1 - 始まり
初投稿です。
よろしくお願い致します。
【2025/09/03追記】
VRヘルメットをVRヘッドギアと変更致しました。
「ううー... エリカも酷いよぉ...」
ウチ、和勝めめ。
今ウチは、とてつもなく絶望している。
何故かって? ウチが過労で倒れたことでドクターストップが発動。 それによって学校によって今日から当面、趣味である徒歩旅とアルバイトを禁止されてしまったからだ。
生まれてこの方一度もコンピューターゲームもしたことのない、根っからのアウトドア派の人間であるこのウチにとって、それはあまりにも酷い罰である。
いくら高校に上がってからずっと平日はほぼ24時間掛け持ちバイトをしていたとはいえ、こんなことが許されていいのか。
そんな愚痴を聞いたウチの親友である不破エリカは
「あなたの自業自得だから仕方ないわ。 大人しく休みなさい」
と一言。
そして今に至る。
「めめ、そんなに運動したいならいい方法があるのだけど。 聞く?」
「なにそれちょっとそれ詳しく」
その言葉を聞いた途端、反射的にエリカが居る後ろを振り向いてそう言う。
いくらなんでもそれは聞き捨てならない。
「あなた、過労で倒れたのに懲りずにどんだけ動きたいのよ...」
「ふふん。 それで、どんな方法なの」
「全く、ドヤ顔なんかして。 全然褒めてないのだけど... まぁその方法はこれね」
そう言ったエリカは学生鞄から「New Frontier」と言うタイトルのゲームカセットを取り出した。
そういえば、エリカってゲームが好きなんだっけ。 頭良い優等生のイメージがあるから忘れてた。
よくゲームの話をしてもらってたけど、ウチにはちんぷんかんぷんで全くわからなかった。
それにしても、学校にゲームカセット持ち込んでいいのかな。 普通に考えたら怒られそうだけど。
「巷で話題のフルダイブVRMMO、その名も」
「New Frontier?」
「わたしのセリフを奪わないで貰える?」
「ごめんごめん、ところでフルダイブVRMMOって何?」
そう聞くとエリカはため息を吐いて、あからさまに頭を抱えていた。
いや、ごめんって。 でもゲームの話は全くわからないの。
エリカが言うに、フルダイブとは仮想空間に意識全体を没入させることを指し、VRMMOとは仮想空間内に入るオンラインゲームを指すのだとか。
そこらへんの詳しい原理も一緒に教えてくれたけど、生憎私にはわからなかった。
「つまり、フルダイブ技術を使ったVRMMOってこと?」
「そうゆうこと。 その中でもNF...New Frontierの通称のことね。 NFはリアル重視で、現実世界の技術とか身体能力がそのまま反映されるみたいなんだよ。 あとは何が言いたいか、めめにはわかるでしょ」
なるほど、現実世界と遜色ない運動が仮想空間でできるってわけなんだ。 確かにこれはいいかも。
とはいえ、そこはゲーム。
平均以上の身体能力を持つ人間はそのまま反映されるけど、身体能力が低い人間は平均程度に矯正されるらしい。
そりゃそうだよね、身体能力が低い人に不平等だし。
そして、ふと思った疑問を口に出す。
「ねぇエリカ。 私、ヘッドギアとか持ってないんだけど。 確かあれ、それなりに高いんだよね?」
前にエリカがヘッドギアを買ってもらっていた時に、ヘッドギアは最安値でも数万、高くて数十万から数百万はすると聞いた。
ただでさえ旅にお金を使うのに、一体何枚の諭吉が溶けていくことやら。
「あなたならアルバイトの分と貯蓄で足りそうな気がしなくもないのだけど。 いくら持ってるの?」
「ざっと数百万ぐらいは。 まぁ、最近は金欠気味なんだけど」
「どこに数百万もあるのに金欠って言う人間が居るのよ、全く...」
「仕方ないじゃん、旅ではホテル代とかでお金使うから数十万は持ってないと不安なの」
「まぁ確かにそうね...」
「と・に・か・く! 仮想空間内で動けるNFをするにはVRヘルメットってやつが必要なんだよね?」
そうだ、ついつい話題が逸れても話してしまった。 エリカ恐るべし。
「ん? そうだけど」
うん、これで今からの行動は決まった。
「エリカ、ありがと! それじゃ行ってくる!」
そう言って、家電量販店へと走り去る。
「え、ちょ...!」
そんなエリカの声がするが、それを無視して走った。
エリカは根っからのアウトドア派であるウチと違って根っからのインドア派の人間だ。 体力的にも恐らくウチには追いつけないだろう。
ウチはアルバイトがあるから帰宅部だったが、運動系の部活からの勧誘が凄かった。
なんでも、ウチは瞬発力も持久力もかなり高いからだそうで。
確かに、県を徒歩で跨いだりもするぐらい体力は多いし体育の授業では上位常連なので否定はできない。
でもウチには愛しの旅とアルバイトがあるんだ、ごめんね。 当面禁止されたけど。
閑話休題。
そうしてウチは家電量販店へと向かった。
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