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国宝の盗難

一夜明けた早朝。


清冽に澄んだ冬の空気を胸一杯に吸い込みながら朝の散歩をしていた優梨(ゆり)は、騎士団宿舎の厩舎近くでイナイライ使節団の雑役夫が荷馬車の荷を積み直しているのを見かけた。


優梨の隣にいる加蔦(かつた)未夜(みや)は、幼稚園以来の幼馴染で、(たぐい)(まれ)なる治癒の力を持つ癒やしの聖女と呼ばれている。


「昨日来て、もう帰るんだね。イナイライまでは馬車で片道2日って聞いたから、往復5日がかりの旅で外交の仕事は昨日の1日だけ。ご苦労さまなことだなぁ」


2人が遠くから作業を眺めていると、雑役夫が上げ下ろししていた大きな布に包んだ荷物が崩れかける。


「あっぶない。……あれ、あれって絵の額縁かなぁ?」


覆った布からはみ出した荷物の端を目にして未夜が言う。


「……昨日の朝宮廷応接室に飾ってあったのあたし見せてもらったけど、あれ、封邪の鏡じゃないかなぁ。ミーヤは見たことない?


昨日使者が絵をひとつ置いてったらしいけど、まさか交換したわけじゃないよね、あれって国宝だし」


2人がそんな会話をしている間にも、雑役夫たちは荷馬車の出発準備を進めていく。


「あれえ。お見送りの儀式までにはまだ2時間くらいあるはずだし、使節団の本隊の出発を待たずに荷物だけ運び出す、ってまるで夜逃げかこそ泥みたいじゃない」


「ミーヤ、あたしここで見張ってるから、ピオニーさんに報告してきてくれる? この時間だと騎士団宿舎の中庭で素振りしてると思う」


「いいよ、あぶないことしないでね、優梨」


足音を殺しながら騎士団宿舎のほうにむかう未夜を見送りながら、優梨は荷馬車の監視を続けた。


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