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旅人たちはチャートを描くよどこまでも  作者: 空猫
【序章】旅立ちまで
2/4

2 - 下宿とブリュレフレンチトースト

本来ならこの回でVRMMOへ初ログインする予定だったのですが、思った以上に長くなったのでVRMMO要素が本格的に出るのは次回からとなると思われます。

ご了承下さい。

帰り道。

あれからウチはこの辺りで一番大きな家電量販店でそれなりに性能が良いらしいVRヘッドギアを購入した。

おかげで諭吉が20枚ぐらい溶けた。 ぐぬぬ...

エリカからの鬼電に対して見てみぬふりをしつつ、ふとNFについてスマホで調べてみた。

どうやら崩壊して壊れた世界をプレイヤーが開拓者として復興させる、というのが趣旨らしい。

あとは完全に五感再現を再現してたり、NPCが人間と見分けがつかなくてまるで異世界のようだとか書かれてたけど、正直旅できればいいしよくわからないから流し読みした。

...そろそろエリカからの電話に出ないと怖いから出ようかな。


『あなたねぇ... なんで人を置いてくの。 おかげでわたしは息切れしそうだったんだけど』


うぐっ、やっぱり置いていったのは駄目だったかぁ...

ここは素直に謝るのが吉かな。


『ごめんって。 だって今すぐにでも身体動かしたくて...』

『大丈夫なの?』

『大丈夫、たぶん問題しかないから』

『それは大丈夫じゃないと思うのだけど?』


そんな会話を続けること数分。

とうとうエリカが切り出した。


『めめ、いきなりだけど... わたしと一緒にNFやらない?』

『いいよ』


ウチは即答した。

だってゲームに詳しい人が居たほうが心強いし、エリカが居てくれたら大体のことが解決するし。


『...少し判断が早すぎない? まぁいいか、サービス開始は翌日の8時。 休日だからちょうどでプレイしてね、遅刻はしないで』

『はーい。 エリカ先生も遅刻しないでねー。 ウチは早起きだからいいけど、先生は朝弱いでしょ?』

『いい加減怒っても良い?』 

『すみませんでした』


流石のウチでもエリカは怒ったら怖い。

もう一度言う。 ここは素直に謝るが吉。

ウチは死にたがりじゃないからね、命は捨てられない。



翌日。

いつも通り、朝6時に蔵で起きた。

ウチの家は武家屋敷で、別棟もあるぐらい広いし道場もある。

だから蔵とか渡り廊下もあるんだけど、蔵は実質ウチの部屋になってるんだよね。

だってウチの部屋よりも広いし、趣味で描いてる旅で行った場所の地図とか写真も置いておきやすいんだもん。

それに、ここが一番静かだしね。


「...ってウチは誰に説明してるんだろ、まぁいいや。 朝ごはん食べよっと」


そう言って蔵と主屋を繋ぐ渡り廊下を伝い、台所のある主屋の居間へ。

ウチ、一人暮らしだから居間には誰も居な...


「おはよう、朝早いんだね」


何故か居間にエリカが居た。

しかもギチギチに詰められたボストンバックと一緒に。

とりあえず目をこする。

...うん、夢じゃない。


「なんでウチの家に入れるの?」

「あなたの家の合鍵持ってるから。 昔わたしにあげたでしょ、鍵変わってなかったから入れたの」


...あ。

確かに、小学生の頃に「エリカのこと信頼してるから、いつでもウチの家に入ってきていいよー」って言って合鍵あげたっけ。

すっかり忘れてた。


「え、じゃあこのボストンバックは?」

「しばらくはここで生活しようと思って。 下宿って言えばわかる?」

「...へ?」


思わず声が出る。

え、下宿? あの部屋を間借りするやつ?

あのエリカが?


「NFをやるのなら、一緒に住む方が効率がいいと思わない? いつでも情報交換できるし」

「あー、確かに...?」

「ね、いいでしょ? じゃあわたしは別棟の部屋貰うから、料理はよろしくね」


そう言ったエリカはボストンバックを引きずりながら別棟に繋がる廊下へ歩いていった。

なんだろう、エリカに丸め込まれた気がする。

これが気にしたら負けってやつなのかな。


「...とりあえず朝ごはん食べちゃお」


そう言って、冷蔵庫から昨日切って卵液に漬けておいた大量のバケットを取り出す。

卵、グラニュー糖、牛乳が混じった卵液は既に染み込んでいて、バケットは全て漬ける前のクリーム色から黄金色に変わっていた。

まずフライパンにバターを入れて熱し、バケットを一切れづつ入れればじゅわ〜っと焼ける心地よい音が聞こえてきた。

そして、こんがりと焼けた狐色が出てくる頃合いでバケットにグラニュー糖を振りかけて2分ほど焼き、皿に盛ったところで。


「ブリュレフレンチトースト、完成ー! ウチってば、料理上手い!」

「うっわ... 朝から料理に力入れすぎ。 これ、絶対に女子高生が朝から出すやつじゃない」

「えへへ、褒めてくれて嬉し... っていつの間に!?」


声がした方を見ると直ぐ側にエリカが居た。

き、気付かなかった...!


「美味しそう、これ食べていい?」

「あ、うん。 ウチが一人で食べる予定だったけど、量もあるし別にいいよー」


そう言いながらエリカの分を皿に盛り付ける。

エリカが「やっぱりこれ、女子高生の家で朝から出すようなものじゃないでしょ...」とかぶつぶつ言いながら美味しそうに食べてるところを横目に、自分の分を皿に盛り付けて食べる。


「んー、やっぱり美味しい」


え? 食レポが欲しいって?

外側のカラメル部分がパリパリなのに対して、内側はふわっとしてるところとか美味しかったかなぁ。

ウチじゃあそれぐらいしか感想が出ないし、そもそも語彙力が少ないウチに食レポを求めるほうがおかしいよ。

そう思いながらウチはエリカと一緒に朝ごはんを食べた。

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