも部屋は空いてないな、すまないね」

「あ、いえ。五人で一つの部屋に泊まるつもりなんですが、大きな部屋は空いていないですか?」

「五人が泊まれる部屋…?ちょっと待っておくれ」

 そう言って宿主の男は奥に入っていった。


「あ、値段聞くの忘れてたね。ここまで聞いといてやっぱなしは失礼じゃないかな?」

 真里が不安そうに聞く。

「大丈夫だよ。ライアンからある程度のお金は預かってるから。それより、部屋があるかどうかが大事だよ」


 そんなことを話している間に宿主が戻ってきた。

「あったよ。六人まで入れる大部屋だ」

「ありがとうございます。いくらですか?」


 男は手元にある紙束をペラペラと捲り、うんと頷いた。

「五人で銀貨五枚だ」

「じゃあこれで。お釣りも貰えますか?」

 そう言って金貨一枚をカウンターに置く。

「ありがとよ。2階の一番奥の部屋だ」

 宿主はそう言ってお釣りの銀貨五枚と部屋の鍵を渡す。


 宿が見つかった頃にはすでに日が暮れていた。

「それじゃあ、ライアンも待ってるだろうしギルドに戻るわよ」

「そうね」


 ーーーーーーーーーー


 冒険者ギルドにて。

 扉が開かれる。


「お、来たか」

 ライアンが席から立ち、扉の方に目をやる。

「えぇ、待った?」

「あぁ、待った」

「もう!」


「さて、菜月と真里も揃ったことだし二人が取ってくれた宿に行くか」

「絶対喜ぶから楽しみにしててね!」

 真里は自信気にそう言う。


「これが私たちが泊まる宿……金の幸亭…」

 紗季は宿の名前からライアンを連想し笑いが込み上げてくる。

「おい…なんだこの名前は…」

 ライアンは呆れたようにため息をつくがどこか嬉しそうな表情を見せる。

「気に入ってくれた?」

 菜月がいたずらっぽく笑う。

「高くないだろうな」

「大丈夫だよ」

「それならいいが……」


「それじゃあ、入ろう。中で今日集めた情報の整理と今後の動き方について話しておこうと思う」

「りょーかい」


 ーーーーーーーーーー


「ーーと、言うわけだ」

「エルド…って誰かの“幹部”って言ってた人だよね」

「廃坑からここまで来たんだ…」

 菜月と真里は真剣そうな面持ちで言う。


「戦うのよね?」

「あぁ。あいつを倒さなければ影は消えないからな」

「そっか…」

 翔子は心配そうな目をライアンに向ける。


「ひとまず、あいつがどこにいるかを調べる必要がある……だが、明日はゆっくりしようと思う」

「……!!それって…」

 紗季が目を見開く。

「あぁ、お前たちと一緒にいるつもりだ。久しぶりに会ったしな」

「やった!再開祝いだね!」

 真里が手を叩いて喜ぶ。

「祝いってほどでも……まぁそうだな、再開祝いだ。お前たちがどれほど強くなったかたっぷり聞かせてもらうぞ」


 ーーーーーーーーーー


 ヴァルンのとある地下にて。


「光の使徒がようやく帰ってきた……ふふふ。いいですねぇ、胸が躍りますよ!」

 エルド・フェインは薄暗い部屋で淡く光る魔法陣に手をかざしていた。


(光の使徒……古来より古く伝わる…“魔王様を打倒しうる存在”…僕にはそいつを殺す使命がある!)

「魔王様の幹部として!影の創造者として!この手で!光の使徒を殺してやるのです!……ふふっ…ふははは!」

 エルドの不気味な笑いは近くに潜んでいたネズミを驚かせ逃げ惑わせる。


「さて、そろそろ動きますかね……行きますよ…“アイアン”」

「………」




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