これまでのあらすじ
これまでのあらすじを振り返る。
俺の名前は、水谷楓。
俺は、教育虐待と呼んでもいいような英才教育を受け、親の期待に応え、一流大学を首席で卒業した。
しかしその後、突然職場をクビになり、それからは、自室で引きこもり生活をしている。
唯一の楽しみは、ゲームをやることと、それから、クイズ番組を見ること。
アニメやら、お笑いのバラエティーやらは見させてもらえなかったが、そんな中で、唯一視聴を許可されていたテレビ番組が、クイズ番組だった。
それも、一流大学を卒業した人や、一流大学の学生が超難問をやすやすと解き、知識、教養をひけらかすようなクイズ番組だった。
そんな俺のところに、ある日、見覚えの無い郵便物が届いた。
「何だこれ?」
それは、『クイズバトル・ロワイアル』という、クイズと、ファンタジーRPGとが組合わさったようなゲームだった。
『クイズバトル・ロワイアル』は、プレイヤーがクイズに答えて、RPGを進めていくという。
1年に1度の『クイズバトル・ロワイアル』という、100人の冒険とクイズの猛者たちが参加する大会に参加することになっている。
しかし、この大会の恐ろしいところは、なんと、クイズに不正解の解答者は、その時点で次々と死ぬ、ということ。
「ふーん、なるほどな。」
説明書を読んでいた。その時、雷が鳴ったような轟音が鳴り響き、雷に打たれたような衝撃を体に感じ、そして次の瞬間、まぶしい光に包まれる。
「うわっ!なんだよこのゲームはよ!」
気がついた時には、見たことも無い場所にいた。明らかに、さっきまでいた自分の部屋とは違う。
この時は気がつかなかったが、実はこの時すでに、『クイズバトル・ロワイアル』の世界に飛ばされていたのだった。
目が覚めると、クイズ番組の会場らしき場所にいた。そして、100人の解答者たちが
並んで、座っていた。
司会者らしき人物が現れた。
「さあ!クイズバトル・ロワイアルの開幕です!それではさっそく、第1問から参りましょう!」
有無を言わさず、クイズバトルが始まった。
「それでは、第1問!」
一見すると、そこらへんの、タレントが大勢参加する数多のクイズ番組と変わらない。
しかし、次の瞬間、『クイズバトル・ロワイアル』の本当の恐ろしさを思い知ることになる。
第1問は、どんな問題の内容だったのか、
そして、俺が何と解答したのか、覚えていない。その後に発生した事態を目の当たりにして、愕然としたからだ。
司会者「残念!不正解!まだ1問目ですよ。
まことに残念ですが、番組のルールにのっとり、不正解の解答者たちを殺してさしあげましょう!」
これが、『クイズバトル・ロワイアル』の
本当の恐ろしさだった。
一瞬、つむじ風のようなものが吹いた気がした。誰の目にも、俺の目にも、何が起こったのかわからなかった。
そして次の瞬間、不正解の解答者たちは、血を吹いて倒れていく。
他の解答者たちにも、動揺が走る。
「おい、見たか?」
「いや、何も見えなかった。」
「とにかく、俺たちは正解で、あいつらは不正解だったんだ。不正解のやつらはもう死んでるぜ・・・。」
『バトル・ロワイアル』とは、生き残るためにプレイヤー同士が殺し合う。
それに、クイズを掛け合わせたことで、この『クイズバトル・ロワイアル』が生まれたのだという。
とにかく、俺は第1問は正解したようだ。
司会者「それでは次の問題、って、おい!
なんだてめえは!」
司会者が次の問題を出題しようとしたところ、突然、乱入者が現れた。
そして、刃物で司会者の胸を突き刺した。
司会者「うげっ・・・!」
乱入者「あいにくだな。あんたの出題する問題は、俺には物足りなくてな。
俺ならもう少し、マニアックな問題を出題してやるよ。」
司会者は殺され、死体はそのまま消滅した。そして、この乱入者が次の司会者となった。
「というわけで、俺が次の司会者だ。よろしくな。それじゃあ第2問!」
そいつは、けろっとした顔で、第2問を出題する。ついさっき、前の司会者を刺殺した、その次の瞬間に。
一歩間違えたら、俺たちもこんな目に逢うのか?と思った。
「それでは、第2問!」
問題の内容を聞くどころではなく、とにかく何でもいいから正解して、死ぬことを回避する。そんなことが、頭をよぎっていた。
そんな中、第2問の出題内容は、俺が普段からプレイしていたゲームに関する問題で、
この問題は、簡単に正解できた。
そして、第3問、第4問と答え、そこから俺は連続正解を重ね、気がつけば10問目まで正解していた。
そして、その間にも不正解の解答者たちは次々と命を落としていった。お互いに自己紹介をする間もなく、顔も知らないままに・・・。
解答者の人数が、100人から70人に絞られる。つまり、30人は死亡したということになる。
お互いの素性もわからないまま、四の五の言う間もなく、いきなりクイズバトルのフィールドに放り出されたのだ。
天の声と名乗る者が告げる。声はすれど、姿は見えず。まさに天の声。もしかして、こいつこそが、このクイズバトル・ロワイアルを最初に考案し、俺たちをクイズバトルに参加させた張本人なのか?
天の声「やあやあ、皆さん。見事に第1ラウンドを勝ち残りましたね。
しかし、第1ラウンドですから、ここまでは小手調べというもの。」
何だって!?これが小手調べだって!?
天の声だかなんだか知らねえが、ふざけたことぬかしやがって。
天の声「ここからは、ルールを変えましょう。ここからは、1対1のクイズバトルです。」
新ルールが、天の声から発表される。
1対1の対戦形式で、お互いにクイズの問題を出し合う。
正解できたら、相手を攻撃してダメージを与えられる。不正解だと、逆に相手に攻撃され、こちらがダメージを受ける。
そして、HPが0になったら、その時は死ぬ。
まさに、不正解の解答者は死ぬという、その究極のルールだ。
そうなると、相手に簡単に答えられるような簡単な問題では、逆に相手から攻撃されるのだ。
考えようによっては、こちらがクイズに答えられなかったとしても、攻撃をひたすら避けまくり、そして、ここぞというところでの、とっておきの1問を繰り出し、それを相手が答えられなかったところに、とっておきの一撃をくらわす、という頭脳戦略もできるわけだ。
そのための、問題作りの方も考えておかないとな。クイズマスターは、ただ相手の問題に答えるだけでなく、自らがクイズの問題を作成し、出題し、答えさせるということもできるようになってこそ、真のクイズマスターなのだから。
いずれにしても、これは天の声からの挑戦状だな。だったらその挑戦状に、応えてやろうじゃないか。そして勝ち抜いてやろうじゃないか。
そして、ここにきてようやく、俺は自分以外の解答者たちの素性を知ることになったのだった。
とにかく、いろんなやつがいるな、中には人間じゃないやつとかもいるような感じだ。
「君が、水谷楓というのか、私はオースティン。よろしくね。」
オースティンと名乗ったその人物とは、この先も長い付き合いになると、その時から思っていた。そして本当に、長い付き合いになっていくのだった。